

螺旋状の上昇気流は積乱雲の壁(アイ・ウォール)を作り、それより中心に近い部分は気流が侵入できず、気流が穏やかで雲がほとんどなく晴れた区域となる。この領域が台風の目である。この段階になると、「目」は上空から容易かつ明瞭に観察できるようになる。
熱帯低気圧が発達し最盛期を迎えるまでの期間では、中心気圧は急速に下がるが規模(勢力範囲。暴風域や1000hPaの等圧線で示される)はあまり大きくならないため、域内の気圧傾度が急になり、中心に巻き込む風の求心成分が大きくなるので、目は非常に小さくなることが多い。稀には直径3km程しかない目が観測される場合もある。最盛期を過ぎてからは中心気圧が徐々に上がり始めると共に勢力範囲も広がり、それに並行して目も拡大する。有名な例は1954年の台風第12号で、九州に上陸した際の目の直径が200kmに及んだ。しかし、このような巨大な目は熱帯低気圧が衰弱期に入った場合に見られるのが普通で、また、衰弱期の目は楕円形になったり、崩れて形や存在が判別しにくくなる。上陸して衰弱が進み、また温帯低気圧化すると目は完全になくなってしまう。
目があまりに大きくなると、アイ・ウォールが崩れて成長がいったん滞り、内側に新たな目が形成されることもあるが、このような場合は勢力があまり強くならないことが多い。また、ハリケーン・イザベルなどにおいては多角形状の目が観測されている。
