【妄想小説】あいのは(6) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

カーテンの向こう、
もう明るくなってきてるんだ。

真っ暗だった部屋の中が
少しずつ色を変えていたことにも
気がつかないほど…

雅紀だけでいっぱいだった、
甘い甘い、幸せな時間。

「あーー…」

目の前にあった筋肉質な身体が
ぽふっとシーツに沈む。

整わない息のまま、
ドキドキしてるわたしの体を
優しく撫でてくれる大きな手。

至近距離にある
少し茶色いきれいな髪。

ひたいには、
首すじには、
大粒の汗。

重そうにまくらに頭を乗せた雅紀が
わたしの首のうしろに腕を回しながら
ずっとくすくす笑ってるから。

抱き寄せられた長い腕の中から、
なに?って顔を見上げる。

「びっくりしたー。えっ?紺?って」

「……!!」

「ただでさえ浴衣脱がすとき
ちょう興奮してたのに、
紺色って!すげーえろかった。笑」


お布団のそばに散らばる
わたしの下着に
ひょいって目線を上げてる笑い顔。

恥ずかしくて恥ずかしすぎて、
無邪気に笑ってる胸の中に顔を埋める。

「た、たまたまだったの!」


「わーかってるって。笑」

ほんとに!
ほんとにたまたま…!!

