【妄想小説】ルビー(完結) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

(side翔)

 

ss_0610 今朝の青空

インスタに上げて

ものの数分でコメントがつく。

 

nino3_23

今日も意識高いですね

 

うるせーうるせー。

 

なんでニノの中では

空の写真を撮る = 意識高い

ってことになってるんだろうか。

 

nino3_23

スムージー飲みました?

 

飲んでねーわ。

 

nino3_23

朝ヨガとかやってます?

 

やってねーわ!

 

「意識高い系イジリやめろ。笑」

 

iPhoneの画面に

ひとりツッコミをいれて

急いで会社に向かう。

 

空の色。

 

空はすっかり、秋の色。

 

あの日と同じ色。

また同じ季節が来たんだな…

 

あれから2年。

 

”いってらっしゃい!”

 

あれ以来さくらさんは

オレとの連絡を絶った。

 

sakura2020のIDは、

ニューヨークに着いた頃には

もう消えていた。

 

最後の朝の様子を思えば

十分に予想できたことだったし、

たぶん彼女は

そうするだろうと思っていた。

 

”ありがとう翔くん”

 

さくらさんの表情を、

涙を、思い出す。

 

”いってらっしゃい!翔くん!”

 

あの日の笑顔を

涙を、思い出す。

 

オレから連絡しようと思えば

いくらでも手段はあったけど、

あえてオレからもしなかったのは。

 

彼女のタイミングを待ちたい。

そう思ってたから。

 

想いは繋がっている。

そう信じられたし、

 

”オレにはあなたしか

考えられないんです”

 

”僕と結婚してください”

 

ゆるがない意思はもう、

はっきりと伝えてある。

 

だからきっと、

彼女の事情が許した時に―

 

いつかの未来。

 

心から笑って、

抱きしめあえる日がくる。

 

そう信じて、

過ごしてきたこの2年。

 

ニューヨークでの仕事は、

ものすごく刺激的で勉強になって、

 

こっちに来ることができて

マジで良かったと思うことばかりで。

 

”仕事がんばって。

ずっとずっと応援してる”

 

さくらさんの声。

もう何度思い出しただろう。

 

”好きだよ”

 

彼女もオレを

思い出してくれてるだろうか。

 

”絶対外さないで”

 

彼女の小指には今も、

オレが渡したルビーの赤が

小さく灯ってるだろうか。

 

彼女を守ってくれてるだろうか。

 

 

この2年。

 

 

ホテルアオゾラの状況は

事あるごとにニノが伝えてくれたし、

新聞や雑誌のオンライン記事で

目にすることもあったけど。

 

【老舗ホテル 経営権の行方は?】

【揺れるアオゾラ 長引くお家騒動】

 

創業家と現経営陣の対立を

面白おかしくかき立てる記事が

増えていくだけの日々が、歯がゆかった。

image

今日の空は

あの日の朝によく似てる。

雲ひとつない、高い空。

 

彼女に会いたくて…

たまらなくなる。

 

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

 

(sideさくら)

 

翔くんのことを

思い出さない日は1日もない。

 

”いってきます!!!”

 

翔くんの声を

思い出さない日は1日もない。

 

”ありがとう!!”

 

聞こえた声。

大好きな声。

 

あんなに泣いたのは

人生で初めてだった。

 

笑顔を覚えていてほしくて、

泣き顔を見られたくなくて、

隠れるように角を曲がったけど…

 

涙が溢れて止まらなくて、

壁にもたれてしゃがみこんだまま

動けなかった、あの日。
 

あれから2年。

 

”オレはあなたと、

未来を共にしたいんです”

 

翔くんの言葉が、

伝えてくれた想いが

今日まで支えてくれた。

 

小指の赤いルビーが

ずっと支え続けてくれた。

 

負けそうな時、折れそうな時、

思うだけで、強くなれた。

 

いつかの未来。

あの日約束した未来を。

 

叶えたくて必死に、

戦ってきたこの2年。

 

ずいぶん時間が

かかってしまったな…

 

あの日からずっと、

外さずにつけてた指輪を

そっと触る。

 

