アルゼンチン君と話していたスカイプは、お互い大好きだった頃の超ラブラブな、「愛してる」だの「恋しい」だの「君のことが頭から離れない」だの、やり取りが残っているので、もう使いたくなかった。
アルゼンチン君が何度か、
「スカイプは古くて遅いから、メイもWhatsApp を登録してほしい。」とWhatsApp のIDを教えてくれていた為、私はそっちに連絡した。
「元気?
久しぶり。
スカイプはもう使ってなくて、気づかなくてごめんね。」
と書いたら、
予想通り、
秒で、
返信が来た。
「やあメイ。
大丈夫、気にしなくていいよ。
メイから連絡が来て嬉しい。
僕は元気だよ、
ちょうど朝ごはんを食べ終わったところ。
メイは何しているの?」
「私は今、夜ご飯が終わったところ!」
「メイから連絡が来て嬉しいよ。」
「私も久しぶりに話せて嬉しい。」
これは一切、
聞かれなかった。↓
「どうして連絡をくれなかったの?」
何となくね、
これは聞かれないと思ったよ。
アルゼンチン君は、
わかってた。
私が何故、突然、消えたか。
そしてアルゼンチン君も、
私に深くつっこめない理由がある。
「今、僕は旅行中なんだ。」
「どこにいるの?」
「〇〇という古い観光地。
ママとママの友達4人と。」
写真が送られてきた。
アルゼンチン君とお母さん、
お母さんの友達の計4人。
というか、
おばあちゃん4人に、囲まれているアルゼンチン君。
「ママとママの友達が旅行に行きたいというので、
僕が運転手&付き添いをしているんだ。」
おばあちゃん4人の女子旅(笑)の中に、
平気で入れるアルゼンチン君。
彼らしい。
おばあちゃんたちに囲まれて、
お母さんの肩を抱き、
身長190センチの体をかがめて、
お母さんと頬を寄せて笑うアルゼンチン君の写真を見て、
フッと笑ってしまった。
私が一瞬でも、本当に大好きだった人、
でも何となく、
私はもうスッキリした気分。
アルゼンチン時間の朝10時半くらいから、
ホテルの部屋に滞在するアルゼンチン君とメールのやり取りをした。
途中、アルゼンチン君が
「ママが部屋に来たよ。
メイと話したいって。」
それからボイスメッセージが届いた。
英語で、
「メイ、お元気ですか?
どこにいたの?
私はあなたと話せなくて、寂しかった。
約束してください、私と時々話してほしい。」
これね、
アルゼンチン君のお母さんは、
思っていないことを必死で言ってるね。
息子の為に。
私とアルゼンチン君のお母さんは過去に2回しか話したことない。
しかもアルゼンチン君のお母さんは、そんなに英語が得意ではない。
私に対して、アルゼンチン君のお母さんが
「話せなくて寂しかった」なんてわけないよ。
それにアルゼンチン君が以前、言ってたんだよね。
「お母さんは僕に
『結婚しないで、ずっとママのそばにいて』
って言うんだ。」
日本人の彼女がいて、日本に行ったことがあるから、アルゼンチン君のお母さんは、きっと息子が世界で2番目に遠い国、日本に結婚して行ってしまうんじゃないか、と不安だったはず。
もし私がアルゼンチン君みたいな、とってもsweetな息子がいたら、やっぱり外国人と結婚して、世界で2番目に遠い国に行ってほしくないと思う。
それなのに息子のために、私に向かって、
「約束してください、私と時々、話してほしい。」なんて、
改めて
アルゼンチン君のご家族は素敵だな、
と感じた。
でもね、キュンとしなかった。
安心した、
優しい気持ちになれた。
私はお母さんに向かって、ボイスメッセージで、
「私はあなたが、素敵な時間を過ごしていて嬉しいです。素晴らしい旅行になりますように。」
と伝えたら、
いきなり。
心配そうなアルゼンチン君のボイスメッセージで、
「メイ、その声どうしたの!?」
急にボイスメッセージはやめろ。
しかも心配そうな声で。
あ。
…そうだ、私はジャイアンのお母さんだ。
風邪をこじらせていることを説明した。
アルゼンチン君は心配そうな声で、
「僕の作る野菜スープを飲めば、すぐによくなるよ。」
「うん、飲みたい。」
するとまた心配そうに、
「メイの看病をしたい。
僕が野菜スープを作って、メイに食べさせてあげたい。
そしてメイの手を握って、頭を優しくなでてあげたい。」
一瞬、きゅんときた。
いいや、
しかし、私はもう、きゅんとしないぞ。
そこからメールで世間話をした。
アルゼンチン君のお母さんはお友達とホテル近くのランチ&散策に出かけたが、アルゼンチン君は
「朝ごはんが遅かったから、僕はお腹が空いていない。後で合流する。」と、部屋に留まり、私と話していた。
電話はしなかった。
気づいたら、4時間もメールでやり取りをしていた。
内容は旅行、家族、音楽、仕事、そして世間話。
深夜2時過ぎたので、寝るね〜と言った。
そして。
今、スクリーンショットを見て気づいた。
私の挨拶…
私、自分の名前を
名乗ってねえ
しかし、アルゼンチン君は
秒で私だと思い、
「やあメイ。
大丈夫、気にしなくていいよ。
メイから連絡が来て嬉しいよ。
僕は元気だよ、
ちょうど朝ごはんを食べ終わったところ。
メイは何しているの?」