【妄想小説】Summer Soldier(2) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

ゴロゴロ、

買い物カートを押す、

背の高いリョウ先輩のうしろ。

 

キョロキョロ、

野菜コーナーで必要な材料を探す。

 

「先輩、おうちに玉ねぎあります?」

 

「んー、ない」

 

「しょうがは?」

 

「………」

 

「ないですよね。笑」

 

玉ねぎとしょうがをカゴの中へ。

 

サラダも作るから

レタスとトマトと…

あとおつまみも何品か…

 

あ、豚肉豚肉!

 

「先輩、さすがに小麦粉は

ありますよね?」

 

「……えーっと、」

 

危ない。

買っておこう、小麦粉!

 

コロコロとカートを押しながら

振り向いた先輩のキレイな横顔。

 

「今日はひさびさ!
手料理食べられるの嬉しー♡」

 

「先輩ほんとに

一切自炊しないんですか?」

 

「…だって、できない」

 

「できないことないですよ。

簡単ですって」

 

仕事はバリバリ完璧なのに

お料理が苦手なんて

ちょうかわいいけど。

先輩の、ちょうかわいいところだけど。

 

「ごはん、毎日どうしてるんですか?」

 

「ほぼ外食とたまにコンビニ、

あと…お取り寄せ?」

 

「お取り寄せ!セレブー」

 

美味しいもの食べるの

大好きだからな先輩。

 

「生姜焼き、ちょう楽しみ」

 

「ふふっ笑」

 

ひさびさに定時に上がれた今日は。

先輩のおうちで女子会。

 

女子会っつーか

ただの飲み会だろ?

 

なんてニノが

また憎まれ口叩いてたけど。

(うらやましいんだろうけど)

 

こないだのお昼、

部長に呼び出されたせいで

生姜焼き定食食べ損ねた先輩が

ほんとに嬉しそうにしてるから。

わたしもすごく、嬉しい気持ち。

 

「今日はタモリ式レシピの生姜焼き!

作ってみますよ」

 

「タモさんの生姜焼き!

食べてみたかったー♪」



 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

「…!!美味しいーー!!」

 

お肉、ひと口食べたとたん

すっごくすっごくかわいい笑顔。

 

「天才!」

 

「タモさんが。笑」

 

「タモさんもだけど。笑

やっぱりお料理上手ー!」

 

褒めてもらって嬉しくて

えへへ、と頬がゆるんじゃう。


「ほんとに最高。

いいお嫁さんになるっ」

 

「え?お嫁さん?笑」

 

もうすでに3本目の一番搾りを

ぐいっと傾けつつ、

ふたりで笑う。

 

おいしくて、楽しくて、幸せ。

ああなんて幸せな時間…

 

ブーブーブー

 

「ん?先輩 電話鳴ってません?」

 

「あ、ほんとだ。

ごめんちょっと出るね」

 

画面を確認したリョウ先輩が

iPhoneを耳に当てる。

 

「もしもーし」

 

少しだけ漏れ聞こえてくる、低い声。

 

「家にいるけど…え?今から?」

 

聞いちゃいけないかな。

 

立ち上がってキッチンへ。

冷蔵庫から取り出す、

4本目の一番搾り。

 

…先輩んちの冷蔵庫、

ビールとキムチしか入ってないの、

いさぎよくて気持ちいいな。笑

 

「今 後輩ちゃんが来てて。

うん。うん、そうそう」

 

え、わたしの話?

 

「あー…

あっそれは…欲しいかも。

ちょっと待って?」

 

チラッとリョウ先輩と目が合う。

 

「あのね、」

 

「?」

 

「札幌からお取り寄せが…」

 

「え?」

 

「札幌出張の帰りで、今羽田で、

それで…もぎたてのメロンが

手に入ったから、」

 

「メロン?…出張?」

 

「今から届けるって

言ってるんだけどいいかな」

 

「届けるって、誰が……あ、」

 

もしかして、

もしかして、

 

「彼氏さん??」

 

急にドキドキしてくる。

 

「もちろんもちろん!

どうぞどうぞ!どうぞどうぞ!」

 

「ふふ…どうぞどうぞって、

ダチョウさーん。笑」

 

のんきに笑いながら

電話に戻る先輩を見つめながら。

 

アルコールで

ふわふわしてた頭が

ちょっとクリアに戻ってくる。

 

ああもうこんなことなら、

イキオイよくビール、

3本も飲むんじゃなかった。

 

「ほんと急にごめーん!」

 

パタパタキッチンまでやってきて

すごい勢いで謝るリョウ先輩。

 

「いえいえ全然。

むしろわたし帰った方が良ければ、」

 

「それはダメ!絶対ダメ」

 

わたしの頭、

くしゃくしゃと撫でながら

そんなこと絶対させないよって

優しく甘い声。

 

「メロン置いたら

すぐ帰るって言ってたから大丈夫」

 

え?