赤く輝くルビーの光。

 

 

”僕と結婚してください”

 

翔くん。

 

時間がかかってしまったけど

あの日の返事をしてもいいかな。

 

ようやくちゃんと、

答えられるわたしに

なることができたから。

 

想いは繋がってる。

 

そう信じてここまで

がんばることができたから…

 

 

コンコン

 

「はい」

 

「会場の準備はできておりますが」

 

「はい、今行きます。大丈夫です」

 

「緊張されてますか?」

 

「少し。でも支配人の顔を見たら、

ちょっと落ち着いてきました」

 

「それは良かった。

では、会場へ参りましょう

 

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

 

(side翔)

 

 

「あ」

 

夕方、家に帰る途中で

メールが入ってることに気づいて

何気なく開く。

 

件名:翔ちゃん大変


「ん?」

 

添付されてる画像。

開いて思わず大きな声が出る。

 

「えっ!マジ??」

 

ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、

 

急いでニノに電話。

 

はやる気持ち。

焦る気持ち。

高鳴りまくってる鼓動。

 

プルルルル

プルルルル

プルルルル

プルルルル

プルルルル

プルルルル

 

カチャ

 

「もしもしっニノ?」

 

「…………あい」

 

「あっ時差…!ごめんニノ…」

 

「翔ちゃん……今何時よ」

 

「ごめんごめん!マジでごめん。

こっちは今夕方なんだけど、

メール気がついたの今さっきで」

 

「こっち朝5時よ…

オレついさっき寝たばっかだよ」

 

「ほんと申し訳ない」

 

「いや、いいよ。

オレは嬉しいよ翔ちゃん」

 

寝起きのニノの柔らかい声。

 

「そんな慌ててかけてくるなんて

翔ちゃんらしくなくていいよ。笑」

 

「ニノ…」

 

気恥ずかしいけど

ちょっと嬉しくて頬が緩む。

 

「とりあえず1回、

こっち帰ってくるでしょ」

 

「うん。最速で有休取るよ」

 

はやる気持ち。

焦る気持ち。

高鳴りまくってる鼓動。

 


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

 

「翔ちゃん!!」

 

「おーー相葉さん!」

 

ニノの店に入るなり

めちゃめちゃ笑顔の相葉さんが

がばっと抱きついてきて、

その勢いに思わずよろける。

 

「翔ちゃん…ひさしぶり」

 

なぜか次は

ゆったり近づいてきた大野さんに

ゆっくりと抱きしめられて、

 

「お、…お久しぶりです」

 

「会いたかったよ翔ちゃん」

 

妙にしっぽりと抱きあう感じになって

なんかすげーー恥ずかしい。

 

「翔さん、お疲れさまです」

 

「松本くん!」

 

「お久しぶりっす」

 

「潤くんは?

抱きつかなくていいの?」

 

「いや、オレは……いい。笑」

 

松本くんに照れられると

なんかオレまで照れてくんな…笑

 

「翔ちゃんいらっしゃい。

お待ちしてましたよー」

 

変わらないニノの

変わらない笑顔。

 

「正直ニノとは、

久しぶりの感じしないね。笑」

 

「まーねー。

しょっちゅう連絡とってたしね。

あ、これ。さっそくだけど」

 

手を伸ばして渡される、新聞記事。

 

「メールだと画像荒かったでしょ」

 

渡された紙面を

まじまじと見つめる。

 

帰ってくる飛行機の中で

何度も何度も見た画像。

何度も何度も読んだ記事。

 

【ホテルアオゾラ 創業家が守る】

 

 創業者の孫が 新社長に就任

 建て替え計画見直しへ

 

さくらさん。

 

彼女はアオゾラを守った。

大切なものを…守り切った。

 

新社長就任会見の写真。

大きく写ってる、さくらさん。

 

拡大して何度も見てたけど

紙面で見るとよりぐっときてしまう。

 

「さくら見たことない顔してる。笑」

 

「緊張してる顔じゃない?」

 

「キレイな人だよね」

 

「まさか社長になるとはねー笑」

 

「…………」

 

