栄養不足により免疫機能が低下すると、感染症に罹り易くなることが分かっています。
タンパク質をはじめとする栄養成分の摂取不足や偏りは、代謝レベルの維持や体内環境の恒常性保持を困難にします。
一方で、食事の過剰摂取にも、肥満により生活習慣病のリスクが高まり、免疫異常を招くという指摘があります。
このように、免疫機能と栄養の過不足は、深く関係しています。
◎タンパク質・アミノ酸
体の免疫システムを構成するリンパ系組織は、細胞分裂や増殖が盛んで、活発なエネルギー代謝が営まれています。
そのため、栄養状態の影響を非常に受け易く、特にタンパク質不足では、細胞性免疫(ヘルパーT細胞とキラーT細胞が中心となる免疫反応)の働きに、早期から障害が現れることが知られています。
タンパク質の摂取については、特定のアミノ酸(アルギニン、グルタミンなど)が免疫に関与しているという報告もありますが、必須アミノ酸のバランスに優れた「良質のタンパク質」を摂取することが、免疫機能には有用であると考えられています。
また、タンパク質不足では、種々の微量ミネラルの代謝に異常が見られるケースもあり、亜鉛や銅などが不足すると、T細胞の増殖・分化に異常が起こり、免疫機能の低下が促進されることが知られています。
◎脂質
脂質は、体の構成成分やエネルギー源としてばかりではなく、ビタミンや必須脂肪酸の重要な供給源となっています。
必須脂肪酸は、炎症や免疫反応などの調節に働く「エイコサノイド」(生理活性物質)の材料として、大変重要です。
牛乳やバターなどに含まれるガンマリノレン酸や、魚油に多く含まれるEPA、肉類に多く含まれるアラキドン酸といった脂肪酸が、エイコサノイドの材料として主なものです。
食事によって摂取される脂肪酸の量と、そのバランスにも注意する必要があります。
◎糖質
糖質は、生体の主要なエネルギー源である一方、複合糖質としての成分としても重要です。
ブドウ糖やガラクトースなどの糖がつながって鎖状になった分子を糖鎖といいますが、糖鎖はタンパク質や脂質と結合した複合糖質となって、細胞の表面や細胞の中に多く存在しています(下図)。
糖鎖は、細胞間のコミュニケーションをとるためのアンテナの役割をしていると考えられています。
ウイルスなどに感染した時には、免疫細胞を活性化し、速やかに病原体を排除しますが、感染していない時には、免疫の活性化を抑制し、炎症などが起こらないように調整しています。
◎ビタミン・ミネラル
ビタミンAが不足すると、食細胞(好中球、マクロファージなど)の働きが低下したり、NK細胞やIgA(分泌型の免疫抗体)を作る細胞の数が減少するなどして、感染に弱くなることが分かっています。
白血球は普段からビタミンC濃度が高いことが知られていますが、濃度が高いほど活発に働くことが分かっています。
ウイルスに対抗するために必要な物質であるインターフェロンの合成にも、ビタミン Cが必要です。
また、白血球の細胞膜は、多価不飽和脂肪酸を含むリン脂質の含量が多く、酸化による傷害を受け易いと考えられています。
そのため、ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化ビタミン、及び、抗酸化物酵素(SODなど)の誘導や活性に関わる微量ミネラル(亜鉛・鉄・マンガン・銅・セレンなど)も、欠かせない栄養素です。
<参考書籍>
「栄養免疫学」(医歯薬出版株式会社)