再エネに足かせ?
太陽光と風力による発電を一時的に止める「出力制御」が、2013年に急増した。
背景に何があるのだうか?
●電気を止める訳
ガスや水道と違って、電気は貯められないのが難点だ。
使う量と発電量を常にほぼ同じにしないと、周波数が乱れて大停電になる恐れがある。
発電量が過剰になる前に、発電量と使用料のバランスを保つために、大手電力が再エネの発電を一時停止するのが「出力制御」だ。
国のルールによると、制御の順番は
①火力 ⇒ 二酸化炭素(CO2)の排出量が多く、出力を上げ下げしやすい
②余った電力を他地域に送る
③バイオマス
④太陽光・風力
⑤最後は出力を簡単に調整できないとされる原発
●45万世帯分が無駄に
出力制御は太陽光の導入が早かった九州で1918年秋に始まり、2022年春以降、東京電力管区を除く全国に広がった。
2013年1年間に制御された電力量は、全国で約19.2億ギガワット(朝日新聞集計)。これは過去最多だった2021年の約3.3倍で、約45万世帯分の年間消費量に相当する。
ちなみに、全体の7割を九州が占めた。
●電力が余る?
なぜ出力制御の必要が出てくるほど、供給過多になるのか?
一つは電気代高騰により節電の意識が高まり、電力需要が減っていることだ。家電も節電を売りにした製品が開発され、同じ稼働時間でも、消費量が抑えられるようになったことが大きい。
さらに、季節要因として、冷暖房を使わない春秋には、出力制御が起きやすい。
一方で、太陽光が着実に増え、原発が稼働していることも、出力制御が増える要因になっている。
●再エネ業者は
政府は脱炭素に向けて、再エネの発電比率を2021年度20.3%から、2030年度に36~38%に引き上げることを目標としている。
だが、出力制御が増え続けると、その分、再エネの電気が無駄になる。
再エネ事業者にとって、頻繁な出力制御は会社存続をかけた死活問題にも直結する。
再エネには中小規模の会社が多く、出力制御で稼働できない日が続けば、「出力制御倒産」が起きかねないと危惧されている。
再エネに携わる事業者は
「再エネ拡大は国策なはずなのに、はしごを外された。事業者は前向きな未来が描けず、銀行も融資に後ろ向きだ」と危機感を抱く。
政府は今後原発を増やす計画だが、もし実現すれば、さらに電力の供給過多になる可能性がある。
●対策は?
タダの太陽光を捨ててもったいないという声があがるなか、国として再エネ拡大を掲げるなら、今後は無駄が極力でないよう、再エネを利用しやすい仕組みを積極的に採り入れる必要があるだろう。
その方法が
①余った再エネを活用してもらうための蓄電池やヒートポンプ給湯器の導入
②昼間の電気が割安にできるメニューの導入
③余った電力を他の地域に送付する送電網の整備
経産省も、そのための対策を昨年末、策定した。
ただ、抜本的な対策となる送電網の増強の実現には、数年単位の時間がかかるなど、課題は大きい。
だが、脱炭素は待ったなしの問題だ。その取り組みが後退することのないよう、再エネの有効活用に向けた設備とルール作りに早急に取り組む必要がある。