安倍政権の経済政策「アベノミクス」継続の是非が最大の争点となった

第47回衆院選は14日投票が行われ、即日開票された。

自民党は単独で国会運営の主導権を握ることができる絶対安定多数を上回り、

290議席を確保。

公明党と合わせた与党で、衆院定数の3分の2を維持し、323議席を獲得した。

安倍晋三首相は政権運営に信任を得たとして、アベノミクスを推進するとともに、

集団的自衛権の行使を可能にする安全保障法制整備を急ぐ考えを示した。


 一方、民主党は公示前勢力から上積みしたものの、71議席にとどまっている。

海江田万里代表は立候補した東京1区で敗北、比例代表での復活も困難として、

代表を辞任する意向を明らかにした。

15日に正式表明する。これに伴い、同党は後継を選ぶ代表選を実施する。


 首相はNHKなどの番組で「2年間の安倍政権の信任を国民にいただいた」と表明。

「まず経済最優先で取り組む。今の政策を続けていけば、間違いなく景気は良くなる」

とデフレ脱却に全力を挙げる意向を示した。

「安全保障法制を次の通常国会でしっかり整備していきたい」とも語った。


 首相は法律で来年10月と定められた消費税率10%への引き上げを1年半先送りし、

その判断について国民の信を問いたいとして衆院解散に踏み切った。

「自民1強」体制を維持したことで求心力を高め、

来年9月の任期満了に伴う自民党総裁再選へ弾みをつけた。


 公明党は公示前勢力を上回る33議席を獲得。

小選挙区は9人全員が当選確実となった。


 前回選挙で一定の議席を確保した「第三極」のうち、

維新の党は37議席を確保し、第3党に踏みとどまった。

旧日本維新の会から分党した次世代の党は公示前の20議席から激減、

生活の党も議席を減らし、各2議席にとどまっている。


 共産党は公示前勢力の2倍を超える19議席を獲得した。

社民党は公示前の2議席を死守。新党改革は議席獲得は困難だ。 



 時事通信の推計によると、

14日行われた第47回衆院選小選挙区の投票率は52.32%前後となり、

戦後最低だった前回2012年選挙の59.32%を下回ることが確実になった。

選挙戦序盤から報道各社の世論調査で自民党の優勢が伝えられ、

関心が薄れたことや、

一部地域で雪のため

投票所に足を運ぶ有権者が減ったことなどが影響したとみられる。

 
 総務省が発表した午後7時30分現在の中間投票率は37.72%で、

前回を7.70ポイント下回っている。


 衆院選小選挙区の投票率は、

小選挙区比例代表並立制が導入された1996年に59.65%、

2000年は62.49%、03年は59.86%で推移した。


 その後、05年は「郵政解散」が話題を呼んで67.51%に上昇、

09年も政権交代に関心が高まって69.28%を記録したが、

今回と同じ「師走選挙」となった前回12年に大幅にダウン。

今回はさらに有権者の選挙離れが進んだ格好だ。



 東京・永田町の自民党本部では、

安倍晋三首相ら党幹部が大勝に満足げな笑顔を見せた。

安倍首相は

「政権の信任を得た。

国民の声に耳を傾け、責任を果たす時にはしっかりと決断していく」

と力強く語った。


 午後9時半すぎ、

党本部の開票センターに姿を見せた安倍首相は

紺のスーツに黄色いネクタイ姿。

笑みを浮かべ、候補者名の書かれたボードに赤いバラを付けた。


 東京1区で

自民党候補が民主党の海江田万里代表を破ったことが分かると、

両手を広げおどけるようなしぐさを見せ、

バラで埋まったボードを見やり満足そうにうなずいた。


 報道各社のインタビューに応じた際は一転して表情を引き締め、

「2年間の信任を国民にいただいた。

謙虚で丁寧な国会論戦をしてきたし、

今後も国民の声に耳を傾けたい」と語った。 

 選挙戦で、

行使を容認した集団的自衛権への言及が少なかったのではと問われ、

「そんなことはない。訴えていなかったというのはおかしい」と気色ばむ場面も。

持論の憲法改正についても

「立党以来の悲願。国民的な理解を得るよう努力していく」と意気込んだ。


 同11時半すぎから記者会見した谷垣禎一幹事長は

「最近の選挙は第1党が大きく入れ替わる振り子のような結果が続いていたが、

安定した政治への期待があった」と勝因を分析。

厳しい面持ちを崩さず、

「景気回復と財政再建の両立を目指し、脇を締めて謙虚に進むことが大事だ」

と述べた。



 野党第1党の立場は確保したものの、議席数が伸び悩んだ民主党。

海江田万里代表が前回の総選挙に続き選挙区で落選する結果となり、

東京・永田町の党本部には重苦しい雰囲気が広がった。


 本部5階の開票センターで報道各社の取材に応じた海江田代表は

「選挙区での敗退は大変残念で、私の力不足。

応援してくれた方々に申し訳ない」と謝罪。

「解散前に比べ議席を伸ばしている。

野党の中心としてしっかり政権に対処する」と決意を語った。


 深夜に改めて開いた記者会見では

「与党の議席増を何とか減らしてほしいという声に

十分応えることができず反省している」と声を落とし、

10分程度で切り上げると足早に会場を後にした。


 当選を決めた党幹部にも笑顔はない。

岡田克也代表代行は

「他の野党はわれわれ以上に厳しい。

野党で協力し、巨大与党に立ち向かっていくことが大切だ」と険しい表情。

枝野幸男幹事長は

