【妄想小説】マイライフ(3) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

第3話

カフェオレ

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「…こんばんは」

 

そーっと扉を開けたつもりだったのに、

ドアベルの音が鳴ってしまって

一瞬身構えてたら、

 

カウンターの向こうにいる

薄茶色の瞳とぱちっと目が合う。

 

「…なんでそんな、

静かーに入ってくんのよ。笑」

 

あきれたみたいに笑う顔は

わたしのよく知ってるニノ。

 

この間も、

空白期間なんてなかったみたいに

普通に受け入れてくれたから、

ホッとする。

 

思い切って来てよかった。

 

「いらっしゃい。そこ座って」

 

誰もいない店内は

照明が少し落としてあって。

ほんのり適度に暗いのも、ありがたい。

 

「何にする?」

 

「じゃあ…コーヒーお願いします」

 

「はいよー」

 

カチッ

 

コンロの火をつける手元。

すぐにシューシューと音がする。

 

「お店やってるって聞いたとき、

すごくびっくりしたんだけど、

こう見ると似合ってるね」

 

「でしょ?笑」

 

注ぎ口の細いケトル、

顔の近くまで持ち上げて

ポーズを決めるニノ。

 

わざとらしい、

かわいらしい作り笑顔に

吹き出しちゃう。

 

「こないだは全然、

ゆっくり話せなかったから。

今日来てくれてマジでよかったよ」

 

「イベント大盛況だったね。

すごい人多くてびっくりした」

 

「いやいやいや。違うのよ。

昔うちでバイトしてたヤツらが、

ちょーど押し寄せてただけで。

お前来るのおっせーからさ。笑

ちょーど治安悪い時間帯だったの」

 

治安悪い、の言い方が

すごくニノだから思わず笑う。

 

「早く帰れよって言ってんのに、

ぜんっぜん帰んねーんだもん。

そうこうしてるうちに、

来たばっかのお前が

”帰る”って言い出すからさあ。

焦った焦った」

 

「あの男の子たち、大学生?」

 

「基本そうかな。もう卒業して

働いてるヤツも混じってたけど」

 

「なんかあの雰囲気、懐かしかったな」

 

「ああ、そうね。

でもオレらの頃は全然、

大人しかったでしょ。笑」

 

「そうかなあ。笑」

 

「そうだよ。

それにオレはみんなでワイワイより、

お前とふたりでいる方が好きだったし」

 

「…………」

 

さっきからずっと。

 

”来てくれて良かった”とか、

”焦った”とか、

何気なく言ってくるニノに

気づかないフリしてたのに。

 

お前とふたりでいる方が好きだった

 

そんな風に、

まっすぐに言われたら、とまどう。

 

コポコポコポコポ…

コーヒー豆の、いい匂い。

 

「はい、お待たせ」

 

カウンターの向こうから

ぐっと伸びてきた手が

そっと置いたカップの中は、

image

「…あれ?わたしコーヒーって」

 

「カフェオレにしときなさい」

 

「…………」

 

「こんな時間なんだから、

こっちにしときなさい。

明日も仕事でしょ?」

 

「…うん。ありがとう」

 

ミルクが足された色は、

ふんわり優しいアイボリー。

 

ふーふー息を吹きかけて、

少しずつ冷ましながら飲む。

 

「おいしい」

 

「そう?良かった」

 

ニノが全然、

変わらずにいてくれるから。

 

ほんのり甘いカフェオレが

優しく沁みるから。

 

言うつもりじゃなかった気持ちが

思わずこぼれる。

 

「わたしも好きだったよ」

 

「ニノとふたりでいる時間が、

すごく好きだった」

 

「…………」

 

「わたしは全然、器用じゃないから…

いろんなことが上手にできなくて」

 

「あの頃仕事でいっぱいいっぱいで、

…いっぱいいっぱいは今もだけど。笑」

 

自嘲気味に少し笑ってみるけど、

ドキドキして声が震えてしまう。

 

「わーかってるよ」

 

「え?」

 

「わかってる。

お前のことなんてわかるよ全部」

 

「…うん」

 

”わかってる”

 

その言葉が、その表情が。

罪悪感から救ってくれる。

 

「ごめん今まで、」

 

「過去のことはいいんだよ。

オレもう決めたから」

 

「?」

 

「相葉さんが運んできたミラクル、

これは絶対無駄にしないぞって」

 

カウンターの向こうの、

きれいな薄茶色の瞳が、

まっすぐわたしを見つめる。

 

「過去はもういいから。

オレは未来を見たいから」

 

まっすぐ強い視線。

 

「オレと、」

 

まっすぐ迷いのない声。

 

「オレとつきあってください」

 

 

第3話

カフェオレ

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

読んでいただき

ありがとうございます(^^)/

 

さてどうなるでしょうか…

これまで描いたことのない、

積極的なニノなので楽しいです、

当初予定してたより、

さらに積極的になってる、なぜか。笑

 

次回もどうぞ、

よろしくお願いいたします(^^)