花粉症の季節
暖冬の影響で、例年より飛散開始が早かった花粉症。今、ピークを迎えつつある。
花粉症の有病者は3人に1人となり、今や国民病だ。
その対策はどこまで進んでいるのだろうか?
●子ども
子どもの花粉症が増加している。
0~16歳の子どもの保護者を対象とした製薬会社の調査では、2014年に花粉症および花粉症と見られる症状があった人は32.7%。だが、2024年には42.6%と10ポイント増加した。
学会の調査でも、1998年と2019年を比較すると、各年齢で有病率は上がっている。
1998年はどの年齢層でも19~25%程度だったが、2019年には10歳~50歳代までが5割近い有病率だ。
広い世代で増えているが、とくに若い世代の伸びが大きく、5~9歳は4倍近く上がっている。
専門家は環境の変化や免疫バランスなどによって、アトピーや食物アレルギーなどを含め、多くのアレルギーの子どもが増加し、こうしたアレルギー疾患の増加が花粉症および症状悪化につながっていると指摘する。
一方、免疫力が低下する高齢者は反応しづらくなり、症状は出にくいとされる。それでも、70歳代後半までは続くので、引き続き対策は必要だ。
●遺伝
それではどんな人が発症しやすいのだろうか?
花粉症は遺伝するのだろうか?
2017年、花粉症の子どもを持つ母親500人を調査したところ、両親およびどちらかが花粉症だった割合は85.2%。
したがって、両親のどちらかが花粉症の場合は、今症状がなくても花粉症になりやすいという事だ。
専門家は、花粉症は遺伝ではないが、なりやすい体質は遺伝すると考えて、注意した方がよいと指摘する。
●無花粉スギ
政府は10年後までにスギの人工林を2割削減し、花粉の少ない品種への植え替えを計画している。
とくに富山県はその取り組みのトップランナーだ。
「無花粉スギ」を「挿し木」で効率よく量産化する技術に成功し、新たに生産するスギの完全無花粉化を達成した。
だが、時間はかかる。
1992年に発見し、出荷まで20年。富山県では12年前から「無花粉スギ」への植え替えを進めているが、まだスギ林全体の1%だ。
全国でみても、政府は苗木の9割を「花粉の少ないスギ」にすることを目標に掲げるが、実際はまだ5割だ。
ネックは生産法だ。
従来の交配法では50%の苗が有花粉なので、半分はロスになる。一方、挿し木であれば、親のクローンになるので100%の無花粉スギができる。
種まきから出荷まで3年かかるが、挿し木では1年と短縮できる。
10万本が目標だが、挿し木苗に切り換えると、20万本以上生産できるとして、計画を進めている。
だが、スギの成長には時間がかかる。
スギ花粉が出ない環境の恩恵が受けられるのは私たちの1~2世代後だろう。
●対策
したがって、現在私たちが出来るのは従来通りの方法の徹底だ。
なるべく花粉を体にいれない、帰宅したら花粉を払う、洗濯物の部屋干しなど、基本的な事を地道にやって症状緩和に努めるしかない。
食べ物について、最近注目されているのが、オメガ3脂肪酸だ。
サバやイワシなどの青魚に多く含まれる成分で、昨年、東京大学の研究チームがマウスの実験ではあるが、花粉症を抑える効果があることを発見した。
ヨーグルトも直接の効果はないが、免疫バランスを整えるのに有効だ。
花粉症は免疫の異常な反応によるものなので、睡眠不足やストレスなど、花粉症のきっかけを作らないように、規則正しい生活を心がけることが重要だ。
こうした事に留意しながら、あと1~2ヶ月、何とか花粉症を乗り切りたいものだ。