夜の底、に張り付いた

雲泥間近の明星を

鋭く凍る三日月が

犬、と、笑う。



夜そこかしこに赤青黄、

意思を持たない電柱が

繋ぐ針金

骨髄線

葉脈繋いで水銀を運ぶ。




左肘裏の静脈に

ステルス製のポンプを埋めて

震えを留める水中花

悶えを止める水柱が

毛穴を開くメントール


とどめを刺したらハイ終わり

どうだ?

楽にならないか?



月光墓場で彼女は死んだ。

嗚咽社会の蛆の虫。

ヒールの底に張り付いた。



否、とあらがう。


嫌、とあらがう。


厭、とあてがう。



現実論に酔う前に、

まず現実を見据えなきゃ。


非の現実に酔い痴れる


酔い白けては、蹲る。


夢から醒めた、その後に、

宵の張を狂歩する。



苦痛の底、に、張り付いた

鋭く尖る三日月を

いぬが嗤う。