「で、あれは何だ?」
「人を指差してあれ呼ばわりするのはどうなんですかね?」
兵士がそう文句を言ってきた。
「人と呼んでいいのかどうか・・・あれは一応、かつて破壊神と呼ばれていた存在だったものです」
「うわー、なにそのありきたりな設定にありそうな存在は」
「失礼を通り越してもう何言っていいのか分からないですね」
よくある存在がさらに文句を言ってくる。
「で、あれは何だ?」
「人を指差してあれ呼ばわりするのはどうなんですかね?」
兵士がそう文句を言ってきた。
「人と呼んでいいのかどうか・・・あれは一応、かつて破壊神と呼ばれていた存在だったものです」
「うわー、なにそのありきたりな設定にありそうな存在は」
「失礼を通り越してもう何言っていいのか分からないですね」
よくある存在がさらに文句を言ってくる。
「その様子だと、この状況がどういう感じなのか分かってるみたいだな」
俺は賢者にそう言った。
「まぁ、分かっているというか、知っているというか・・・ところで、こんな状況で随分と普通にしてますね?」
「こいつらのせいで事の悲惨さが霧散した」
たぶん普通なら泣いたり怒ったりしているところなんだろうが、もうそんな気分じゃない。
「ふむ、そういう話なら後から出てきたお主が変えるべきだと思うぞ。そもそも、力を取り戻す前と後の口調が混ざっておるではないか」
「はっはっはっ、こういうときは後進に道を譲るのが道理でしょう」
「何を言う、お主の力が封じられたのは我が生まれる前、つまり道を譲るはお主の方じゃ」
なんというか、何かこういう状況じゃない感の強い展開を迎えてるな。
「あー、やっちゃったかー」
ここで賢者がなんか軽いノリで現れた。前線から戻ってきたのか。
「ひとつしつも~ん、二人は自分を呼ぶ時、なんて呼んでる?」
お姫様がそんな素っ頓狂なことを言い出した。
「「我」」
ちゃんと答えるんだ、二人とも。
「一人称が同じなんで、後から出てきた方は変えるか退場して」
マイペースというのは恐ろしい。
「そりゃ人間なんじゃから刺されれば死ぬじゃろ」
「ド直球が付くほどに真実を他人事のままで突いてるな」
幼女の返事に俺はそう呟いていた。
「人間・・・ああ、まぁ人間ですよね、大別的に見れば」
「何が言いたいんじゃ?」
「いえ、単にそれは我の力を封じ込めるために人工的に作られた生命体だったってだけですよ。見た目から考えれば人間に分類してても不思議ではない」
もうトンデモな真相はお腹いっぱいなんで、勘弁してもらえないですかね。
「お前・・・百年前にどういう経緯でそんなことになったんだ?」
そう聞かざるを得なかった。
「別に普通じゃよ。魔神の中でも一番弱いのがこっそり隠れて力を蓄えていたのを補足して、動き出したところで全力攻勢に出ただけじゃ」
「ああ、そんなことになってたのですね。一番弱いというと・・・ああ、たぶん呪いの神ですかね」
「その通りじゃ・・・あれが最後かと思っておったが、まさかここにもう一匹潜んでおったとはな」
「あの、素で無視されている気がするのですが、この子死んでますよ」
氷の魔王が話に割り込む感じでそう言ってるが、たぶんあっちはそれどころじゃなくなってるような状況になってる。
「状況が分からないので、手短に詳しく話してくれませんかね」
修道女からそう要求が出た。まぁ、俺も同意見ではあるが。
「こやつはかつて七種族の賢者達によって封印された『破滅の魔神』のうちの一体じゃ」
「ああ、あれからだいぶ長い年月が経っていましたが、まだ憶えられているような状況なんですね」
「憶えとるというよりは知っている、というのが正しい認識じゃよ。なにしろ百年ほど前にお主ら魔神の最後の一体を、我が命がけで消し飛ばしたくらいじゃしな」
若干の当事者状態だな。
「唐突に割って入ってきて何やってんだお前は」
「やかましい! おそらく今はそれどころじゃないわ!」
兵士を蹴り飛ばした幼女の返答は、本気で余裕がないって感じだった。
「いきなり蹴り飛ばすとか、どういう躾をされてきたんですか」
「まったく、どうやらその仮初めの姿に騙されておったが・・・なるほど、とんでもない代物が潜んでおったな」
もうどういう状況だか理解の範疇を超えてるんだが。
あまりにも唐突かつ、あまりにも意外な状況に、その場にいる誰もがまったく動けていなかった。
「いやー、帝国に名を変え顔を変え潜伏して探していたけど、よもやこんな所に普通にいるとは思わなかったよ。人っぽいものを隠すなら人の中、といったところか」
プリムに後ろから剣を突き立てているその兵士が、笑顔のままそう呟いていた。
「だが、これでようやく我にかけられた封印ぐぉあ!」
そんな兵士が何か言おうとしたところで、さらに不意を突くように幼女が兵士を蹴り飛ばしていた。
「あ、所属を答える前にひとつだけ申しておきますが・・・部隊名は姫様が気分で決めているので、番号とか挙げても無駄だということは伝えておきます。まぁ、うちの兵士なら周知の事実でしょうが」
うわー・・・これ明らかにこの兵士がこっち陣営の存在じゃないと決めてかかってるかのような発言と、部隊名とかいう重要なものを気まぐれに名付けさせるなよという問題が同時に発生するような発言を同時にしやがった。
「あー・・・まぁ、バレるっちゃバレるよなー」
その兵士がそう呟いた瞬間、そこから彼の姿が一瞬で消え・・・
「あ・・・」
そんな小さな声が聞こえ、そっちに視線を向ける。
そこで目に入ってきたのは、胸の部分から何かが飛び出しているプリムの姿だった。