
それは、俺が10数年前に着ていた赤いアロハシャツ。この服には、ちょっとした苦い思い出がある。
今回は、その苦い思い出を披露しちゃいますわ。俺のやらかした出来事も、もう時効だと思いますしね。
今を去ること15年前、俺はコントローラーをやっていた。といっても、まだほんの駆け出しだったけどね。
ちょうどその頃は、深夜番組などでレースクイーンが取り上げられ始めた時期でもあり、彼女ら目当てのカメラ小僧と呼ばれる人たちがサーキットや展示会に大挙して押し掛けるようになっていた。
後日、このカメラ小僧と呼ばれる人たち向けにレースクイーンをキャストにした撮影会が乱立することになるんだけど、それはもうちょい先の話ね。
撮影会も未発達の96年当時、レースクイーンとカメラ小僧たちの接点はサーキットや展示会場ぐらいしかなく、必然的にどこの現場もカメラ小僧で溢れかえり大混乱を来していた。
もうどんだけ大変だったかっつーと、良くあんな喧騒の中で死人や怪我人が出なかったなと思うぐらい凄かった。誇張して書いてるわけじゃないよ。マジでそんぐらい凄かったわけさ。
控室から一歩でも外へ出りゃ、それこそ十重二十重に取り囲まれて身動きなんかできやしない。それも行く手を阻むかのように真っ正面に立ちふさがってくる。単に良い撮影ポジションを確保したいだけで、やってる当人たちに悪意はないんだろうけど、こっちはいい加減辟易するわね。
そんな中、あるレースクイーンの女の子がしくしく泣き出した。どうやらあの殺人的な人混みの中、どさくさに紛れてコスチュームの中に手を突っ込まれたらしい。それって犯罪じゃねーか!
ことここに至って何らかの自衛策を取るしかないと決断し、無い知恵を絞りました。しかし、なかなか妙案は浮かばない。
あんだけの人混みを効果的に制するには、治安維持の訓練を積んでいる軍隊や警察の機動隊を動員するしか手はないもんね。いま俺自身が警備員を生業にしているだけに良く分かる。因みに、あの種の人混みを整理したりする任務を警備業では「雑踏警備」と言います。
妙案が浮かばずイラついていたところ、同業者から“怖い人だと思わせれば良いんじゃない”とアドバイスをいただき、早速それを実行に移すことにしました。
彼らオタクにとって天敵と言えば、それはDQN(ドキュン)に決まっている。だったら俺がDQNになれば良いじゃないか! いま考えれば安直過ぎると思うんだけど、当時は真剣にそう考えたのよ( ̄~ ̄;)
それからすぐにファッションチェンジ。赤いアロハシャツに、ヤンキーご用達のレンズに角度の付いたメガネ、足元はサンダル。もちろんアロハシャツは前を大きく開け、首からは趣味の悪い大きな金のネックレス。
その姿は最早DQNというよりも、更にたちの悪いチンピラに成り果てました。その頃の写真が一枚だけ手元にあるけど、もうね、見るからに悪人過ぎて・・・(゜_゜i)タラー
翌日、アドバイスをくれた同業者に挨拶にいったら、何故だか彼ったら言葉少なでしたね。どうやらその格好が似合いすぎてたもんで、距離を置かれたらしいですわ。
オイコラ、こっちはオメーのアドバイスどおりにしただけじゃねーか。いったい何なんだ、そのよそよそしい態度はよぉ(-_-メ) とブチギレそうになりましたが、そこは我慢我慢。
その姿を目にした女の子たちには目を点にされるし、それまでに仲良くなっていた一部のカメラ小僧たちには爆笑されるしで、全く散々でしたわ。゜゜(´□`。)°゜。
でもね、その姿を見て俺の苦労を察してくれた数人のカメラ小僧たちが協力を申し出てくれたんで、その後の運営はスムーズに運びました。本当に彼らには感謝してもしきれないですわ。
先日の飲んだくれの一件と言い、今回のチンピラファッションと言い、本当に俺はダメダメコントローラーでしたねぇ。いやはや、全くお恥ずかしい限りです。