ガラスの天井

 

 

   ガラスの天井。
   資質・実績があっても女性やマイノリティを一定の職位以上には昇進させようとしない組織内の障壁を指して言います。
   日本での男女格差は、なかなか解消されませんが、その理由は何なのか、私の体験も含めて、少し考えてみました。
   
●格差
   日本のジェンダー指数が、146カ国中116位ときわめて低いことは、以前にも書きました。
   
   昭和60年(1985年)に男女雇用機会均等法が成立。その後も、女性の就労を支援、促進するさまざまな法律が制定されました。
   
   ですが、実態を見ると、管理職(課長相当職以上)に占める女性割合は12.3%と、まだ1割程度です(2021年度雇用均等基本調査結果、対象:3,538企業)。
   正社員・正職員に占める女性の割合を見ても、27.4%ですから、職場も管理職もまだ男性優位の状態です。
   
   国会議員についても同様です。
   2018年に候補者男女均等法が施行されましたが、女性比率は、衆院で10.0%、参院で25.8%にとどまっています。
   議会は「年配の男性中心」です。
   
●就職氷河期
   私自身は、職場で不当な差別を受けた経験はありません。
   ですが、世代的に、オイルショック後の就職氷河期と言われる時代でしたから、女性にとっては、就職そのものがかなり厳しい状況でした。
   
   企業の募集は大半が「男性のみ」。大卒女子は、全くないか、あっても「若干名」です。
   この「若干名」がくせもので、どういう基準なのか、どんな職種なのか、全く記載がないことが多く、自分が希望するような仕事が出来るのかどうかの判断も出来ません。
   
   商社や銀行などでは、「若干名」の募集でも、問い合わせ時には、もう枠が埋まったということも、しばしばでした。
「彼女は、おじさんのコネで決まったらしいよ」
   この頃の友達同士の会話は、こんなふうでした。
   
   「若干名」なら、大勢の試験や面接に手間をかけるより、身元が確かな人をコネで採用する方が、企業にとっては効率が良かったのでしょう。
   
「学生時代は、ほぼ男女平等なのに、いざ就職となったら、こんなに男女で格差があるなんて、おかしいよね」
   と、何度となく友達とぼやいていました。
   
●結婚退職
   この頃は、大卒女子を積極的に採用する企業は稀でした。
   今で言う「総合職」という言葉もなかったように思います。
   
   女性の採用は「事務職」が多く、非専門職としてアシスタント的な仕事をこなし、昇進の機会も限られていました。
   
   企業は、給料が高い大卒女子より短大卒の女性を採用する傾向がありました。
   短卒者は、2~3年たてば、たいてい結婚退職するので、企業としては、本格的な人材育成することなく、事務職の安い労働力を得られるという、(言葉は悪いですが)重宝な存在だったのです。
   
   現実に、「短大卒」の募集は、それなりにあったと思います。
   友人のなかには、就職先がどうしても見つからず、やむなく「短卒」枠で入社した人もいます。
   
   私も友人も、みんな苦労して、就職しましたが、地元に戻って、就職あるいは結婚を選択した人もいました。

●男女差別?
   一度だけ、職場で悔しい思いをしたことがあります。
   3回目の職場で、男女同等の仕事でしたから、かなりの期待をもって入りました。
   
   調査会社だったのですが、私は女性ということで、気を使ってくれたのか、アンケート調査や消費者インタビュー、小売店調査などの、細かい仕事が主でした。
   
   同期入社の男性は、企業取材に飛び回っています。その取材がしたいのに、回ってくるのは、アンケートをまとめるような作業ばかりです。たまらなくなって、涙ながらに上司に直訴しました。
   
   ようやく聞き入れてもらい、取材できるようになった時は、とても緊張しましたが、すごく嬉しかったのを覚えています。
   
●儒教
   日本で男女格差がなかなか改善しないのは、相方もよく言っていましたが、江戸時代から連綿と続く、儒教の教えが、今でも日本人の心の奥底にあるからではないかと思います。
   
   簡単に言うと、「主君に忠誠を尽くす」。家では「家長に従う」です。
   
   家長を大事にする、男性を立てる、跡継ぎである長男を大事にする。
   こうした意識の延長に日本社会が形成されているので、組織でもまだまだ男性優位の考え方が根強いのではないでしょうか。
   
   女性は従う側、尽くす側とみなされてきた歴史が長く、主体的な働き手として認められてこなかったと思います。
   
   今は法律も制定され、男女に能力差がないこともわかってきました。人々の意識も徐々に変わってきましたが、日本の社会全体が変わるにはまだ相当の歳月が必要だと思います。
   みなさんはどのようにお考えでしょうか。