『無伴奏ソナタ』再再演に寄せて

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『無伴奏ソナタ』初演は2012年。

私が入団して8年目のときだった。

『さよならノーチラス号』『飛ぶ教室』などでメインキャストをやらせてもらい、「主演の責任感」みたいなものをようやく感じ始めていた。
また、同時期に本公演として『容疑者Xの献身』が上演されていて、「負けられない」というか「泥を塗ってはいけない」という気持ちがあり、大変に息巻いていた。

しかし、この作品を立ち上げるためには様々な壁がそびえ立っていた。

まずは音楽。
プロのミュージシャンに作曲をお願いするとはいえ「この世には存在しない音楽」を存在させなければならないのだから、大変な苦労であったろうと思う。

それから、劇中で歌う曲。
台本にはト書きで「歌う」と書かれているだけで、何をどう歌うか全く決まっていなかった。
それから、クリスチャンが突然ハモりだすところも、何も決まっていなかった。
私は急遽、知り合いの知り合いに作曲家を紹介してもらって、コーラスの楽譜を作成してもらった。

そして、SFという設定。
考えれば考えるほど、想像が湧いてくる原作。私たちはメイカーとは他にどんな職業があるのか、この世界はいったいどんなシステムで成り立っているのか、散々話し合った。

最後に役作り。
いつかの時代のアメリカという設定。
ひとりの役者が何役もやらなければならないということ。
女性が男性を演じなければならないこと。
アメリカ人を演じなければならないこと。
手練手管の先輩劇団員たちも、大変苦労していたのを覚えている。

そんな要素もあって、初演はやはり不安だった。
通し稽古を観に来てくれた劇団員たちは褒めてくれたが、当時はあまり耳に入ってこなかった。

しかし、そんな不安な気持ちは初日のステージの終幕とともに消えていった。

−−−−−

再演はその2年後。2014年に行われることになった。異例の再演だった。

まずはその再演の早さ。
「いつかまたこの作品は再演されるだろうな」とは思っていたけど、たったの2年でそれがやってくるとは思わなかった。

そして初演から全く変わらないキャスト。
役者のスケジュールの関係や、その年齢感、経験値などの関係で再演ものはどうしたってキャストが変わるのが演劇界の通例だ。
しかし再演では誰一人変わることなく、欠けることなく、同じメンバーが揃うことができた。

おかげで稽古は初日から「初日の千秋楽の次の日」という感覚で進めることが出来た。
私も多少ではあるが、初演のときのような力みが無くなって、肩の力を抜くことができたのを覚えている。

「まだやったことのない場所で上演したい」「私達の方からお客さんに会いに行きたい」という、初めてのグリーティングシアターという企画でこの作品を選んでもらえたことが嬉しかった。

そしてこの作品は、多くの方に育てていただき、私の胸の中にしっかりと根付くようになった。

−−−−−

予想以上の好評と反響をいただいた。
私も劇団員たちも驚いたし、喜んだ。
また、身内に褒めてもらえるのも嬉しかった。

再演では、グリーティングシアターという特性も手伝って、キャスト感での絆はより増した。
東京や大阪だけでなく、どこで上演してもやっていける、この作品の力強さを再認識した。

今年。

成井さんから

『無伴奏ソナタ』を再演しようという案がまとまりました。が、そのためには、あなたが「クリスチャン」役を演じることが不可欠です。ぜひとも出演してもらえないでしょうか?

というメールが来たときは嬉しかった。
役者冥利に尽きた。
二つ返事でOKしたが、徐々に怖さと不安がやってきた。

この作品はもう躓くことはできない。
絶対に面白いものにしなければならない。
今回はさすがにキャストも変わるだろう。
再演の完成度を超えることはできるだろうか。

−−−−−

外部出演の関係があって、私は稽古参加が遅れた。が、久し振りに喋る台詞と、相手役の新しさでなんとも経験したことの無い楽しさを覚えた。

それから、みんな、もがいていた。
新しいパフォーマンス作りと、それぞれの役作りに。山﨑の稽古に付き合いながら、「そういえば初演だってみんな苦労していたよなぁ」と思い出した。

もとより「新しい『無伴奏ソナタ』を作る。そうなる」と思って取り組んでいたが、そんなみんなの努力を見るうちに、その思いをより強固にした。

初演再演を意識せずに、と思っていたけど、それは少し違って、初演再演は私が勝手に胸の中に潜ませておけばいい、という感じで今はいる。
音楽は時を超える。なんて言うけれど、劇中のあの歌やこの歌に、初演再演のキャストの気持ちがこもっているような気がするし、あのとき、一緒に口ずさんでくれたお客さんの風景も目に浮かぶ。

明日はいよいよ初日。

私は祈るような気持ちで初日を迎えるんだと思う。
それは、またこの作品を上演させてくれてありがとうという気持ちと、新しいメンバーでこの作品を上演する、どうぞよろしくお願いします、という気持ち。

こんな気持ちで初日を迎えることは、初めてである。