演劇は国境も時代も超えて
今日は下北沢の「劇」小劇場へ。
「若手演出家コンクール」のエントリー作品としてミュージカル「ツクリバナシ」で劇小劇場に立たせてもらったのは2017年3月。
ご存知の通り下北沢にはたくさんの劇場があるので、それからも芝居を観に下北沢に来る機会はあったけど…
随分と様変わりしてオシャレになった下北沢を目の当たりにしたのは初めてだったかも⁈
今までそのオシャレ通り(←私の命名ダサッ笑笑)を通らなかっただけかもしれないんだけど、テレビで見て「いや、どこよこの通りは。」って思ってたのが、まさに下北沢の駅から劇小に抜けられる道だったとは😳
…とまぁ驚いたのだけど、、
観劇が終わった頃には更なる衝撃を受けてました。
名取事務所公演・パレスチナ演劇上演シリーズ
「占領の囚人たち」
「I,Dareen T.」
1時間ちょっとの作品を、10分ほどの休憩を挟んで2本上演。
1幕はイスラエルに占領されたパレスチナ人のドキュメント
2幕はSNS投稿により逮捕された詩人ダーリーン・タートゥールの独白
どちらも演劇であり、でもノンフィクションで、ドキュメンタリーだった。
1幕の出演者は、以前ミュージカル「マタ・ハリ」でご一緒した鍛治直人さん(にお声掛けいただき観劇が叶いました)、松田祐司さん、西山聖了さん、そしてパレスチナ人のカーメル・バーシャーさん。
彼らはこの作品の中で自分自身(役者)役として存在し、イスラエルとパレスチナの今までからの現状を劇中劇として演じるのですが、その中には顔をしかめてしまうほど 胸くそ悪くなるほどの描写(劇場ロビーにて注意喚起あり)で、しかしながらこれが現実に起こっているのだということにズシリとした痛みを感じた。
元々イスラエルとパレスチナについて詳しく知っているわけではないけど、想像を絶するような現実がなんと多いことか。
日本で報道されている内容がどれだけ少ないことか。
出演者はこの作品を上演するにあたり、実際にパレスチナに行き、元・現囚人たちに話を聞いて回ったんだそうな。
過酷な獄中での苦しみや絶望を体験した人たちの言葉は強い。
出演者の1人、カーメルさんは体験者のひとり。
彼の言葉(ヘブライ語?スクリーンに翻訳が出る)の波には絞り出すような痛々しい響きも、強さもあり、その中にあるやわらかい音と穏やかな微笑みに胸がぎゅっとなる。
表向きにはいい顔をして取り決めるお偉いさん、裏では報道規制をかけたり見て見ぬふりをして。
私たちは真実を知りもしなかった。
でも、報道されている以上の出来事や、表には出ない 見ることもできない獄中でのやりとりを、演劇を通して知ることができた。
2幕は森尾舞さんのひとり芝居。
こちらは彼女自身が語り手となり、客席に語りかける独白劇。
その中でさらに、SNS投稿が原因で逮捕・収監された詩人のダーリーン・タートゥールさんと、これを芝居にしようと試みる劇作家エイナット・ヴァイツマンさんの二役を演じ分けながら、この戯曲が上演されるまでの取材や道のりを、森尾さん自身として/ダーリーンさんとして/エイナットさんとして、伝えてくれた。
男性だけでなく、女性の囚人だっていて、痛みや苦しみもある。
女性からの目線で「どんなことがあって、そして今なお続いている」というのを、異国のどこかで起こっていること、ではなくしっかり認識してもらう架け橋になるような、強いエネルギーを感じた。
どちらも、なかなか世の中に届きにくい現状や声を、役者の声と身体を借りて、この日本に届いたこと。
演劇が持つ力を痛感しました。
そして、皆さん「自分自身」と「役の人物」になった時の変化が凄いっ!
こちらは身動きが取れず、目の前で繰り広げられるリアルに息をするのも忘れるほど惹きつけられ、奥歯を噛み締めながら涙し、最後は思わず立ち上がって拍手を送ってしまいました🥲👏🏻
森尾さんが語るラストに、ふと姿を見せたカーメルさん。
「あなたの目には何が見えていますか?
世界は美しいですね。」
と私たちにやさしく語りかけるカーメルさんの強さに、ただただ涙が溢れました。
「彼らは今も刑務所にいます。
私たちは今 劇場にいます。」
この平和な日本で、安全な客席で、演劇を通して今を知った私たちの目に見えるものは…
余談。
つい先日、やはりイスラエルが関係するミュージカル「バンズ・ヴィジット」を観たばかりだけど、今日の芝居を観たあとではまた何か感じ方が変わるような気がする。。。