長文です。
先月のこと。
12月12日に、18年間やってきたフェリーでの演奏を終えました。
何度かお話しているかもしれませんが。
簡単に経緯をお話しすると、今の「きたかみ」は就航から30年となり、寿命が来てしまったのです。
仙台港下船 2019.12.12
今後は「ニューきたかみ」が就航しますが、そちらには演奏するラウンジが作られませんでした。会社の方針となれば仕方ありません。
僕以外の仙台から乗船されていた演奏者の皆さんも、船を下りる事になったのです。
さて、僕は20歳頃から昔の「きそ」にサンディーさんと言う女性ボーカルの方と乗船させて頂いたのをきっかけに、現行の「きそ」ではチェロの中舘さんと、「きたかみ」ではクラリネットの金田さんと乗船、昨年の4月以降はヴァイオリンの佐藤実治さん、サックスの林宏樹さん、同じ鍵盤の芳賀まゆこさんと演奏させてもらいました。
演奏の先輩方を見ては、あの年齢まで自分は乗って演奏できるのかなと思ったり(自分の体力的な面で)、フェリーの客層は様々(旅行の人もいればトラックのドライバーさんがいたり)で独特な場所で、選曲や演出も色々苦慮する部分もありました。
でもとても勉強させてもらいましたし、喜んでもらえた時の笑顔は一入でした。
そしてお客様もフェリーのみなさんも沢山の人に出逢い再会する事ができました。
可能な限りはずっと続けて行きたい、そう思える演奏の場所で、僕はフェリーが大好きでした。
そんな僕も実を言うと、小さい頃から乗り物酔いが酷く、最初に乗船の話をもらった時は、本当に大丈夫なのだろうかと思いましたが、それよりもフェリーで演奏できる!その嬉しさと期待の方が大きかったのだと思います。
当時のキャプテンには楽器をされる方もいて、ステージに出てきて頂いたり、ラウンジ演奏を聴いて下さったりして、太平洋フェリーっていいなと感じていました。
この18年の間、一定期間乗らなかった事もありますが、震災の後はほぼ毎月乗船させて頂き、天候が悪い時や自分の調子が悪い時期もあり、時化(シケ)に当たった時などは、本当に苦しくて辛くて、来年はもう辞めようと思った事も何度もありました。
でもその荒波や嵐は次の日になると穏やかになったりして、とても不思議な気分でした。
大変な思いをしても、下りてしばらくすると、またフェリーに乗りたいなと言う気持ちになり、これまで続けてこれたのです。
今回、自ら何かの理由で退くのではなく、こういう形で船と共に演奏を終えられたのは、ある意味良かったのかなと思っています。
「きたかみ」はもう海外でスクラップされてしまうのかと思うと、本当に悲しい想いですが、最終航行も無事に終えられた様なので、僕にとっても関わっていた沢山の人達にとっても、心に生き続ける想い出になって行くと思います。
またいつか船で演奏できる事を楽しみにしたいと思います。
苫小牧港タラップ