父のために買った実家の小さなお仏壇に、開封されていない一通の封筒…
「これなあに?」
「なんだろうね」
母に聞いても答えが返ってこない。
父宛てに来たので、とりあえず飾っているという。
開封すると…
「従六位を叙する」とあった。
長く官職にあったので、贈っていただいたものらしい。
父は若いころ、教員を目指していたと聞いている。
「これからの時代は教育だ!」
父からよく聞かされた言葉。
家庭の事情で合格した師範学校を諦めて、中野の警察学校に入れられた父。
「警察官の仕事は人を信用できなくなるから嫌いだ」と言いながらも…
キャリアを目指さず、ひたすら現場で働いた。
信用できないはずの犯罪者なのに、更生したときには平気でお金を貸していた。
出所しても何度も同じ罪を重ねる人には、何度も何度も根気よく説教をした。
人を信用できなくなると言いながら、いつだって人を信じたがった。
恐らく、父は官位になど興味はないだろうけど…
私は、そんな父の働きが正当に評価された勲章だと思っている。
がんばったね。
おつかれさまでした。