幸福に生きる時間
私の心を強く打つのはアリストテレスの幸福論だ。
この哲学者はおよそ二千四百年前の人だから、その論旨は素朴であり明快である。
彼は、幸福に生きる形は三つあるとした。
第一は「楽しく満足して生きる形」、第二は「責任ある市民として生きる形」、第三は「哲学者、科学者として生きる形」である。
アリストテレスは、楽しく満足して生きる形、責任ある市民として生きる形の、どちらかがあれば幸福だといっているのではなく、この二つの両立を求めている。
そしてまた、三者の三位一体を求めているのだ。
私は価値倫理説のなかで「プラスの価値ある時間、有効時間」を説いてきた。
これを幸福に生きる時間と言い換えて、不自然に感じる人はいないだろう。
プラスの価値ある時間を持つということは、幸福な時間を持つことと同義としていいのではあるまいか。