ひとくち伝言 -2ページ目

ひとくち伝言

百観音明治寺の寺報、ひとくち伝言をお届けいたします

  苦 集 滅 道
                  令 和  七  乙 巳  年  正 月


謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
この時節にはよく、「一年の計は元旦にあり」という言葉を耳にいたします。新しい一年をどのように過ごすか、まずはその計画が重要という意味ですね。実はこの言葉、元々は元旦ではなく春だったようで、三本の矢で有名な戦国武将、毛利元就が息子に宛てた手紙には「一年の計は春にあり、一月の計は朔にあり、一日の計は鶏鳴(夜明け頃)にあり」とあります。中国の古い諺、「一年之計在于春」を引用したのでしょう。ただ、面白いことにこの諺の方は、微妙にニュアンスが違っています。農業において、秋にどれくらいの作物を収穫できるか、その取れ高は春の耕作の具合によって決まる。つまり「物事の初めに、しっかりと働いておかないといけない」という意味があるのだそうです。
さて、計画を立てるにせよ、成果を計算するにせよ、計る前にはまず、現状把握が欠かせません。ビジネスの世界ではPDCAサイクル(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Act=改善)という考え方があって、チェックを繰り返して計画を改善していきます。また、OODAループ(Observe=観察、Orient=状況判断、Decide=意思決定、Act=実行)という考え方では、まず観察や状況判断から始めます。そりゃそうですね。実情を無視した計画や試算は、夢想でしかありません。
仏教の考え方でも、苦という問題を解決するために、まずは問題の認識から始めます。見ない振りをしたり誤魔化したりはせず、ちゃんと問題をあきらかにして(苦諦)、どういう要素が集まって原因となっているのかを考えます(集諦)。原因が分かれば、その原因が解消された目指すべき状態が見えてくるはず(滅諦)。あとは、そこまでの道筋を実践するだけです(道諦)。これがお釈迦様の問題解決法、「四諦」。実に簡単ですね! ……考え方自体は。実際のところは、思うように実践できなかったり、問題や目標を見誤っていたりで、我々はグルグルと迷ってばかりおります。
それでも、繰り返す度に観察をして改善が出来れば、問題の解決に少しずつ近づいていくもの。上手く行かなければ振り返って観察し、原因を考え、目標を設定し、道筋を歩んでいく。煩悩を除く除夜の鐘の風習も、苦の原因をチェックする、観察の一環なのかも知れません。長いサイクルであれ、短いサイクルであれ、新たな道筋を立てる前には、じっくりと自分の問題を見つめ直すことが必要かと存じます。
良き一年、良き未来の果報のために、お釈迦様の問題解決法「四諦サイクル」をどうぞご活用ください。
 

草野榮雅 拝