今回は、「チャンピオンシップロードランナー」の思い出を書いてみたいと思います。

前回書いた「バンゲリング・ベイ(以降RBB)」は、1985年2月22日に発売され、「チャンピオンシップロードランナー(以降CLR)」は、同じ1985年の4月17日に発売されるという、ロードランナーや NUTS & MILK からバンゲまでの期間を考えれば、非常に短い期間でしかありませんでした。

RBBが発売になってからの2週間ほどは、TVCM は、RBB の後追い宣伝を流していました。
後追いというのは、「○月○日発売!」から「好評発売中」へと変わった、発売後に流しているものです。

雑誌記事も、まだ RBB が中心となっていたのですが、それに挿入される形で CLR の記事も入れるようになっていきました。

しかし、この CLR を出す時には、子供達に受け入れて貰えるかどうかが、非常に不安な材料としてあったのです。

CLR は、みなさんもご存じだと思いますが、非常に難易度の高いステージだけで作られているゲームです。

パソコン版のロードランナーが発売された時、プログラマーの元に全世界のプレイヤーがエディット画面で作った難易度の高いステージが数多く送られて来たといいます。
そのステージの中から、セレクトした50ステージをパッケージにしたのが、CLR なのです。
この中には、日本人が作ったステージも入っていると言われています。

1984年7月21日に発売したロードランナーが、100万本を越えたという事で、ハドソンもこれを販売しようという事になって、中本さんが作っていました。
が、非常に難易度の高いステージばかりなので、ロードランナーを遊んだ事の無い人が購入すると、まったくクリア出来ないだろうという事で、パッケージには

「警告!ロードランナー未経験者お断り!」

という注意分を表記する事にしたのです。

しかし、販売するからには、売れて貰わなければ困ります。
そこで、一月ほど前から、雑誌や TVCM などでの告知展開を行う事になったのです。

TVCM に関しては、前回にも紹介した深沢清澄監督が中心となって作っていったのです。
この時の私の役目は、プレイ画面を録画する事でした。

15秒か30秒の TVCM ですので、プレイ画面は30秒もあればいいのですが、 どのシーンを中心に録画しておけばいいのかは、編集する時まで分からない部分がありますので、時間にして2時間程をかけて、面白そうな15ステージほどをクリアしていきました。

また、雑誌では、コロコロコミックさんとは別に、学年誌である小学2年生の担当の方とともに、暗室に閉じこもって、CLR のステージ1を、分解写真形式で、クリアするまでを撮影していきました。
その写真通りにプレイすれば、必ず1面はクリア出来るという内容です。

この記事を、宣伝部の大里さんが気に入ってくれて、そのままチラシにしようという事になったので、みなさんの中にも、見られた方は多いと思います。

ちなみにこの頃は、ファミコンの映像を撮影するには、暗室にした中で、TV 画面を直接撮影しなければいけませんでした。
これを「再撮」と言います。
ファミコンからは、NTSC 方式の映像が出ているのですが、信号的には同期を取るための信号が無いために、プロ機材に直接画面を入れる事が出来なかったからです。
家庭用のビデオデッキで録画したとしても、TV用としては使えなかったのです。
これが思った以上に大変でした。

ビデオは1秒間に30フレームという細かな映像を連続して出力している事で、動画として見る事が出来ます。
なので、ビデオカメラも、30分の1で、映像を記録していくわけなのですが、静岡県の富士川と新潟県の糸魚川を境に、東側は50ヘルツ。
西側は60ヘルツとなっているように、関東エリアは50ヘルツなのです。

50ヘルツと30ヘルツ(1秒間に30フレームだから)の違いにより、画面を撮影すると、フリッカーと呼ばれるちらつきが発生するのです。
これは、あまり早くは無いのですが、一定時間毎に流れていくのです。
ビデオを再生しながら確認出来るのですが、プレイしている間に、フリッカーがどうなっているのか?なんて事は分かりません。
ですので、いいシーンが撮れたとしても、フリッカーが入ったいた時の事を考えて、同じシーンを数回に分けて撮影しなければいけませんでした。

フィルムカメラで撮影する時も同じでした。
シャッター速度を60分の1にした上で、絞りを変えて1画面につき3回シャッターを切っていくのです。
画面は止まっていても、TV 画面の走査線は動いているからです。

実はこれ、ブラウン管から液晶モニターになるまで続いていたんですよ。
また、パソコンで映像をキャプチャー出来る様になったのも、再撮しなくてよくなった結果です。

本当に、技術の進歩って素晴らしいです。


さて、そんな2月か3月の頃に、コロコロさんから、とある提案がありました。
3月下旬に、「コロコロまんが祭り」があるので、そのステージで何かしませんか?という事でした。

まんが祭りのステージでは、漫画家さんのサイン会などが中心に開催されていたのです。
それを受けた大里さんが、私に「CLR で何かやれ」という、命令を下したのです。

シューティングゲームやアクションゲームであれば、ゲーム大会も出来るのですが、アクションパズルゲームで、そんな大会は出来そうにありません。
それに、発売前の CLR ですので、初めて触る子供達が、クリア出来るわけもありません。
そこで考えたのが、私のデモプレイを見せながらの説明会でした。
このステージの予算なんかありませんから、大きなモニターを用意して貰えれば、ファミコン1台とカセットを持っていくだけで大丈夫ですからね。
11面以降のパスワードも、紙を見ながら入力するというのは、あまり格好良くありませんので、覚える事にしたのですが、何面を見せるかを検討するのには、かなりの時間を費やしました。



っと、時間が無くなってきてしまったので、この続きはまた今度。

ちなみに、この時点では、まだ「高橋名人」ではなく、「ハドソンの高橋利幸」として、コロコロに載っていました。(w