運転免許返納
 

 

 

 

 高齢者の免許返納が伸び悩んでいるという。事故を心配する家族と、車が生活の手段や生き甲斐になっている高齢者との葛藤がある。
 
●返納しない理由
 運転免許の保有者数は70歳以上が約1360万人(全体の16.6%)。うち75歳以上は約730万人(8.9%)、さらに80歳以上は約300万人(3.7%)だ。
 
 70歳以上の免許自主返納人数は池袋暴走事故があった2019年をピークに減り続け、昨年はピーク時の3分の2にまで減少した。だが、そのペースは緩やかだ。
 
 返納が進まない理由は
「子どもの送り迎えやボランティア活動・趣味に使う」
「通勤や用事で車が必要。今は安全運転を自覚できている」

 70歳以上は今まで車での人生を楽しみ、生活も車中心で成り立ってきているので、急に止めるのは難しいという。
 
 ただ、教習所の人によると、高齢になると自分の能力に気づきにくい人の割合が増えてくるという。
 
 危険回避能力や認知機能検査などのデータを見ると、「自信ない」という人の方が、「自信ある」という人より認知能力が高く、運転が上手いという人が多いそうだ。
 
 「ちょっと不安がある」という人の方が慎重で自分の体の状態にあった運転をしている。それが、返納するかどうかの判断の基準になるという。
 
 だが、日常的に運転している人へのアンケートでは「運転に自信がある」と回答した人が、高齢者ほど多く、20歳~60歳代では4割だが、70歳代では6割、80歳代では7割にのぼる。
 
●子ども世代の心配
 「昔と比べてブレーキが甘い」など事故を心配する子ども世代は、返納の話を勧めるが、「買い物にも行けない!」の一点張りで空気が悪くなり、なかなか話が進まない。
 
 実際、親の運転が危ないと本人に伝えたことがある子ども世代は80%。
 だが、親世代の76%は伝えられたことがないと答えており、うまく意志疎通が図られていないのが実態だ。
 
 高齢者にとって、車が使えないのは生活の不便だけでなく、それにより行動範囲が狭くなり、生活が淋しくなるという感覚的な問題もある。
 
●返納の結果
 免許を自主返納として結果的に「良かった」と感じている人は
 都市部87.5%、地方都市79.4%、過疎地67.4%、その他80.4%
 (MS&ADインターリスク総研(株)調べ)
 
 理由は「自動車の維持費用がかからなくなった」「家族等にかける心配を軽減することが出来た」などだ。
 逆に自主返納して「不便」を感じている人は
 都市部25.0%、地方都市37.5%、過疎地60.5%、その他40.7%
 
 理由は買い物やお店に行きにくくなった。
 外出先で通院しにくくなった。
 出掛けたい時に出掛けたり、外出したりするのが難しくなった。
 返納後の負担感は、過疎地の方が大きいことがわかる。
 
●検査
 今や、全ドライバーの23.5%、約4分の1が65歳以上だ。
 
 実際の事故件数は若い人の方が多いが、やはり高齢者の場合、運転能力を確認することは必要だろう。
 
 現在、75歳以上の人には、免許更新の際に、認知機能の検査を義務づけている。
 一昨年のデータでは検査を受けた人のうち、約2%が「認知症の恐れがある」と判定された。
 
 車がないと生活が成り立たない地域と、公共交通機関が発達している都市部では、状況が異なるので、一律の制限は難しいと思う。だが、今後も増加する高齢ドライバーの運転技能については、しっかりした検査の継続はして欲しいと思う。
 
 他の交通手段がある都心はともかく、地方では車が必要な状況は変わっていない。
 地方では移動手段を確保し代替するものがない限り、車は欠かせない。返納して変わりとなる手段の支援策を講じて周知する事が必要だ。