この秋、最も旬のオーナーと言っていいだろう。

菊花賞をワールドプレミア(牡3=友道、父ディープインパクト)で制した大塚亮一氏。

年末の有馬記念では

ワールドプレミアはもちろん、

エリザベス女王杯で2着だったクロコスミア(牝6=西浦、父ステイゴールド)との2頭出しを予定している。

自身初となるグランプリ参戦。早くも胸が高鳴っていると明かす。(スポニチアネックス)

 「私はJRAの騎手試験を受けて、残念ながら落ちたのですが、

騎手になりたいと夢見るきっかけとなったレースが1990年の有馬記念でした。

皆さんがご存じの通り、中山競馬場にオグリコールが沸き起こったオグリキャップのラストランです。

感動のフィナーレへと導いた武豊騎手に心を撃ち抜かれましたし、

それだけに有馬記念には強いこだわりがあります。

その頃の有馬記念は歴戦の一流古馬に、

3歳最強と目される菊花賞馬らが挑む構図でワクワクしましたね。

そして、ヒシアマゾンやトゥザヴィクトリー、近年では(17年2着の)クイーンズリングのように、

古馬の牝馬路線を歩んできた馬が上位に来ることもあるレース。

そういった意味で、贔屓目かもしれませんが

ワールドプレミアとクロコスミアには凄く期待しているんです」

 そして実はもう1頭、大塚オーナーがグランプリ参戦を狙っている馬がいる。

4勝を挙げて、現在3勝クラスに在籍しているベイビーステップ(牡5=菊川、父タイキシャトル)。

これまでの実績的に厳しいのは百も承知だが、

次走に予定しているG2ステイヤーズS(11月30日、中山)で

賞金を上積みしての滑り込み出走をもくろんでいる。

 「古い話ですが、ダイユウサクやメジロパーマーなど、

グランプリでは人気薄の古馬が激走を見せることが時々ありますよね。

無茶だな…と笑われるかもしれませんが、

ベイビーステップも何とか出走させて、一発を狙いたいと考えているんです」

 大塚オーナーがこれほどまでにベイビーステップに肩入れするのには理由がある。

実は母のカルテブランシェが初めての所有馬なのだ。

 「念願の馬主資格を取得した08年のオータムセールで初めて購買した馬が、

ベイビーステップのお母さんのカルテブランシェなんです。

セリの後、すぐに浅見厩舎が預託していた鹿児島の育成牧場に移ったので、

毎月のように鹿児島に通いましたし、トレセンにもしょっちゅう会いに行きました。

新馬戦は武豊騎乗で1番人気。

眠れなかったレース前夜のことや、初勝利を挙げた日のことなど、思い出がたくさんあります。

そんなカルテブランシェが母となって産んだ最初の子ども、長男がベイビーステップなんです」

 生産は北海道・浦河の杵臼牧場。

テイエムオペラオーの生まれ故郷として知られる老舗の生産牧場だ。

 「成績を見ていただければ一目瞭然、

2歳夏の新馬戦からスピードを見せた母とは違って、若馬時代は大苦戦しました。

デビュー3戦は9着、10着、13着。

ダート1200メートルでデビューした馬が

試行錯誤の末に3歳の夏、芝の1800メートルで勝ち上がった時は本当に嬉しかったですね。

4歳になって芝2000メートルで2勝目、芝2200メートルで3勝目。

そして5歳になった今春、芝2400で4勝目を挙げました。

次走のステイヤーズSがちょうど30戦目。本当によく頑張ってくれていると思います。

そんなベイビーステップが競走馬としてピークを迎えている今、

何とか有馬記念に出してあげたいなと思っているんです」

 大塚オーナーは我が子を見つめるような優しい目で語る。

来月1日まで行われる有馬記念のファン投票では

「ワールドプレミアとクロコスミアはもちろん、ベイビーステップにも投票しました。

皆さんにも清き1票をお願いしたいと思います」とオーナー。

馬自身の頑張りはもちろん、ファン1人1人の後押しも受けて

夢舞台に立つ“息子”の姿を夢見ている。