そうなの?

わざわざ届けてくれるのに?

 

ちょっと気になりつつ、

でもそれ以上に、今の気持ちは。

 

「彼氏さんに会うの楽しみです」

 

「えー?」

 

「先輩全然教えてくれないから。

どんな人なんだろーね?って

ニノとも話してたんで」

 

「えっやだ。

ニノとそんな話してるの?」

 

冷蔵庫から

同じく一番搾りを取り出しながら、

リョウ先輩が眉を下げる。

 

「出張、多いんですか?」

 

「うん。多いみたい。商社だから」

 

商社勤務なんだ。

 

「いつからつきあってるんですか?

つきあったきっかけは??」

 

ついつい、

たたみかけて聞いてしまうわたしに

のんびりとしてる先輩の返事。

 

「いつから…?

…1年くらい?たぶん」

 

「たぶんですか。笑」

 

サバサバしてるな…

でも先輩らしい。

 

「もともと大学の友だちだから」

 

「あ、大学の」

 

「友だち期間が長いっていうか、」

 

ピンポーン

 

「あ、来た?」

 

玄関に向かう

先輩の後ろ姿を見ながら、

ちょっと緊張。

 

 

どんな人なんだろう。

 

 

「…るからね?」

 

「ああ、了解了解」

 

だんだんと聞こえてくる、

二人の声。

 

ドキドキドキ。

ドキドキドキ。

 

カチャ

 

ドアが開かれて、

先輩の後ろから現れた人は。

 

「はじめまして。

櫻井翔と申します」

 

初夏の夜の空気と共に

目の前に現れた、その人は。

 

あまりに素敵で。

スーツも、笑顔も、低めの声も。

あまりにも素敵で。

 

一瞬で、

知らない感情を連れてくる。

 

この胸の音は、

勝手にドキドキしてるこの音は。

 

違う。

違う違う。

 

「いつもこいつが、

お世話になってます。笑」

 

空気を揺らす低い声。

はにかんだみたいな笑顔。

 

「ちょっと。こいつってなに」

 

妙に不機嫌に

ツッコミを入れる先輩のとなりで。

 

「は、はじめまして…」

 

どうかどうか、

不自然じゃありませんようにと

願いながら大きく、頭を下げる。

 

「っつーかなに?なんの匂い?

すげーいい匂いすんだけど」

 

鼻をくんくんさせてる

目の前の櫻井さん。

 

スーツ姿のかっちりとした雰囲気、

さっきの丁寧な自己紹介とは真逆の、

男の子みたいな口調に戸惑いつつ。

 

「あ、生姜焼きを作ってまして、」

 

「え!生姜焼き?」

 

くるくる、大きな目。

 

「…食いてー。

今マジで腹減ってて、」

 

眉毛、八の字に下げて

ほんとに食べたそうな顔に

緊張してた気持ちがほぐれてくる。

 

「あの!

良かったら作ります、生姜焼き」


「マジで?」

 

「甘やかさなくていいのに」

 

「じゃあ飯食ったらこれ…

メロン、3人で食べない?」

 

櫻井さんが大きな紙袋を指さして。

 

「あ!メロン!

食べよ食べよー♡」

 

この胸の音は、

勝手にドキドキしてるこの音は。

 

先輩の彼氏さんに会えて、

嬉しいから。

 

そうだよ、そうに決まってる。

 

ドキドキドキドキ

ドキドキドキドキ

 

騒ぐ胸の音に、

ちょっとだけ動揺しながら。

 

先輩と櫻井さんとわたし。

3人で過ごす時間がやってくる。


 

(初出:2017.8.2)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


【20210117小ネタメモ】

 

タモさんの生姜焼きレシピは

小麦粉を使うんだよね(^^)

「読んだら食べたくなった!」って

智担のS姉さんが作った生姜焼きの写真、

送ってくれて嬉しかった思い出。

 

ラストをちゃんと考えて

伏線はりながら考えて書く、

そういうのに初めて挑戦したお話なので

楽しかったなあ。

 

翔くんスーツ姿のお写真、

いつも素敵なのがたくさんあったんで、

妄想が膨らみました。

この時使ってたのは

MUSICDAY番宣時のでした。

 

読んでいただき

ありがとうございます(^^♪