編者からのメッセージー未知の<言葉>の世界への期待 中島国彦(早稲田大学教授) | 明治書院

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明治書院販売部ブログ 新しい教科書への思い


 四月の新学期、誰もが受け取ったばかりの何冊もの教科書を抱え、期待に胸膨らませているに違いない。その中で「国語」の教科書を真っ先に開く、そうした生徒の姿を思い浮かべることがある。他の教科以上に、まず「国語」の教科書を開きたくなるのは、そこに未知の〈言葉〉の世界があり、それが自分を誘い、その世界をのぞくことで自分がどんどん成長していくように思えるからであろう。


 わたくしたちの日常は、新しい〈言葉〉との出会いの連続である。今まで知らなかった、聞いたことのない言葉を知った、というだけではない。よく知っている言葉でも、これまでと全く違う実感をそこから得られれば、〈言葉〉の世界は新たな光を放つ。今までと違った気持ちで新学期を迎え、広大な空を見上げれば、「春」はこれまでとは違った意味合いの「春」となり、そうした体験を通して、わたくしたちは真に「春」という言葉を手に入れたことになるだろう。言葉の量を増やすのも大切だが、言葉への感覚、言葉で生きる実感を得られるような感性を磨くことも、忘れてはならないだろう。


 こんなことを思うのも、わたくし自身にとって、高校の「国語」の教科書が、どんなに思い出の多い、ある意味でまぶしい存在だったかと思うからである。進学し、他の教科の教科書は段ボールにしまっても、なぜか「国語」だけは机辺に置いておきたい、そう思ったことを思い出す。しばらく前に、大学の教室で森鷗外の話をすると、翌週『舞姫』の載った、書き込みの多い高校の教科書を持って来て話しかけてくれた学生がいたが、同じような思いだったように思う。生徒にとって、それがどの出版社の教科書であるかは、関係ないだろう。しかし、それが明治書院の教科書であったのを見つけたわたくしのひそやかなうれしさは、今に至るまで忘れられない。


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