

北キプロスは、キプロス島の北部の国である。1983年に軍事的な後ろ盾となっている隣国トルコの影響下で、キプロス共和国からの独立を宣言した。トルコ以外からの国家承認は受けていないが、キプロス共和国の実効支配は及んでいない。
北キプロスを国家承認する国はトルコ共和国以外に存在しない。キプロス共和国からの分離に至る経緯から、建前としては独立国家という形をとっているが、独立後も実際にはトルコの強い影響下に置かれているとみられている。
元々、キプロス共和国の独立(1960年)以前から、トルコ系住民の間にはキプロス島をトルコ系とギリシャ系の領域に分割してトルコに帰属させるべきとの主張があり、トルコはキプロス問題の行方によっては北キプロスを併合することもありえるとしてきたほどである。近年のトルコ共和国は、国際連合案による統合住民投票に賛成するなど、EU加盟交渉をにらんでキプロス問題に対する態度を柔軟化させているが、一方で依然として南のキプロス共和国の承認を拒み、北キプロスから手を引かない姿勢も見せている。
トルコのみが承認する独立国家であるという事情から貿易相手がトルコのみに限られ、外国からの資本導入も難しいために欧州連合加盟を果たした南キプロスに対して大きな経済格差を起こしている。北キプロス独自の通貨はなく、トルコの通貨を用いている。2005年の新トルコリラ導入を経て、現在の通貨はトルコリラ(TRY)である。トルコに経済的に依存しているため、1990年代以降、旧トルコリラ(TRL)のインフレーションの影響を受けて苦しんだ。