なんて、

焦って言い訳してるみたいになった
わたしの顔をのぞきこんで。

赤くなってるであろう頬を
優しく撫でてくれる大きな手のひら。

今はふざけてくすくす笑ってる
かわいい雅紀だけど。

ゆっくり脱がされた浴衣の胸元、
はだけて見えたネイビーの下着に
一瞬固まってた表情を思い出して、

余裕がなくなっちゃったみたいな
オトコの顔した雅紀を思い出して…
胸がキュンとなる。

「あーー…ねみー…」

ぎゅっと抱きしめてくれる腕。
頭のてっぺんに感じるほっぺた。

心地いい、なんて状態は
とっくに通り越してる疲労感だけど。

くっつく素肌がすごくすごく幸せで。
雅紀の背中に右腕を回す。

広くて大きな背中。

さっきは浴衣越しに触れてた、
雅紀の背骨。

首のうしろ、
汗でしっとりしてるえりあしの髪。

肩。
腕。
耳。

なんとなくほわほわ撫でてたら
またぎゅうって抱きしめてくれる腕。

「んー…」

眠そうな、柔らかい声。

かわいい。
やっぱりわんこみたい。笑

閉じてるまぶたにちゅってキスしたら
ぱっ!て目が見開かれて。

び、びっくりした…

「雅紀、寝る?なんか着ないと…」

ごまかすみたいに、
体を起こそうとしたら。

「だーめ」

またきゅうにオトコっぽい、
セクシーな瞳に捕えられる。

「…もっとキスして」

体の上に戻ってくる、雅紀の重み。
絡められる、長い指。

優しく、でもどんどん深く。

優しく、でもどんどん深く…
また甘い時間を連れてくる。

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

「腹へったねー!」

運転する雅紀の目がコンビニを探してる。

まるで昨日の朝とおんなじだけど。
おんなじじゃないんだ。

わたしたちはもう、
友だちじゃなくて恋人なんだって、
胸がじんわり熱くなる。

「朝のバイキング…楽しみだったのに」


「うん。ごめん。笑」

「翔くん、焼き立てのクロワッサン

マジうまいからって言ってたのに」


「うん。言ってたね。笑」

運転しながら、
雅紀がずーっとにこにこしてるのが
なんか恥ずかしくてつい、
かわいくないことばっかり言っちゃう。

「ごめんって!
だってほんとに止まんなかったんだもん」


疲れ果てて意識を手放して、
目を覚ました時にはもう
朝食の予定時間なんてとうに過ぎてて。

どうせもう間に合わないよ、って
時計を見て開き直った雅紀が
もういっかい、なんて言って。

ギリギリまで、
っていうかついさっきまで…

ああもう、ココロも、体も
いっぱいいっぱい。

雅紀でいっぱいでもう…もたない。

「あ、コンビニはっけーん」

これが男女の違いなのってくらい
すっきりすがすがしい雰囲気の雅紀が
駐車場に車を入れる。

「よし。行こ?」

「…待ってるからなんか買ってきて」

「あ、もしかして体キツい?笑」

顔を覗きこむ雅紀が

すごくすごくうれしそうだから…
悔しくてほっぺをぎゅーっとつねる。

「痛って!ごめんごめん!
わかったわかった。笑

じゃあ待ってて」

いいこいいこって

わたしの頭を撫でてから車を降りてく。

コンビニに吸い込まれてく高い背を見ながら、
ふう、って小さく息を吐き出した。

「…………」


体がキツい…
確かにそれもあるけど
それだけじゃなくて。

さみしさで
心がつぶれちゃいそうなんだ。

この幸せな時間が
もうすぐ終わってしまうのが怖い。

雅紀の住む街までは、
車でたぶん半日はかかる。
かかっちゃうから…

近くの駅で降ろしてもらって、
ひとりで帰らなきゃ。


ちゃんとひとりで帰らなきゃ。

透明のガラスの向こう、
高い背、少し茶色い髪の毛が

店内をいったりきたり。

 

奥に向かって見えなくなったと思ったら、
また現れて、レジ待ちしてる横顔。

店員さんと笑顔でやりとり。
ズボンのポケットからお財布。

ビニール袋を下げて歩いてくる、
その姿をずっと見つめてたら。

まだ自動ドアの向こう側なのに、
透明のガラスが隔ててるのに。

わたしの視線に気がついて
ぴかぴかの笑顔。

大きな手をひらひらって振りながら
目尻にいっぱいしわを寄せた、
大好きな雅紀の笑顔がわたしを見てて。

胸がぎゅーっと締め付けられる。

怖い。
この時間が終わってしまうのが怖い。
離れたくないよ。

あと少し。
あともう少ししかないのに。

上手に笑顔が作れない。

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

「おまたせ」

 

雅紀が車に戻ってきただけで、
この空間にふたりっきりってだけで、
ちょっとほっとする。

ほっとするくせに
やっぱりそっけない顔しかできない、
素直じゃないわたし。

「ねえ」


「?」

「も少しドライブしよ?」


「え?」

「…まだ一緒にいたいし」

運転席から伸びてくる
雅紀の大きな手のひら。
右手をそっと、握ってくれる。

「もうちょっと一緒にいよ?
一緒にいたい」


わたしの気持ち
ちゃんとわかってるよって
言ってくれてるみたいな
雅紀の表情。

言いたくても
素直に言えないこと

ちゃんとわかってくれて
言葉をくれる雅紀が。

すごくすごく好きだなって…
あらためて思うんだ。

幸せなのに苦しくて、
胸がぎゅーって痛いけど。

あと少し、もう少しだけって
雅紀の左手をぎゅって握り返した。


(初出:2015.12.4)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

お付き合いありがとうございました。

少しでも一緒にキュン♡
していただけてたらこれ幸いです。

言ってもらいたいこと、
してもらいたいこと、
かなり詰め込んじゃった( ´艸`)

「ええっ!黒?
あ、ちがう!紺だーーっ!!」


ってテンション上がってほしかったの♡(バカ)

セクシーっぽいけどけっこう、
清楚にも見えるよね?紺って( ´艸`)

勝手な妄想ほんとに失礼しました。
ごめんなさいm(_ _ )m

長々読んでくれてありがとう!!
感謝です♡

 

【小ネタメモ】

 

押し倒された夜のあとはもう

すぐ朝のシーンでしょ、と

テレビドラマ的セオリーを

ちゃんと守って書いてたね。笑

 

これを書いた2015年の12月は

Japonismツアーの真っ最中で。

 

この幸せな時間が
もうすぐ終わってしまうのが怖い。

 

嵐さんのライブ中、

いつも思ってた感覚が

出ちゃってるなーって思います。

今読み直すとよりそう思う。

 

最後までお付き合い

どうもありがとう。

 

また次回もよろしくです(^^)/