もう少しで電車が来るというくらいの時間になり、
「ちと、トイレ行ってくる」
「エナドリ効果、早いわね」
私がそういい終わる前に、峰岸さんはその場を立ち去っていった。
「・・・これ、置いていかれる方向の話?」
「一応、ボックス席を取るつもりだから、ギリギリまで待つ方向で考えるべきじゃない?」
私の疑問に、五十嵐さんがそういう答えを出してきた。
もう少しで電車が来るというくらいの時間になり、
「ちと、トイレ行ってくる」
「エナドリ効果、早いわね」
私がそういい終わる前に、峰岸さんはその場を立ち去っていった。
「・・・これ、置いていかれる方向の話?」
「一応、ボックス席を取るつもりだから、ギリギリまで待つ方向で考えるべきじゃない?」
私の疑問に、五十嵐さんがそういう答えを出してきた。
「それ、エナドリに限らずコーヒーとかでも同じじゃない?」
「言われてみればそうね」
要はカフェイン入りの飲料が危険だと。
「でも、水分は摂らないと死ぬだろ」
「そう言いながら躊躇せずエナドリ選択するあなたは何なの?」
「それを水分に分類していいのかな?」
まぁ、とりあえず冷たい飲み物だから、暑い中で飲むならそれなりの効果はあるでしょうけど。
「さて、電車が来るまで暇を適当に潰すわよ」
五十嵐さんがそう言いながら歩いている。
「それじゃ、飲み物でも買うか。暑いし」
「なら、エナドリ系は止めた方がいいわよ」
「なんで?」
「最悪、車内で尿意が襲ってくる」
あー、それはちょっと嫌だな。
「でも、その電車に乗る場合は三十分くらい待つことになるよね」
時刻表を見て、湊がそう言ってきた。
「そうね、三十分くらいは待つわね。でもね・・・あの灼熱の炎天下を二時間以上待ち続けた私たちには、もうそれくらいは一瞬で終わるわよ」
「比較対象が明らかにおかしいだろ」
結局、終わっても待つことになるのか・・・
「・・・これだと、三つ後の始発に乗るのが一番かな?」
五十嵐さんが電車の時刻を確認しながらそう呟いていた。
「いや、次に来るやつに乗ればいいんじゃないか? というか、始発のホーム、少し遠いだろ」
「始発じゃないのに乗ったら、最悪だと降りる駅まで立ちっぱなしになるわよ。座ることを考えるなら、少し多く歩いてでも座れる方を選ぶわ」
「あー、それは同感だわ」
筋肉痛で悲鳴を上げてるところで座れないって、地獄よね。
「さて、もう降りるわよ」
「くっそー、都会の電車は駅間が短すぎるだろ」
「わざわざ荷物を持ち直すのがめんどくさいわね」
乗ってからさほど時間も経ってないものの乗り換えのために降りる際に、いろいろと愚痴っぽいことを言いながら降りたわけだ。
「忘れ物は・・・なさそうね」
「忘れてたまるかっての」
「いや、たまに戦利品ですら忘れる人とかいるから、常に気をつけないと。なにしろ、一般人にはゴミでしかない代物だし」
「酷い言い分だな」
でも、確かに私には価値が分からない。
「平日の昼とはいえ、一応はまだお盆の圏内だから混んでるわね」
五十嵐さんの言う通り、電車の中はわりと混んでいた。子供連れの家族が多いな。
「今年もやってるんだろうね、スタンプラリー」
「ああ、それでか。ま、乗り換えの駅までいけば、そこまで混んではないだろ」
「それはどうかしらね。今日はおそらくまだ帰省ラッシュのタイミングには少しズレてるから、今から地方に遊びに行くというスタートダッシュが遅れた人が私たちの乗る電車に押し寄せて座るための座席争奪戦が壮絶になるのよね」
「それ絶対お前が毎年やってたことなんだな?」
つまり、毎年コミケ帰りはこうだということか。
「駅だー・・・やっと着いたー」
「この暑さだと、ちょっとそこまでですら強行軍化するわね」
湊がそう呟いた直後に、五十嵐さんがそう言っていた。
「ここから冷房の効いた車内とクソ暑い駅とを出たり入ったり繰り返しか・・・」
「なんか身体に悪そうね」
身体に悪くても涼しい場所に行きたい。
「それにしても・・・なんで私があんたの荷物まで持ってるのよ?」
「いや、だってバッグ二つだけで、うち一つは背負うやつだろ。なら片手開いてるじゃんか」
「ひとりで持てる量になるまで宅配便で送れってのよ」
「いやー、ひとつ詰め忘れた」
「あんたの場合、本気で忘れてそうだから始末に悪いわ」
そしてこいつの荷物が一番重い。
こうして帰路についた私たちは、
「・・・あのさ、今更なんだけど・・・」
「何?」
「なんで最高気温がマックスでヒャッハーしてそうな時間に帰ることにしちゃったんだろ」
「暗くなる前に家に着きたいなら、この時間がいいのよ」
「・・・午前中に出れれば・・・」
「起き掛けの筋肉痛を甘く見ないことよ」
この灼熱よりは耐えられるんじゃないかという気にはなってる。