脱炭素の本気度

 

 

 

   11月30日~12月2日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでCOP28(国連気候変動会議)が開催された。
   そこで、気候変動に関するさまざまな課題が話し合われたが、その取り組みの実現可能性はどの程度なのだろう?
   
●地球沸騰化
   今年は、加速する地球温暖化、そこにさらにエルニーニョ現象が加わり、世界の平均気温が史上最高を更新した。
   
   「地球沸騰化」とも言われる異常な高温やその影響が、日本だけでなく世界各地で爪痕を残した。
   
   日本では、海面水温の上昇により、青森でホタテの大量死、北海道ではサケが取れないなど、漁業に大きな打撃を与えた。
   また、新潟では猛暑と少雨のため、コシヒカリの品質に影響が出て、暑さに強い品種の改良が、ますます急を要すことが認識された。
   
   連日、猛暑が続くなかで、線状降水帯が相次ぎ発生し、各地で大きな被害をもたらした。
   
   世界に目を向けると、ハワイ・マウイ島で大規模な山火事が発生し、少なくとも約100人が死亡という痛ましい出来事があった。
   さらに、カナダでも、日本の半分の面積が消失するという大規模な山火事が発生。
   
   アフリカ・リビアでは、大雨と洪水で少なくとも約4千人が死亡したニュースは記憶に新しい。
   一方で、渇水や干ばつのニュースも相次いだ。
   
●1.5度
   会議では、産業革命前に比べて気温の上昇を1.5度以内に抑えることを目標としているが、いまだその実現には到っておらず、むしろ世界の温室効果ガスの排出量は増え続けている。
   
原発を増やす
   今回の会議では、温室効果ガス削減の対策の一つとして、米国が呼びかけていた
「世界全体の原発設備容量を2050年までに3倍に増やす」という宣言が、日本を含む22ヶ国により採択された。
   
   賛同したのは英国やフランス、韓国、議長国のUAEで
「温室効果ガス排出の実質ゼロを達成する上で、原子力は重要な役割を果たす」とした。
   
   現在、世界の原発は436基。発電電力の約10%を占める。
   
●脱炭素に期待?
   確かに、原発は二酸化炭素を排出しないので、脱炭素化に期待する声がある。
   
   だが、それは安全なのか?
   建設に莫大な費用と時間がかかる上、一旦事故が起きれば、脱炭素どころか、私たちが住む土地や大気が汚染され、取り返しのつかない事態になることは、福島の事故で知った。
   
   日本の現在の電源構成は、石炭、LNG、石油などの石化燃料が70%以上を占める。再生エネルギーは22.4%、原子力は4.8%。
   
   しかし、政府はエネルギー基本計画で、原発の比率を2030年度に20~22%に引き上げるとする。
   
●実現可能性
   だが、福島の事故以来、大半の原発が停止となり、再稼働したのは12基のみ。
   しかも、その他の原発については、地元の同意が得られなかったり、原子力規制委員会の許可が下りなかったりで、再稼働の道は遠いのが現状だ。
   
   さらに、実際に許可が下りたとしても、建設には20年くらいの歳月がかかる。
   
   現在の4.8%から、10年以内に20~22%へは、素人が考えても、到底無理な話ではないか。
   
   脱炭素の方法として、原発が良いかどうかの議論はさておき、とても実現するとは思えない目標を掲げている日本政府は、そもそも脱炭素を目指す気があるのか、その本気度を疑う。