多民社会、日本

 

 

 

   日本で生活する外国人は、昨年末時点で約332万人。過去最高を更新した。
   少子高齢化と地方の人口減少が進む状況で、働き手を海外に求める動きが強まっている。
   
   今年は、在留資格別で「永住者」の次に多い「技能実習」が見直され、これまで以上に外国人労働者の定住につながる受け入れが加速する。
   受け入れる日本側の体制は十分なのだろうか?
   
●安心・安全な場所
   第一に日本側がやるべき事は、給与や労働環境、言葉の問題を含め、外国人が働きやすい環境を全ての地域、会社、学校で整備する事だ。
   
   外国人を単なる人手不足解消の担い手としてだけでなく、安心して働き、日本に住み続けたいと思ってもらえるような体制作りが必要だ。
   
●言葉の壁
   なかでも、外国人が日本で働いていく上で、ネックとなっているのが言葉の問題だ。
   日本では就労する際に、ある程度の日本語の能力を求められる。
   それは職場によっても、かなり差がある。
   
   外国人の採用で企業の多くは国際交流基金などが運営する日本語能力試験を要件とする。
   
   例えば、タクシー運転手であれば、最も難度の高いN1(幅広い場面で使われる日本が理解できる)資格が求められる。
   
   一方、外国人採用にいち早く取り組んだ介護業界では、N2。新聞記事や自然に近い速さの会話で要旨が分かる程度とされる。
   
   もちろん、職種によって、職務遂行や安全のため、日本語能力は必要ではあるが、一方で、課題も指摘されている。
   
●やさしい日本語
   新宿で日本語を教えている講師は
「多くの日本人は、簡単な日本語に変換するのが逆に難しいのでは」と感じている。

   実際、東日本大震災で「高台に避難してください!」と言われたが、「高台」がわからず、途方にくれたという話を聞いた。「高い所に」と言い換えれば、わかったと言う。
   
   また「気配りである丁寧すぎる言葉づかいが、外国人にはかえってわかりづらい」
   
   そのため、日本語を学ぶハードルを下げようという動きが広がっている。
   外国人が就職しようとすると、高度な日本語能力を求められることが多いが、それが必ずしも良い結果に結びついていないというデータもある。
   
   人材の多様化で企業の生産性をある程度上げることは出来ても、外国人の力を引き出す取り組みがなければ、かえって生産性が落ちるという調査結果だ。
   
●スキル重視で
   実際、IT企業では、
「日本語習熟度が低くても、能力のある人を採用できる環境を作っていかないと、人材獲得競争の激しいIT業界で日本は選ばれなくなる」と危惧する声がある。

   日本企業は、ビジネスで必要な言語能力だけでなく、時候のあいさや過度な敬語などを求めすぎると、専門家は指摘する。
   
   日本の人口減少は今後さらに進む。
   外国人にいわゆる3K労働だけではなく、付加価値の高い仕事もしてもらう必要がある。それには、日本語習得のハードルを下げるしかない。
   
   日本語能力が高くなくても、仕事のスキルが高い人に働いてもらう。そのためには、「やさしい日本語」が有効な手段になる。
   
●受け入れに向けて
   今年4月。日本語教育機関を政府が認定し、日本語教育の国家資格をつくる法律ができる。
   
   もはや、日本語は日本人だけのものではない。
   日本国内も能力のある多様な人材を受け入れられるよう、日本語の国際化を図り、人材不足の解消や国際競争のなかでの生き残りを図り、外国人とともに生きていく道を探っていく必要あるだろう。