


東海道新幹線の冷水器は「WR14A」というタイプ。高さ130cmの箱型冷水器で名古屋市の「リニア・鉄道館」で保存されている0系などで見られる冷水器もこのタイプ。紙コップ収納箱や使用済みコップを捨てる箱を内蔵し、本体中央の蛇口のボタンを押すと冷水が出ました。
水が供給される仕組みはどの機種も同じ。車両の床下に設置されたタンクから吸い上げられた水は、紫外線を照射する殺菌灯とろ過装置からなる殺菌装置を通過して、予冷用熱交換器(プレクーラ)を経て冷却タンクに送られます。
冷却タンクは5リットルあり、冷凍庫と同じ仕組みで冷却されます。乗客がボタンを押すと水が流れますが、コップに注がれず受け皿に落ちた水はプレクーラの排水管に入って、これから冷却タンクに向かう水をパイプ越しに予冷した後に排水されました。どの冷水器も、水が凍結しないよう自動温度調節器を備えていました。
冷水器とセットで設置されていたのが封筒型の紙コップ。上部が波を打つような曲線を描く独特の紙コップは、東京都大田区にある丸ノ内紙工という企業が製造、供給していました。
「封筒型紙コップは、封筒よりも厚い紙を使うため、同じ糊を使うとはがれるという問題がありました。濃い糊を使うと大量生産できないうえに防腐剤が必要になり、飲用に適しません。また、製造過程で出る紙のロスをいかに減らしてコストを削減するかという点にも知恵を注ぎました」(丸ノ内紙工 前社長 荻野 壽さん)
荻野さんが新たに考案した紙コップは、紙に全く無駄の出ないものでした。横150mm、縦194mmの紙を内側に折って、上下をラミネート加工して閉じ、ローラーの熱板を通して中央の重なった1cm部分を貼り合わせます。そうしてできた紙筒を束ねて、中央を曲線の刃で裁断すると、封筒式紙コップができあがります。この作り方なら紙のロスがまったく出ず、手を触れずに製造できるので衛生的にも優れていました。
平成に入ってJRの時代になると、ペットボトル入りのミネラルウォーターが広く一般に浸透したこともあり、冷水器は徐々に使われなくなっていきました。
乗りものニュースより写真と記事を引用