【妄想小説】あいのは(7) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

「さむいっ!」

「うわっ、風すごいね!?」

もう少しドライブしようって
雅紀が言ってくれて、
地元近くの湖まで車を走らせて。

近すぎて逆に来ないよね、
冬ってやっぱり凍ってるのかな?

なんてふたりではしゃいで
車を降りたはいいけど。

降りた途端に
冷たい風がびゅーびゅー吹きつけて
目も開けてられないくらいだった。

「あの建物まで走るよ、ほら!」

手をぎゅっと握った雅紀が
わたしをひっぱる。

締め切られた古い売店、
奥まったかたちの入り口付近。

ふう…ってひと息ついたら
そこはびっくりするほど風を感じない。

「あ、なんかあったかい」

「うん、ほんと」

観光スポットとも呼べないくらいの小さな湖、
しかもこんな真冬に来る人なんて誰もいなくて。

この古い売店、
夏も閉め切られてるんじゃない…?

黒く変色しかけてるドア、

木の取っ手をちょっとさわってみる。

「ね、見て」

雅紀の声に促されて視線を上げると
目の前には静かな湖。

 

「いいね、冬も」

ちょっとさみしげな雰囲気だけど
となりに雅紀がいるから…
特別に感じるよ。

「凍ってないんだね?」

「そりゃそうだよ、
北海道じゃないんだから。笑」

くすくす笑ってたらふと、
首もとに雅紀の長い指が伸びてきて。

「…髪。ぴょんってなってる」

車を降りるときに巻いたマフラーを
大きな手で整えてくれる雅紀。

マフラーから出てる髪も
優しくさわって、直してくれる。

「うん。おっけ。直ったよ」

最後にあたまを、
よしよしって撫でてくれるから、

思わず言葉をつなぐ。

「あのね、」

「ん?」

「雅紀はずっと…
無意識だったかもしれないけど」

びゅう、と風の音。

「いつもこうやって、

わたしの髪、直してくれるでしょ」

「…………」

「だからね、わざと…
髪、ぴょんって…いつも、」

恥ずかしくて、視線をそらす。

「雅紀が直してくれるのが好きで、
いつもテキトウにマフラー巻いてるの」

こんなこと言うつもりなかったのに。


やっぱり今日も

優しく直してくれたから、
つい口をついて出てしまった。

「…したたかでしょ!笑」

恥ずかしくて、
一緒に笑い飛ばして欲しくて、
へへへ、なんて笑ってみる。

いいなと思う女の子のタイプー!
なんて雅紀と翔くんが話してたとき

”したたかな子はちょっとね”

って意見が一致してたことを思い出して…
ちょっと胸がちくんとしたけど。

わたし、したたかなんだよ。

ずっと友達の距離のままだった雅紀に
髪を撫でてもらいたくて…
そんなことしちゃうくらい。

瞬間、ぎゅーっと抱きしめられる。

「そんなことないよ」

「え?」

「それを言うならオレだって」

きゅっと細められた
雅紀の優しい瞳と目が合う。

「いっつも、

翔ちゃんより先に!って思ってたから」

「なんで翔くん?

翔くんそんなこと、」

「覚えてない?いつだったか…
結んでるポニーテール、
マフラーの中に入っちゃってるのを
翔ちゃんがひょいってやったんだよ」


またぎゅーって、

広い胸に抱きしめられる。
ほっぺに感じる、

雅紀のダッフルコートのボタン。

「だからそれから…

マフラー巻いてるときはいっつも、
オレが先に直すんだ!って

思ってたんだよ?」

お互いさまじゃーん!!

なんて言いながら、
雅紀がぎゅうぎゅう
抱きしめてるからだを揺らす。

まさかそんなこと思ってるなんて
考えもしなかったから
びっくりしたけど嬉しくて…
胸がきゅんとなる。

きゅんとなってぎゅーっとなって、
もうずっと苦しいよ。

「雅紀」

「んー?」

「…好き」

「うん。オレも」

ずっとずっと好きだった雅紀に
好きって言えるの、幸せだなって思う。

ずっとずっと好きだった雅紀に、
好きって言ってもらえるのはまだ、
夢みたいだけど。

 

「…………」


手袋を外した雅紀の両手が、
わたしの頬を包む。

指先でゆるゆると
耳のふちを撫でられて、
かぁーっと熱くなっちゃうのに。

だんだんと顔が近づいてきて、
鼻と鼻をくっつけて。

ふふふって
ふたりでちょっと笑ったら、

幸せなキスが降ってきた。


(初出:2016.1.12)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

読んでいただき

ありがとうございます(^^)/

 

【小ネタメモ】

 

ちょうどこの時期に発売された

anan雅紀を見て書きたくなったお話でした。

ロイヤルブルーのダッフルコート着た雅紀が

ものすっごく素敵でねえ…

思えばほぼほぼ、相葉さんのお話は

ananのお写真から妄想してる気がする。

 

今回使った写真は、

2018年の秋に撮った洞爺湖です。

真ん中にちょっとだけ虹が見えてる(^^♪

 

「凍ってないんだね?」

「そりゃそうだよ、
北海道じゃないんだから。笑」

 

北海道といえど、

凍らないこともあるとは思うけど、

image

2月に見た小さな湖はうっすら凍ってたよ

空が高いなー

 

「あいのは」は残り2話です。

あっという間だねー。

またどうぞよろしくお願いします(^^)