外国人労働者の現状

 

 

 

 今、アジア各国は東南アジアからの外国人労働者の受け入れ強化を図っており、人材をめぐる争奪戦になっている。
 
●特別ビザ
 韓国ではアジア各国からの外国人労働者が急増し、現在92万人と過去最多となっている。
 
 その背景には少子化による労働力不足を補うため、「移民」も視野に永住まで認める政策を本格的に運用し始めたことだ。
 
 昨年12月、韓国の尹大統領は「出入国・移民管理庁」新設など5カ年計画を打ち出した。
 移民政策を取り入れなければ、国家消滅の運命にあると発言し、「移民政策」への実質的変換を宣言した。
 
 さらに今年3月、韓国の雇用情報院は韓国の少子高齢化により4年後から労働者の減少が本格化し、2024年~2028年までの間に労働者は毎年100万人不足するとの推定を発表した。
 
 韓国では高齢化が進み、若者はホワイトカラーの仕事を目指す人が増加しているため、製造業や農業などの分野で労働力不足が深刻化している。
 
 従来の雇用許可制では滞在できるのは最長4年10ヶ月を2回までだった。
 
 だが今回、新たに「地域特化型ビザ」を新設し、政府が指定した人口減少地域に住み、5年間働けば永住許可を申請できるようになった。家族同伴も可能だ。
 
 通常は高度専門人材の資格を取った上で、原則10年働かないと、永住申請は出来なかったので、画期的だ。
 
 さらに、地域を限定したのは、人口の51%がソウルに集中し、地方の人口が減って、産業が成り立たなくなっているからだ。指定された地域は全体の約4割にあたる89自治体だ。
 
●共通課題は少子化
 日本同様、「移民」受け入れに反対の声があっても、韓国がビザ導入に踏み切った背景にあるのが、異例の早さで進む少子化だ。
 昨年の特殊出生率は0.72。日本の1.26と比べても大幅に低い。
 
●新制度
 日本でも外国人労働者の受け入れに対して、「育成就労」創設を参議院で審議中だ。
 
 これまでの技能実習制度は途上国への技術移転を目的として非熟練労働者を集めてきた。だが、深刻な失踪問題や不法就労トラブルなどの社会問題が発生して、廃止論も出ていた。
 
 そこで、人材確保を目的とした「育成就労」に衣替え。
 その期間(3年)を終えて試験に受かれば、2019年に導入された技能レベルの高い在留資格「特定技能1号」に移行でき、さらに一段上の「特定技能2号」を取得して、就労期間などの条件を満たせば永住申請も可能だ。
 
 利点は、業務内容が特定技能の12分野と合わせるものになるので、在留資格の移行がスムーズになる。また、同じ職種で就労出来るようになるので、企業は長期的に外国人を雇用でき、外国人が同じ職種で長く従事できるので、キャリアを築くことが出来る。
 
●争奪戦
 労働力不足を補うため、日本、韓国、台湾では外国人材の確保と育成のため、中長期的な滞在を促す制度を整えつつある。
 
 いわば、各国間での外国人労働者争奪戦の様を呈している。
 
 ただ、懸念されることが二つ。
 
 第一は、給与や待遇面、言葉の問題を含め、外国人が働きやすい環境を全ての会社で受け入れる十分な体制整備が出来るのか。単なる人手不足解消の担い手としてではなく、安心して働き、日本に住み続けたいと思ってもらえるのか。
 
 第二は、国民の理解だ。
 単一民族だった日本では外国人はまだまだ身近な存在ではない。こうした状況で、外国人労働者は必要なんだと、その存在を許容し、受け入れられるのか。国民が納得できるように、政府はしっかりと説明する必要がある。
 
 争奪戦が激化する状況で、日本が「選ばれた国」になるために、万全の準備と国民への啓蒙が必要だ。