こんばんは、ココアこと田中貴子です。

 

 

インタビュー動画(RED Chair)で、「生まれ変わりたくない。この一生でおしまいでいい。」と言い切った坂東玉三郎さん。

 

 

やり直しや形を変えるもいらない、今生の存在を生き切るでいい。

 

 

そう躊躇いもなく覚悟されてる人生って、どんなものなんだろう?

 

 

女性以上に美しい女形、その繊細な舞いや仕草、感情表現だけでも、途方もないのに。

 

 

どれほど血のにじむような稽古を繰り返し積み重ねてこられたかなんて、凄すぎて、分かりようもない。

 

 

だけど、ひとたび舞台に現れたなら、どうしたって注目しないでいられない凛とした唯一無二の存在。

 

 

多くのファンに愛され、期待に応えるべく努力の人でもある。

 

 

それは片岡仁左衛門さんもまた同じく、穏やかで落ち着いた佇まいの中に、深い洞察を感じてしまいます。

 

 

歌舞伎で50年以上も共演されているという夢のコンビ<にざたま>こと、片岡仁左衛門さんと坂東玉三郎さんは、共に人間国宝。

 

 

昨年2人が70代にして、36年ぶりに鶴屋南北の「桜姫東文章」を演じた奇跡の様子を《シネマ歌舞伎》で観られると聞いて、これは必見!と、GWになって慌てて追いかけました。(4月はそれどころじゃなかった・・・泣)

 

 

(全国エリアはすでに終了、東銀座にある東劇のみ延長上映中)情報が間に合わず、申し訳ないです・・・

 

 

それでも、敢えて伝えたくて、自分の出せ得る言葉で書きますので、よかったらお付き合いくださいね。

 

 

*桜姫東文章 なんとか動画観たいよという方は、予告編からどうぞ。(5月26日6月9日まで上映延長)

 

 
チラシは、昭和57年2月南座公演に向け撮影された若い時分のもの。

 

 

仁左衛門さんの足が・・・華やかな着物から、ちらっとはみ出しているのが、ドキリとします。

 

 

この見開きの大判チラシを目にしたとき、私の心はもう持っていかれてしまいました!

 

 

歌舞伎は伝統芸能だし、台詞回しも難しいし、何となく縁がないまま敷居が高い。

 

 

そう思ってる人が多いでしょうが・・・そもそも200年前に話題になったことを詰め込んだ娯楽。

 

 

歌舞伎に登場するストーリーは、実は、まさかそんなことあるの?それでいいの?ということが多いです。

 

 

今回鑑賞した演目も、盗人が家に押し入ったときに操を奪われた桜姫はあろうことか好きになってしまい、相手の権助と同じ入れ墨を腕に彫ってしまうし。

 

 

上の巻:入れ墨を目印にようやく会えた喜びに浸る桜姫と、流し目で応える権助の場面。

 

 

悪党なのに色気を感じる魅力を演じさせたら、仁左衛門さんはピカイチなのよね。

下の巻:あることがきっかけに再び会えて、一緒に暮らすことになった2人。

 

 

調子よく桜姫をだまして女郎屋に売ってしまうことも厭わない権助なのに・・・

 

 

左手が開かない不自由さのあった姫時代より、本音で生きてるのか愛らしいのです。

 



話は、お経を唱えた際に、生まれつき動かなかった桜姫の左手が緩まって、その手からポロリこぼれ落ちた香箱をみて、心を揺らす高僧・清玄(仁左衛門2役)の運命まで加わるので、より複雑に展開していきます。

 

 

雷がおちたら、生き返った!とか、ありえない設定もあるのですが、どうしてなんでしょうね。

 

 

だとしたら・・・の引っ張りでも、不思議と観てしまうんです。

 

 

かたき討ちに象徴される正義・執念・葛藤もあるし、恋愛のあれこれもあるし、親子や主従関係、お金のこと、なんでもあり。

 

 

綺麗な着物にうっとりしてる傍らで隠れていた情念がめらめら、立ち上ってきて、ドッキリとか。

 

 

怖くて足がすくんで逃げてしまうこともあれば、お金の為ならばで悪事に手を染めてしまう心の闇も見せてくるのです。

 

 

この人はこういう人、きっとこうなるだろう・・とは限らない。

 

 

この人は普段は真面目で、人の道を外れることなんて絶対にしない、期待を裏切らないはず・・・

 

 

でも、魔が差したように、どうにも出来ない瞬間もあるかもしれない。

 

 

そういう自分でも想像にすらなかった、まさかがあるから人間だし、愛すべき存在なんだ。

 

 

そこに昔の人たちが胸を熱くして、今も受け継がれて、一緒に心を鷲づかみにされるとしたら、それはすごいことだろうなと。

 

 

人間は期待通りの完全無欠の人なんてない。

 

 

だから、誰もが見知っていて、やることなすことに注目されるような仕事に就いている人は、とてもない孤独や努力や諦めもあるかもしれない。

 

 

例えば、不器用で自信がなかった人がある日を境に、取り巻く環境が変わったら、どうなっていくのだろう?

 

 

それをリアルに描こうとした本に先日出逢いました。

 

 

いきものがかりのメンバーにして、作詞作曲を担当し、楽曲も沢山提供されてる水野良樹さんの小説がそれです。

 

 

「幸せのままで死んでくれ」 清志まれ 著 (文藝春秋)

 

 

学生時代までは要領が悪く自信のなかった主人公が、夢を叶えて、誠実で頼りになる人気キャスターというポジションを手に入れたあと。

 

 

良き社会人として、夫として、父として、望まれた完璧なる存在になるべく、虚構の中で演じたような暮らしになったとしたら・・・で、次第に内面の奥底で歪みが生じます。

 

 

本当の自分って?

 

 

弱音や汚い自分をさらけ出すことで、周りがガッカリしたり壊れてしまうのではないだろうか?

 

 

詳しくはここでは語りませんが、オススメです。

 

 

人生において「幸せ」とは何だろう?

 

 

どんな生き方が自分らしいのか?

 

 

周りが望むように(自分を出さず)生きてた桜姫が、その後の境遇なんて、なんのその。

 

 

明るく奔放に見えたのは、姫体質のまま、おっとりと我慢しなかったから。

 

 

そのときどきで、一番譲れないことを守れば、大丈夫なんだ。

 

 

ならば、どの道を選んでも、正解にしていくように潔くですね。

 

 

私は、なるべく自分の気持ちには正直でいたいなぁ。

 

 

読んでくださって、ありがとう。