ハッキリ言って、私はマットデイモンのファンです。
彼の作品と言うだけで、私にとっては観る価値のあるものです。
しかもクリント・イーストウッド監督作品・・・これは必見です。
私が女優だから俳優が監督をしている作品に興味があるのでは決してありません。
クリント・イーストウッド監督はすごく実験的で、しかも意表をついた演出をします。
編集の切り返しやカット割りにそれらが見られます。
その辺にそそられてしまうのは・・・
やっぱり私が女優だからなのかもしれません。
多くの観客の方がそんな観方はしないかもしれません。
でもきっと、何気ないシーンで思わぬ感情が突っつかれる気がする
・・・と、多くの方が感じるのではないでしょうか。
そこがクリント節なのです。
おそらく撮影現場では、俳優は演じ甲斐のある演出をされると思います。
それを感じるので、クリント作品はぞくぞくするのです。
具体的に言うと例えばラストシーン。
多くは語られない・・・結論まで見せない・・・きっとハッピーエンド・・・
でも、そこまで絵で見せてない。
素晴らしく高級な映像表現だと思います!
それとこのストーリーの構造。
全く関係ない3者が3本立てて語られてゆく・・・
きっと最後は絡んでいくのであろう3者が、
どう絡むのかどう関係あるのか最後の最後まで想像つかない。
古典的な手法ではありますが、
気持ちよくもどかしい絡み具合に持っていくには、
すごくセンスが要ります。
それともうひとつ、
大事なラブシーン。
露骨な性表現がないのにいやらしい、とか、
好き同士なのかわからない段階の二人なのに、
見て取るように好きな気持ちがわかる・・・
これを映画で表現するのは、
本当に難しいものです。
私の作品で恐縮ですが、
黒沢清監督の「893タクシー」で
ヒロイン加奈子(私)が相手役の豊原耕輔さんに詰め寄られて泣きそうになってしまうシーン
・・・あれは当時助監督をされていた青山真治監督によると、
「あれが黒沢さんのラブシーンなんだよね。黒沢さんはああ表現するんだ」
それこそが映画!と私は思います。
愛を語るのではないのに愛情表現がされている。
現実世界でも同じことかもしれませんが、
直接的に相手に愛情表現をしている訳ではないのに
愛がこもったことをしている・・・
これこそがさりげなく本物の日常的な愛です。
こんな映像表現が出来るクリント・イーストウッド監督は、
やっぱり凄い。
今回アクションシーンがないマットデイモン。
なのに全然期待を裏切らず、
もどかしくて、辛くて、ダサくて、カッコよくて、マイナーでない霊媒師をリアルに魅せてくれました。
それと主人公の双子の兄を失った少年に泣けました。
やっぱり映画っていいなぁ。
映画は現実の凝縮。
しかも忘れてしまいそうな大事な感情までも引き出してくれる、
優しいリハビリみたいな存在でもあります。
ありがとう映画
ありがとう「ヒア アフター
」
