ピロリ菌の除去によって、胃潰瘍や胃ガンのリスクが低減することは有名ですが、この他にも“血液疾患の改善”に役立つといわれていることをご存知でしょうか?
多彩な働きをする菌ということで今、“ピロリ菌”が注目されています
1998年、イタリアのあるグループによって、ピロリ菌の除菌が血小板減少性紫斑病(ITP)という特定疾患指定の疾患に関して有効であると報告され、2012年に日本でもITPの治療参照ガイドが改定されました。
ITPとは、明らかな基礎疾患がなく血小板数が減少するため種々の出血症状を引き起こす病気です
それまでの治療ガイドラインでは、ステロイド、脾臓の摘出、免疫抑制剤が主流でしたが、現在では「ピロリ菌の除菌」がファーストチョイスになっており、これによりITPの約2/3くらいが改善されるそうです。
しかし、この詳しいメカニズムはまだ分かっていません。
ITPは成人での発症の場合、ほとんどが慢性型で免疫異常(自己免疫反応)が原因と考えられています。
抗原としては、血小板の表面にある糖タンパク質GPⅡbⅢaなどが代表的なものです。
それに対する自己抗体ができて、自己抗体が結合した血小板が網内系(老廃物などを貪食する細胞に富み生体の防御システム)で貪食されて消費されるというのが一番のメカニズムになっています。
ここに、ピロリ菌が持っているCagA(タンパク質)やウレアーゼ(酵素)などに対する抗体が血小板の表面抗原(糖タンパク質GPⅡbⅢaなど)と交叉反応(構造の類似性の高い抗原で起こる反応)して、血小板の破壊が導かれるという報告はあるようです。
この他にも自己免疫疾患と細菌・ウイルス感染との関連性については数多くの報告があがっています。ピロリ菌除去とITPとの関係には、自己免疫疾患の発症メカニズムや治療法を見出す為のヒントが隠されているように思い、今後更なる研究を期待したいと思います
つづく・・・