日本、EVシフト出遅れ

 

 

 

   「脱炭素社会」の実現に向けて、世界各国でEV(電気自動車)の導入が急ピッチで進んでいる。
   だが、日本メーカーは出遅れ感が否めない。
   
●中国市場から撤退
   10月24日、三菱自動車が中国市場から撤退することを発表した。
   2012年に中国と合弁会社を設立。
   2018年には約14万台を生産していたが、2020年は3万8千台あまりに減少。在庫がなくなり次第、中国市場から撤退する考えだ。
   
   日本メーカーにとって、中国市場は重要だ。
   世界販売台数に占める中国市場の割合を見ても、トヨタは20%、日産32%と、その位置づけは大きい。
   
   だが、日本メーカーの中国での販売は振るわない。
   今年1~8月の売上げは、いずれのメーカーも前年同月比でマイナスだ。
   マツダ(37.8%減)、日産(26.3%減)、ホンダ(24.0%減)、トヨタ(5.1%減)。
   
   今後、これらのメーカーも撤退を余儀なくされるのだろうか?
   
●中国のEV政策
   一方、中国のEV普及速度には目を見張るものがある。
   
   2015年5月、「メイド・イン・チャイナ2025」計画で、EVを10大重点産業分野の一つとして指定。2035年までに純電気自動車を自動車販売の主流(新車販売の50%以上)にするという目標を掲げた。
   
   EVシフト加速のため、政府はさまざまな補助金を導入。今や、中国は世界最大のEV生産国としての地位を確立している。
   
   中国のEV販売数は前年比80%増、新車のEV比率は20%を超える。
   
   その進め方には強引な面もある。
   
   例えば、ナンバープレートの有料化。
   EV車は緑のナンバープレートで無料だが、ガソリン車(青色)は有料だ。
   この有料ナンバープレートは、当局が行うオークションで販売されるが、時には落札価格185万円という高値がつく場合もある。もう1台購入できそうな価格だ。
   
   「脱炭素」を大義名分として、導入を加速させたい中国政府の政策が、こうした極端な相場を生み出している。
   
   一方、EV車の生産がだぶついて、売れない車が、空き地に放置される「EV墓場」も見られるという。
   
   政府主導によるやり過ぎの側面はあるにせよ、今や中国は名実ともにEV大国だ。
   
●日本の敗因
   欧州や米国でも、EV化は進んでいる。
   
   2022年10月、欧州議会は、欧州域内で二酸化炭素を排出する乗用車と小型商用車の新車販売を2035年に禁止することを決定。
   米国も新車販売に占めるEVの割合を、2030年に50%以上にすることを決定。
   
   日本も2035年までに新車販売を全て「電動車」にすることを決定。だが、欧米と異なり、ハイブリッド車の販売は可能。
   
   車全体に占めるEV車の比率を見ると、
   中国は順調に市場を拡大し、25.2%。
   欧州は19.9%、北米6.2%に対し、日本はほとんど横ばいで推移し、わずか2.2%。
   
   主な要因は、①EV化という世界の潮流を見誤ったこと、②得意なハイブリッド車関連の雇用を守ろうとしたことだ。
   
●経済の牽引者として
   長い間、自動車産業は日本経済をリードしてきた主役だ。
   各国間の競争が激化し、急速な技術革新が進むなかでも、新しい知見を取り入れながら、培ってきた技術を生かして、再び日本経済の牽引者となることを願うばかりだ。