【妄想小説】さくらの季節 | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

「…げっ」

いると思ってなかった背中が見えて
つい出ちゃった私の声に
振り向く同期の二人。

「げっ!てなんだよげっ!て」


「おつかれおつかれー」

ここ来る?って言葉にはしないけど、
自分のとなりに場所を作ってくれる相葉くん。

「今日金曜だよ?
櫻井ローテはおそば月曜だったよね?」

相葉くん越しにチラと見ると。

「うるっせーよ。
金曜だけどそばスタンドの気分だったの!」


ずずずって豪快にすすったおそばで
ほっぺいっぱいにしてる櫻井が
もぐもぐしながらドヤってる。

「そばスタンド…笑」

「ふふっ。そばスタンド。
いいね、そばスタンド。笑」


「お前こそ、

ひとりランチで立ち食いそばとか、
おっさんかよ」


「いいでしょ別に。
わたしもそばスタンドの気分だったの!」

「はいはいケンカしないの。
翔ちゃん早く食べなよ」


いつものごとく、
相葉くんが仲裁してくれる。

「そうだ。お前あれどうなった?」

真っ直ぐな、大きな瞳。

 

ずっとかかわってきた仕事が

暗礁に乗り上げつつあること…

気にかけてくれてる真剣な表情に、

申し訳ない気持ちになる。

「んーーーダメかも!笑」

努めて明るく、
でも嘘のない今の気持ちを
つい吐き出してしまう。

これ以上なにか言葉にしたら
ただの愚痴になりそうだなって思ってたら
ちょうどのタイミングで到着した
わたしの親子南蛮そば。

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いただきまーすって
小さくつぶやいて割り箸を割った。

ずるずるずる
3人でおそばをすする音。

「とりあえず乗り切ろーぜ。
4月になったらまた、

状況も変わるだろうからさ」

 

よく通る低めの声。

「そーだよ。年度末はただでさえ

ばたばたするんだから。ね?」

甘くて優しい声。

 

「…うん」

胸が熱くなる。

同じ会社でずっと一緒に戦ってきた

同期のふたりは。

なにも言わなくても
わかってくれることがすごくすごく多い。

いろんなこと、細かく話さなくても。

それぞれの場所で

がんばってるんだって
ふたりの顔を見てたら、そう思う。
 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

「相葉くんさ。

オレいっつも思ってたんだけど、
そうやって食うんだね」


「え、なんかヘン?」

「いやいや、

ヘンじゃないけど、相葉くんぽい」

「うんうん、相葉くんぽい。笑」

「えー?そう?

なんか恥ずかしいな。笑」

くすくすくす、3人で笑う。

なんでもないこんな雰囲気だけで、
ただただ気持ちが楽になる。

ふたりに会う前よりもずっとずっと、
気持ちが楽になってる。

ありがたいな、この同期は。

 

「とりあえず元気そうで安心したわ。

LINEの返信全然来ねーからさあ、

オレも相葉くんもすげー心配して、」

 

「ん?LINEって?いつの話?」

「オレ送ってるでしょ」

「え?翔ちゃん送ってないの?」

 

「送ってる送ってる!昨日だよ昨日」

「なんにも来てないけど」

「………」


一瞬でやばっ!って顔した櫻井が
ものすごいイキオイで
ポケットからiPhoneを取り出して。

「あーーーー…」

目をぎゅっと閉じて天を仰ぐその姿が、
決定的チャンスを逃した
サッカー選手みたいでおもしろい。

「なに?」

「くっそ間違った…」

「間違った?」

「間違ってニノに送ってる」

あーもーーなんだよー、なんて
小さな声でつぶやいてる櫻井を
思わず追及。

「なになになに。なに送るんだったの?」

画面をのぞき込もうとしたら。

「いい!いい!いい!

別にもういいって」

「なんでよ。見せてよ。笑」

「見せなよ翔ちゃん!」

ナイスアシスト相葉くんが
櫻井の右手からさっ!と奪って。

「ほらっ!早くっ!笑」

わたしの手の中にやってくる、
紺色のケースに包まれた

櫻井のiPhone。

画面を見たらそこには。

櫻井:大丈夫か?踏ん張れよ

 

櫻井:オレたちがついてるぜ!

 

「…………」

 

いつも、おもしろ画像みたいな

変なのばっかり送ってくる櫻井の

シンプルな言葉が嬉しくて、

励ましてくれてる言葉が嬉しくて。

 

じんわり感激してたのに、

ちょうどのタイミングで

二宮くんからの返事。

 

その文面に思わず吹き出しちゃう!

二宮:大丈夫ってなにがですか

二宮:よくわかんないですけど

 

二宮:ありがとうございます
 

「二宮くん、

ありがとうございますだって…

あはははは!笑」

「笑いすぎだろお前」

「だって…あははは!」

 

「いい笑顔いい笑顔。笑」

涙が出るくらい笑ったら
アタマにきてた部長のことも
どうでもよくなってくるよ。

「ありがとう。踏ん張る」

「おう」

櫻井が握手を求めてくるから
ぎゅってその大きな手を握る。

力強いエネルギーが
手のひらから体に入ってくるみたい。

 

「一緒に乗り切ろう!」

 

相葉くんがぽんぽん、と

背中に手を添えてくれると

なんだかすごく、安心して。

 

とげとげしてた気持ちが

やわらかくなって溶けてくみたい。

 

櫻井も、相葉くんも、

今いる場所はそれぞれだけど。

 

共にがんばってるんだなと思ったら、

わたしもチカラがわいてくる。


「落ち着いたら飲み行く?」


「行く!」

「いつもんとこ?」


「いつもんとこ!」

「お前あそこ好きだよなー笑」

じゃそろそろ行くか、って
出る準備をしてる二人を見送る。

「これから外回り?」

「うん、そう。行ってきまーす」


「いってらっしゃい」

「じゃあな」

ありがとう。

顔をあわせればつい、

憎まれ口叩いちゃうことも多いけど。
 

長い付き合いの、

ふたりの笑顔に感謝して。


最後に一口、冷たい水を飲んだ。

(初出:2016.3.18)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 

読んでいただき

ありがとうございます(^^)/

 

「過保護な櫻井先輩は」の1話に出てくる

櫻井さんの同期の女性、

彼女が主人公のイメージで書いてました。

 

今まさに、

それぞれの場所でがんばってる

翔くんと相葉さんに思いを寄せて、

ちょっとだけ加筆修正してます。


年度末のお話なんで、

今がいいかなと思ってRebornしてみました、

お付き合い感謝(^^♪

 

あわただしい月末かつ年度末、

踏ん張って乗り切りましょね、お互いにー!