巡った季節を思って胸が熱くなる。

 

 

写真に写る、彼女の左手。

 

薬指に、結婚指輪はなく。

小指に光るのは…

 

 

「とりあえずみんな、

突っ立ってないで座んなよ」

 

「うん。座ろ座ろ」

 

「翔ちゃんはいつもの席ね」

 

ニノの声に

カウンターに目を向けたら。

 

「マジで赤くしたのかよ。笑」

 

ひとつだけ、

真っ赤に塗られた派手な椅子。

 

「そりゃそうだよ約束だもん」

 

「いやそうだけどさ…笑」

 

「名前入ってないだけマシだよ?」

 

「ニノはマジで

名前入れようとしてたからね」

 

「え?なんて?」

 

「ゴールドの文字で、

”櫻井翔専用席”って」

 

「ヤンキー漫画みたいんなる。笑」

 

「オレが全力で止めたんだよ」

 

「松本くんマジでありがとう」

 

「ねえ久々に5人揃ったからさ、

写真撮ろうよ写真!」

 

「え?もう?笑」

 

「も少し後でもいいんじゃない?」

 

「後からも撮るけどさ、

まずは再会を祝した1枚を、」

 

「撮るの?誰撮るの?自撮り?」

 

「自撮り自撮り。5人入るように。

松潤これ、どうやんだっけ?」

 

「どれ?あ、これは…」

 

「翔ちゃんはここ座って撮る?」

 

「うん、そうしようかな」

 

「せっかくの赤い椅子だからね♪」

 

わいわいしてた声に

意識が引っ張られていて

扉が開く音にも気がつかなかった。

 

ニノが入り口の方を見て

若干いたずらな顔で笑ったことにも

気がつかなかった。

 

ふいに、声が。

オレの耳にまっすぐに、届く。

 

 

「…となり、いいですか?」

 

 

ずっとずっと、

想い焦がれていた彼女の声が

突然聞こえて、

 

ずっとずっと、

会いたかった彼女が、

すぐ真横に立っていて…

 

赤い椅子に座ろうとしてたオレを

赤いルビーをつけた彼女が、

 

今にも泣きだしそうな目で

まっすぐ見つめていて…

 

「…翔くん、」

 

「………!!」

 

ガタガタガタッ

 

椅子が倒れるのも構わず

彼女の左手をぐっと引っ張る。

 

「おー」

「わー!」

「ふふ…」

「……」

 

彼女のからだを

力いっぱい強く抱きしめたら、

 

彼女の腕も

迷いなくオレの背中に回って、

ぎゅっと強く、抱きしめあう。

 

 

ずっとずっと、

会いたかった人。

 

想い、焦がれ、

抱きしめたかった人。

 

 

”いつかの未来”

 

ついにその日がきたなんて。

 

 

「翔くん、」

 

腕の中の彼女は、涙声で、

一番最初に伝えてくれる。

 

「おかえりなさい」

 

ずっとずっと、

待ち望んでいた言葉。

待ち望んでいた未来。

 

涙をぽろぽろこぼしながら

大きな大きな笑顔で…

 

 

強く強く、抱きしめる。

 

 

さくらさん。

 

会えなかった間のこと、聞かせてよ。

答え合わせを、たくさんさせてよ。

 

これからふたりで

思いのままに笑いあって、

思いのままの、未来を。

 

「おかえりなさい…翔くん」

 

腕の中からもう一度、

届けてくれた、彼女の涙声に。

 

「…ただいま」

 

ずっとずっと、

伝えたかった言葉を

小さくそっと、つぶやいた。

 

 

(初出:2019.10.20)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

m(__)m

 

長い長い物語、

見守っていただき感謝です。

 

最初にいただいたコメントを

そのまま残したかったので

日付と写真だけを変えて

Rebornとしました。

 

つけていただいたいいねも

そのまま残ってるはずなので、

新たにつけ直していただいても

当時のままでもどちらでも嬉しいです(^^)

 

最後まで読んでいただき

本当に本当にありがとう!!

夕方にあとがきをアップします、

小ネタも楽しんでもらえたら(^^)/