
サウンド面では、鈴木・和嶋両人が熱心なファンだというブラック・サバスを髣髴とさせるハードロックが基調である。技術的には一音半下げのチューニングを多用したヘヴィかつ緻密なリフ、スリーピースのサウンドを埋めるように重くうねるベースライン、1970年代のハードロックバンドを想起させる起伏に富んだ楽曲展開、ハードロックよりもドゥームメタル寄りのミッド~スロー・テンポの多用などが特徴として挙げられる。その他にもハードロックでは、楽曲「Breadfan」を和嶋のオリジナル歌詞に差し替えて「針の山」としてカバーしたバッジーや、ライブで度々カヴァーを演奏しているレッド・ツェッペリンやレインボーなどがある。プログレッシブ・ロックやサイケデリック・ロックの要素も大きな割合を占め、重鎮キング・クリムゾンのような楽曲構成やロバート・フリップ独特のスケールにくわえ、ホークウィンドやアイアン・バタフライなどをはじめとしたサイケの陶酔感やスペース・ロック的な意匠を用いることもある。
人間椅子のサウンドはオールディーズなロックの様々な要素を独特の解釈でミックスしたものとなっており、いくつものアプローチを使い分け組み合わせての音楽性はある種「王道」で規範的でありながら個性豊かである。また先逹のアプローチをオマージュとして取り上げることも多く、ブラック・サバスばりのオーヴァーダブされたギターソロやキング・クリムゾン的なアルペジオも曲中に登場する。近年では和嶋のソングライティングやナカジマの歌唱によって、ストレートかつポップなロックンロールの要素も取り込み始めている。