1000年に1度
今年は、過去最速といれわるくらいに早く梅雨明けした。
毎年のように繰り返される梅雨末期の集中豪雨による被害は、なさそうで良かった。
度重なる被害をくい止めるために、現在、ハザードマップの見直しが行われている。
●被害が甚大に
最近、とくにこの10年くらいに起こる台風や集中豪雨による被害は、頻度も程度も拡大している。
原因のひとつは、地球温暖化により、極端な高温多湿の環境が生まれたり、ゲリラ豪雨が起こりやすくなったことがあげられる。
さらに、日本国内でみれば、もともと山が多く、急峻な川が多いために、一度大雨が降れば、土砂崩れなどが起こりやすい地形であることだ。
とくに、近年になって、住宅造成などのために山が切り崩され、山自体に保水能力が無くなっていることも、被害に拍車をかけている。
たとえば、過去4年間でみても、
2018年7月 西日本豪雨(九州、四国、中国地方に被害)
2019年10月 台風19号(関東から東北・河川の氾濫や土砂崩れ)
2020年7月 九州球磨川を中心に河川の氾濫
2021年8月 九州北部・中国地方(線状降水帯のよる長雨)
その時々で、甚大な被害が出て、多くの犠牲者や家屋の損壊があったことは、私たちの記憶に新しい。
●今までの経験
球磨川の氾濫で、被害を被った方は、前回の大雨(昭和40年)で大水害に会った経験をもとに避難・準備をしていた。
この時の浸水域は、3メートル。1階が水に浸かった。
だが、今回(2020年)は、2階に避難すれば大丈夫と思っていたが、実際は、2階まで水が上がり、結局、屋根にまで上がって、ようやく難を逃れた。
実は、今回は、線状降水帯の影響で、水深は4メートルになっていた。
雨量は、昭和40年は1時間当り172ミリだったが、今回は346ミリだった。
今までの常識では考えられないほどに、水の量は多く、堤防よりはるかに高い6メートル。80年に1度の災害を想定した堤防は5メートル。
堤防を超えた水は、流速が早く、普段の川の流れの3倍の速度で、迫ってきた。
今までの経験だけでは、近年起こる水害による浸水を避けるのは難しいことがわかってきた。
●新たな基準
そこで、今、全国の水害などによる浸水域を示したハザードマップが、新しい基準で作成されている。
1000年に1度の災害を想定したものだ。
当然、従来のものに比較して、浸水域となる地域の面積は増えている。
古いハザードマップの浸水域に住む人口は、3540万人。
一方、新しいハザードマップでは、4700万人。
浸水域が拡大したことで、そこに住む住民の数が増えた。だが、これは、それだけ、被害に会う可能性がある人たちが増えたことを意味する。
大雑把にいえば、日本の人口の6割近い人たちが、対象となる。
そう考えると、水害による被害については、人ごとではなく、日頃から、避難や備えをしておく必要があるということがわかる。
●住居購入は
この新基準によるハザードマップは、現在全国の87%の自治体で作成済みだ。
自治体により、広報の仕方は異なるが、冊子を配布したり、ホームページで閲覧できるようになっている。
また、2020年8月、不動産取引において、住宅購入の際に、水害によるハザードマップの説明が義務化された。
自分が新しく住む(購入)予定の地域が、どんなリスクがあるのか、あらかじめ知った上で、購入する必要がある。
だが、実際にアンケートを行うと、家を購入する際に浸水リスクを考えて、ハザードマップを確認するとした人は、43.7%。52.1%は「しない」と答えた。
多くの人たちは、浸水に対する危機意識が、まだまだ低いことが伺える。
●人口増加
専門家は、警鐘を鳴らす。
ハザードマップで浸水域に住む人口が増えているが、現在も人口増加は、浸水域2~3メートル当りを中心に増えているという。
1000年に1度というと、遠い先のように感じて、つい備えを怠ってしまいそうだが、実際には「明日起こるかもしれない」と考えて、自宅がどのような場所にあるのか、今一度確認し、避難方法など、でき得る対策を取っておきたいと思う。
また、このハザードマップについては、自治体によって、周知の仕方が異なる。
ただ、ホームページは、高齢者にとっては、アクセスしづらいと思うので、もっと簡単にわかるような取り組みが必要だと思う。
また、浸水地域に現在住んでいる住人、とくに避難困難者(高齢、身体障害者など)については、個別に対応するなど、行政側の柔軟な対応も必要だろう。
1000年に1度は、明日かもしれないのだ。