娘(中3)息子(中1)2児の母です。

習い事をきっかけに息子が小6で『PTSD』

診断。その後、二次障害で『強迫性障害』

発症。息子、小6秋から不登校になり、

続いて娘も不登校に。


習い事のはじまり〜今までの

日常で辛かった事、子供たちとの関わりを

お話させていただいています。


子供たちがまた、心から笑って

過ごせる日を願う母の日記です。

前回のお話

はじまりの続き その7『自分のためのつもりが……』 


1番最初のお話



息子、小学5年生の夏。


予選会、全日本大会と3週間の間に
4つの試合があった。


2つの大会の予選会を掛け持ちしていた。
今、振り返るとこの年が1番忙しい
スケジュールだった。


九州、東海、関東、近畿へ飛び回った3週間。
どんなに忙しいスケジュールの中でも
試合の次の日も、もちろん休みはなく
体を休ませている時間さえなかった。


どの予選会も通過でき、1つ目の
全国大会が8月にあった。


練習中、失敗をすると
「おめーはバカかっ!
てめえが、強化選手になりたいって
言ったんだろ?自分で決めたんだから
ちゃんとやれよ!」

「もう、出る資格ないわ、
やめちまえー!!時間の無駄だ!!」


練習中でも、大会が近づけば近づく程
失敗なんて許されない。
失敗せずにできるように、
息子の集中力は半端なかった。


失敗しないように指導というより
失敗なんかしたら、とことん
息子を攻める暴言が
次から次へと続いた……。


息子の所に向かって歩き寄りながら
暴言を吐き、
そんな先生の後ろを追いかけながら
「すみませんでした。
もう1度やらせてください。」と
必死に謝っている息子の姿。


そんな練習が続きながらも
息子は1度も弱音を吐かず、
歯を食いしばりながら頑張り続けた先に
1つ目の夏の全国大会があった。


コロナもあり、
私たち保護者は会場に入れず
外で大会が終わるのを待っていた。


野球でいう甲子園と言ってもいいくらいの
大きな大会だった。
視察に来られている監督もいるくらい。


ドキドキしながら会場外で待っていると
息子が1人で出てきた。
しかも、身支度ができている状態ではなく
試合をしたままの状態の格好…。
リュックにしまうはずの荷物を手に持って……。


息子の様子が明らかにおかしかった。
何かに怯えるように顔が引きつっていた……。


「早くここから帰ろう、早く!」と言って
 どんどん逃げるように
 歩き出していった息子……。
 その息子を追う私。


「先生は?」と聞くと息子は、
「いいから!早く帰りたい!!」と
目には涙が溜まっていた。
こんな姿の息子を見るのは
初めてだった……。



会場から家までの約2時間の間、
息子は何か記憶を消したいかのように
ずっと携帯を見ていたり
車窓からの景色を見ているのではなく
景色よりずっと遠くを見ながら
きっと、何かを思い出しているかのように
見えた。
何かに怯えている様子だった……。



そんな息子も気づいたら寝ていた。
息子の頬には、
一筋の涙の後が残っていた。
息子も何があったのか話そうとしなかった。



また、明日から次の大会に向けての
練習が始まる。
息子は大丈夫なのだろうか……。



家に着きすぐ息子は
「もう疲れたから寝るね」と言って
2階にある自分の部屋へ
上がっていってしまった。
きっと、何も触れて欲しくないんだろう……。



その翌朝、私の携帯が鳴った。
先生からだった。



昨日の試合で最後にミスをしてしまった
息子に対して言い過ぎてしまったので
今日、練習前に先生の所に来るように
と、息子への伝言だった。



息子が起きてきた。



起きてきた息子にすぐ、先生から
連絡があった事を私は伝えられなかった。
なぜなら、早い時間に伝えてしまうと
きっと息子は、練習までの時間ずっと
恐怖心から落ち着かないだろうと
思ったから……。


タイミングをみて
先生からの伝言を息子に伝えた。
すぐに顔色が変わった…。


「先生、怒ってた?」と、
間もなく聞かれ私は、
「怒ってなかったよ、時間が経って
先生も言い過ぎてしまったって
言ってたよ」と言うと息子は
昨日の出来事を話してくれた。



「昨日、大会の最後でミスをしてしまって。
そしたら先生が、何やってんだ!!
ふざけんな!!邪魔だから早くここから
出てけ!!目障りなんだよ!!」って
凄く怒鳴られて。
先生の目が凄く怖かった……。



息子は話を続けた。



「僕が悪いから……。
先生は僕のために一生懸命になって
くれていたのに、僕がミスしちゃったから……。
先生にまた、怒られるかな?
何て言えばいいかな?」と
その日、練習に行くまでずっと
落ち着く事はなかった。



そして、
練習前にまた怒鳴られるかも知れないと
覚悟した様子で練習場所に入り
先生の所に小走りをしながら
向かっていった。
車から下りる時も
「先生、本当に怒ってなかった?」と
こんな表情見た事がない
不安で仕方がない息子だった。


この日、先生から息子に
「先生がついカッとなって
言い過ぎてしまって悪かった。
また、今日から気持ちを切り替えて
頑張ろう」という話だったようだ。


息子は、
自分のために一生懸命
一緒に頑張ってくださって
「また、今日から気持ちを切り替えて
頑張ろう」と言ってくださった
先生を信じ、自分の気持ちも
奮い立たせていた。



しかし、
この日を境に
練習に向かう車の中では一切一言も
言葉を発する事をしなくなった。



なぜならば
ミスをすると怒鳴られた事で
練習が恐怖に変わり始めてしまったからだ。



練習に向かう車内で
笑う事なく、無の状態で、
何も考えず感じる様子もなく、
息子は毎日、漫画の動画画面の
一点だけをただただずっと見ていた。


余分な恐怖心、心配や不安が
これから練習に向かう自分に
襲いかかってこないためだった……。


練習場所に着くと
無言で車から下りて行く息子……。



先生からのあの言葉を
11歳の息子は純粋に信じた。
先生からの謝罪。
息子への励ましの言葉を。
今、思えば
大会のメダルよりも求めていたのかも
知れない。


先生に褒めてもらう事を。
先生に喜んでもらう事を。


息子は、
辛い大変な思いをしても
先生への感謝する気持ちは
忘れていなかった。
暴言さえなければ、
先生と息子は良い関係であったから……。
先生との楽しい思い出も息子には
あったから……。


生真面目で中途半端が大っ嫌いで
嘘がつけない先生が
「あいつ(息子)は、俺が見てきた
選手の中で1番頑張っているから」って
周りに話をしていたくらい息子は、
必死にくらいついて頑張っていた。
そんな一生懸命な息子を先生も大好きだった。



だが、
先生からの暴言は止まる事はなかった……。




この後、10月には
もう1つの全国大会が控えていた。




息子は、
必死だった。



大きな目標叶えるために。



先生に怒られないようにするために……。





つづく