貯金増えたら困る?

 

 

   三菱UFJ銀行が、あふれたお金を運用できずに、日本銀行から6年ぶりにマイナス金利を適用された。
   これはいわゆる「罰金」だが、そのつけは、私たち預金者にまわってくる。
   
●マイナス金利?
   金利がマイナスとは、どういうことなのか?
   
   なかなか理解しづらいが、簡単にいうと、金融機関は企業にお金を貸して、設備投資などに使ってもらう。こうやって、世の中に回るお金を増やして、経済を活性化させる。
   
   だが、コロナ禍で、積極的に投資を行う企業が減少し、お金の運用が進まない。
   銀行が預かっているお金の方が、企業に貸し出すお金を上回る「過剰貯蓄」の状態になると、日銀に対して「罰金」として、金利を支払わなければならない。
   
   日銀がこの制度を導入したのは、6年前の2016年2月。
   企業がお金を借りやすいようにして、経済を成長させ、物価上昇率を目標の2%に引き上げるためだった。
   
   だが、実際にはメガバンクが運用先に困るほど、企業の投資意欲は弱く、結局、「罰金」を支払うことになった。
   
●10万円は貯金?
   銀行への預け入れは増え続けている。
   大手銀行の行員からは悲鳴があがる。
「預金の流入ペースが、もう限界を超えている」
   
   前述の三菱UFJ銀行だけでも、2019年3月末から2021年12末までに預金が31兆円増えて211兆円になった。だが、貸し出しは1兆円減の106兆円。
   
   このように預金が大きく膨らんだのは、政府による一律10万円給付金だ。
   結局、消費に回ったのは3割弱(予測)。大半が貯蓄に回ったとされる。
   
   現段階での、「過剰貯蓄」は計33兆円とも言われている(大和総研)。
   
   銀行が抱えている預金の額も、増えている。
   全国銀行協会のまとめ(対前年比)。
   昨年末の国内銀行の貸出金は537.9兆円(0.6%増)
   預金は859.6兆円(3.2%増)
   
   預金の方が、貸出金をはるかに上回っている。
   
   お金が市場に回っていないのは、明らかだ。
   
●銀行の儲け
   企業に投資意欲を掻き立てるような環境になっていないのに、マイナス金利を設けても、果たして効果があるのか?
   当初期待した効果は得られていないのが現実だ。
   
   逆に、金利が低くなり、さらにマイナス金利まで設定された銀行は、儲けるところがなくなっている。経費をカバーするのがやっとという銀行もある。
   
●しわ寄せは預金者へ
   超低金利の結果、銀行は預金から得られる収益がほとんどなくなっている。
   そのため、新たな手数料の設定や、引き上げを図っている。
   
   ゆうちょ銀行が先月17日から、ATMなどでの硬貨の出し入れに手数料を取るようにしたのは、その典型だ。
   昨年には、大手銀行が、新規に口座を開設する際に、紙の通帳の発効を有料化している。
   
   日本よりも先にマイナス金利を導入したヨーロッパでは、すでにこうした動きが出ているそうだ。
   
   日本でも、現在の環境が抜本的に変わらない限り、こうした動きは加速することはあっても、見直しとはならないだろう。
   だが、日銀では当面マイナス金利は続けるとしている。
   
   銀行は儲からない、私たちの預金は増えない、市場にお金が回らない。
   このままでは、景気も良くならないし、私たちの暮らしも良くならない。
   
   先の見通しが不安なので、国民もお金を使わず、貯蓄する。
   日銀の政策に、あれこれ言うつもりもないが、どう考えても、暮らし向きが良くなるとは思えない。
   物価上昇率2%以上なんて、夢のまた夢だ……