経済成長するインド
5年に1度のインドの総選挙が終わった。
モディ首相は3期目に入ることになった。
日本を含め世界がその経済成長力に注目している。だが、課題も多い。
●中間層
人口は14億人と中国を抜き世界一。
GDPは現在第5位だが、来年には日本を抜くと言われている。
その経済成長の原動力となっているのが中間層だ。
全世帯に占める中間層の比率は、2010年39.7%だったが、2020年は55.5%と半数を超え、2030年には82.5%まで成長すると見込まれている。
世帯数にすると、約11%を占めるとされる富裕層を含めると、2030年には約3.8億世帯となる。日本は約4,800万世帯なので、日本の数倍のマーケットが存在することになる。
●日本企業
日本の企業もその成長性に注目して進出が続いており、この10年間でその数は約1.5倍に増えた(2022年段階で1400社)。
欧米企業はIT企業を中心に進出しているが、日本は製造業・日用品雑貨の分野で産業振興に大きく貢献している。
インドにおける製造業の成功企業の代表格はマルチ・スズキだ。
新車販売台数は2023年度には過去最高となる213万台となり、初めて200万台を突破。インドの新車自動車販売数の5割を超える。
一方、消費財の代表例としてはユニ・チャームだ。
インドには2008年に進出、その後2桁成長を維持し10年で黒字化を実現。
2023年もインド事業は黒字で、40%近いベビー紙おむつ市場シェアの獲得を成功させている。
さらに、インドの農村部でタブー視される女性の生理が女性の社会進出の妨げとなっている点に着目し、体のしくみや衛生面の対策などを説明する講習会を開催。女性たちの理解と紙おむつ使用の促進に繋がっている。
「冬だと1日10回ほど布おむつを洗う必要があり、非常に困っていた。以前は収入がなかったから、(紙おむつが出て)非常に便利だ」と好評価だ。
とくに近年、女性も男性同様働くので夜中におむつ変えが減って楽になったと、歓迎している。
現在、紙おむつの使用率は40%。今後80%までの引き上げを目指す計画を打ち出している。
●経済格差
経済成長の一方で、経済格差はさらに広がった。
上位1%の富裕層が国の富の約40%を所有する。半数の国民は平均月収約1万円だ。
とくに人口の6割が暮らす農村部では深刻な貧困から抜け出せない人が多い。
モディ首相は、農村部の1人当たり所得を50%引き上げる目標を掲げている。
だが、1期目で2022年までに農家の所得倍増を実現する目標を掲げたが実現できなかった経緯もあり、先行きは不透明だ。
今後、労働人口の40%以上を占める農業分野の経済運営で、目に見える成果を出し、農村部の所得の底上げを図ることが、今後の経済成長の鍵を握る。
●環境問題
もう一つの課題が大気汚染やリサイクルなどの環境問題だ。
大気汚染度(PM2.5)が最も激しかった世界の10都市のうち9つにインドの都市がランク入りしている。
こうした事態に商機を見出した日本企業がある。
進出のきっかけはモディ政権の環境対策だ。
排気ガス規制強化の政策に基づき、自動車を解体し、部品のリサイクル・販売を行う。
専門的な技術を学んでいるインド人が日本で研修し、現地指導し、インドの工場をさらに増やす狙いだ。
自動車リサイクル産業で新しい雇用を生み出していけるのではないかと期待されている。
●インド市場
人口14億人、GDPは2025年には4兆ドル(約670兆円)を超えると予測されるインド。
少子高齢化で市場拡大が頭打ちになる日本にはない可能性を有するインド市場に、今後日本企業がどこまで食い込めるのか、その実力が試される。