高まる政治不信

 

 

 

   自民党の政治資金パーティーをめぐる裏金事件により、政治への不信が高まっている。
   一方、立憲民主党は2月4日、党大会を開催。泉代表はこの問題を追い風として、政権交代を掲げた。
   果たして、その実現可能性は?
   
●内閣支持率
   岸田政権の内閣支持率は23%(JNN、朝日新聞)と低迷。2012年に自民党が政権に復帰して以来最低の水準が続いている。
   さらに、裏金事件に対する首相の対応を「評価しない」という人は75%に上る。
   
   街の声も、政治や政治家に対する不信感に満ち、冷やかな声が上がる。
「政治家って、もともと信頼が薄い。これ以上やらかしても、またかってだけですね」

●政治家への不信
   政治への不信について分析している善教将太・関西学院大学教授によると、政治不信には大きく分けて、二つあるという。
   
   ①政治家や政党などへの不信
   ②民主主義など、体制への不信
   
   政治とカネをめぐる事件で高まるのは、前述の①だという。
   
●国民の意識
   政治不信の高まりの推移をみる手がかりになる調査がある。
   
   内閣府が1982年から実施している社会意識に関する世論調査だ。
   
   「国の将来に国民の考えや意見が反映されていると思うか」という質問で、政治への信頼度合いを調べている。
   
   結果は、「あまり反映されていない」「ほとんど反映されていない」を合わせた割合は、リクルート事件が発覚した1988年度に63.8%に増え、民主党政権誕生の直前(2009年1月)には、80.7%に達した。
   
   前述の善教さんによると、1990年代以降の政治不信の高まりは、「自民党不信」を意味していた。そのため、民主党への政権交代につながったと言う。
   
●野党への期待
   それでは、今回も自民党大敗につながるのか?
   現時点では、あまり期待は出来ないようだ。
   
   その理由は、自民党支持層は、野党を投票の際の選択肢にしない傾向があるという。
   
   その根拠として、善教さんは、自民党が大勝した2022年7月参院選後のインターネット調査を示す(対象3万1千人)。
   
   「投票可能な政権政党数は?」に対する回答は、自民支持層は「1.8」。
   つまり、「いまの自民支持層は、立憲も維新も、自民に比肩する政党とはみていない可能性が極めて高い」と指摘する。
   
   野党が政権交代が可能な政党として、認められなければ、政治とカネの問題が出ても、自浄能力は働かず、ますます政治不信が高まることになる。
   
●蓄積される政治不信
   今回のような事件が起きると、「政治不信が跳ね上がるが、一過性の不満の表明では済まず、政治への不信は蓄積される」と専門家は指摘する。
   
「政治スキャンダルを経験して不信を抱く世代が増えることで、社会全体の政治不信が高まってしまう」と言う。


   人気ある政治家が登場しても、積もり積もった不信は簡単にはぬぐえない。歴代の政治家がやってきた責任は大きい。
   
「政党が変わってもやることは一緒」と国民の諦めのような気持ちが増幅していく。

●無関心の先に
   だが、国民の側も「どうせ変わらない」と言って、無関心を続ければ、一部の支援者のためだけの政治がまかり通ることになる。そうなると、また政治不信が高まるという悪循環の繰り返しだ。
   
   一方で、希望もある。
   若者、女性、障害者、LGBTQなど、今までマイノリティーとされてきた人たちが、SNSやNPOを立ち上げて、政治への発信を積極的に行っている。
   
   地方自治体レベルではこうした声を反映して、手厚い支援や法令改善に繋げたケースもある。
   
   国政レベルでの実現はなかなか難しいと思う。だが、政治参画の新しい方法として、政治に関心を持つ人が少しでも増える。その力で政治に新しい風を吹き込んでくれることを期待したい。