三石巌の書籍で、現在絶版して読むことができない物の中から、
その内容を少しずつですが皆様にご紹介させていただきます。
病人はなぜ寝かせるか
この問題は、すべての病人にとって、血行をよくすることが有利である、という原則から説明される。横臥の体位は、血行改善のためにはいちばんよいのである。
ここに、おもちゃのポンプがあったとしよう。そのポンプには、水の出口と入口とがついているが、この二つの口は、三メートルほどの長さの細い管でつないである。動源力は乾電池で動くモーターだとしよう。そのモーターの力で、ポンプは、このゴム管のなかの水をぐるぐる循環させることになる。
ゴム管は輪になっているわけだが、これの一ヵ所をもって高くあげる。すると、水は一・五メートルほどの高さまでのぼらなければならない。管は細いから、おもちゃのポンプは苦労するだろう。そこでこんどは、ゴム管を床の上におろす。すると水は高く上る必要がないから、ポンプは楽だ。何かの方法で、水の流量を比べてみたら、後者は前者の二倍、三倍になっていることがわかるだろう。
人間の場合、ゴム管の一部をもちあげたのは、立位に相当し、床の上においたのは、横臥位に相当する。寝ていれば心臓は楽になって、血液の流量は、立位の三倍程度になる。
〔三石巌全業績−11 健康ものしり事典(絶版)P49より抜粋〕