「民主党としてはゼロからの再建途上での選挙だった。

何とか野党第1党として次へつなげる一歩を踏み出したい」と語った。


 過半数に達する候補者を擁立できず、政権交代を掲げることができなかった。

枝野幹事長は「次の選挙では、政権の選択肢を国民に示せるようにしたい」と話した。



 自民、民主の対抗勢力ともてはやされ、前回衆院選で躍進した第三極政党。

分裂や解党といった迷走が、この日の結果にもつながった。


 維新の党の江田憲司共同代表は東京都内の開票センターで

「国民の信用に足るだけの選択肢たり得ていなかったと思う」

と与党圧勝の背景を分析した。

同党は、東京と大阪の「東西対立」で分裂した旧日本維新の会が、

みんなの党を割って出た議員と結成。

江田氏はこうした経緯について、

「(国民に)嫌気が差したというのはあると思う」と認めた。


 橋下徹共同代表は大阪市内で

「党の実態が見え始めて、有権者の目にさらされた。

それでも、ここまでの支援を得たのは大変ありがたい」と語った。


 次世代の党の平沼赳夫党首は都内のホテルで幹部らと開票状況を見守った。

テレビモニターを見詰める表情は険しく、

「また自民か」とつぶやきながら何度も腕を組み替えた。

同党の松沢成文参院議員が「第三極がなくなってしまう」と漏らすと、

「そうだね」と苦笑いするしかなかった。


 かつて、みんなの党を率いていた渡辺喜美氏はあえなく落選した。

衆院解散後、同党は解党。

無所属で出馬した渡辺氏は

「アベノミクスに代わる、国民の期待を集めるビジョンを提示できなかったのが

(第三極の)凋落(ちょうらく)の原因」と話した。



 14日投開票の衆院選で、自民党は15日午前1時現在、

小選挙区で219議席を制し、野党を圧倒。

東北、中国、四国、九州などの計18県で議席を独占した。

比例代表も無党派層を取り込んで62議席を確実にし、

2012年の前回選挙で獲得した57議席を上回った。


 自民党が小選挙区で全勝したのは、

青森、秋田、山形、群馬、富山、石川、福井、

岐阜、滋賀、鳥取、島根、山口、徳島、愛媛、高知、

福岡、長崎、宮崎の各県。

福岡1区は前職2人が無所属で争う保守分裂選挙となったが、

同党は勝利した井上貴博氏を追加公認した。

ただ、山梨、沖縄両県の選挙区では議席ゼロとなった。


 公明党は候補を擁立した全9選挙区で勝利。

比例も堅調で20議席を押さえ、前回の22議席まで伸ばしそうだ。


 一方、民主党は小選挙区で35、比例で31の計65議席を確保して、

公示前の62議席を上回った。

ただ、首都圏では苦戦し、

東京都の25選挙区のうち当選を確実にしたのは長妻昭氏のみ。

海江田万里代表や菅直人元首相は選挙区で敗北した。


 維新の党は選挙区で11議席、比例で24議席を確保したが、

旧日本維新の会が前回12議席を獲得した大阪府で5議席にとどまった。

公示前の42議席に届くかは微妙だ。


 次世代の党は小選挙区で2議席を確保したが、

比例での議席獲得は困難な情勢で、

公示前の20から激減するのは確実だ。


 共産党は沖縄1区で勝利し、

小選挙区比例代表並立制が導入された1996年以来

18年ぶりに小選挙区で議席を確保。

比例で16議席を確実にして合計17となり、

公示前の8からの倍増を果たした。


 生活の党は小沢一郎代表を含む2議席を確保。

社民党は沖縄2区と比例九州の2議席を維持した。



 14日投開票の衆院選で、

民主党の海江田万里代表や菅直人元首相ら

野党の大物候補が相次いで小選挙区で敗れた。

維新の党の松野頼久国会議員団会長も小選挙区で敗北。

与党では自民党の西川公也農林水産相が小選挙区で苦杯を喫した。


 旧みんなの党が解党し、

無所属で立候補した渡辺喜美元行政改革担当相は落選。

比例単独の石原慎太郎次世代の党最高顧問も敗退し、政界引退の意向だ。

同党では山田宏幹事長も小選挙区で敗れた。


 小選挙区で接戦となった生活の党の小沢一郎代表、

次世代の党の平沼赳夫党首は、それぞれ自民党候補に競り勝ち、議席を維持。

政治とカネの問題で10月に閣僚を辞任した

小渕優子前経済産業相と松島みどり前法相は、いずれも選挙区で勝利した。



 連立与党で衆院選に勝利し存在感を示せたことで、

公明党にはひとまず安堵(あんど)感が広がった。

山口那津男代表は14日夜、党本部で「高い評価を得た手応えがあった」と語った。

公示前議席からの上積みも見込まれ、

「議席が伸びることを期待している」とも述べた。


 自民党単独では最大でも300議席程度となる見通しで、

憲法改正の発議が可能となる3分の2には届かないもようだ。

与党内での公明党の発言力は確保された格好で、

党幹部は「ちょうどいいバランスだ」と満足げな表情を浮かべた。


 選挙期間中、

党幹部らが街頭演説で最も力を入れたのは消費税の軽減税率導入だった。

2017年4月の消費税率10%への引き上げと同時の導入に向け、

山口氏は「しっかり実現を図る」と改めて強調した。


 今後、自民党との間では、

集団的自衛権行使を含む安全保障法制の策定が控える。

安倍晋三首相は中東危機の際の機雷除去に積極的な姿勢を示しており、

公明党にとっては「歯止め」役を果たせるか真価が問われる。

今後の自公の政権運営について、山口氏は

「謙虚で丁寧な合意形成に努めたい」と強調した。