先日、以前日本に居た時に乗っていたクルマの廃車手続きの委任状を親戚宅に送りまして、先程無事廃車された旨の連絡が来ました。
一応最初にお断りしておきますと、僕はわりとクルマにはうるさい方になるのかもしれません。
つまりクルマを『移動のための道具』っていう一般的な認識で捉えた事がないので、そうでない方ですと この先何が書いてあるか全く解らないって可能性がある事を申し添えておきます!
実は先の廃車したクルマって日産ローレルってクルマでした。
それまでわりと興味無かったんですが、その理由としては僕の中ではローレルってこのイメージが強すぎるからなんです。
いわゆる『ブタケツ』なんて言われてますけど、後にも先にもコレを超えるカッコよさを体現したローレルは無いと僕は思っているんですね。
実際に僕が乗って来たクルマって統一感はあまりなくて、例えば免許を取ってすぐ乗ったのは中古で買った3代目プレリュードに始まり、インスパイアと2台続けてホンダ車に乗りました。
僕は当時はメーカーとしてはホンダを信奉しており、日産には全く興味を持てなかった。
なぜか?といえば、当時から日産って『名車をダメにするメーカー』という印象しかなかったからなんです。
クルマのメーカーって大きな産業ですからそこで働く人の数はとんでもなく多いわけですが、実際に会社を動かしている人というのはほんのひと握りの人なわけで、そこで求められるのはやはり経営能力ですから必ずしも彼らが『クルマ好き』である必要はないわけです。
なんならその会社のクルマのヒストリーに対する知識すら必要とされない場合も多い。
彼らの仕事は数字を作ることなので、『いいクルマを作ろう』なんて意識は無くて構わないわけです。
日産に限らないんですが、概ねどこのメーカーでも『名車』と言われるクルマは企業の中枢からは芽生えてないという事実があります。
企業の中枢というのは、まさに数字を作るために売れるクルマを作るという命題を課されたプロジェクトチームの事で、そこに集まるのはその企業のエリートと呼ばれる精鋭たちです。
そこには予算も潤沢に与えられるため開発も宣伝も豊富な資金を背景に行われるのが一般的です。
しかしながらそのエリート達というのは必ずしもクルマづくりに情熱がある人やそのメーカーのクルマづくりに造詣が深い人ばかりではなく、
言ってみれば高学歴で優秀な学習能力や情報収集、管理能力を買われて採用された秀才ばかりなわけです。
そして彼らは別に将来が約束されてるなら別段自動車メーカーに就職しなくとも、官僚になれたならなっていただろうし、銀行に入れたらバンカーになっていただろうし、大手ゼネコンや商社、広告代理店やマスメディアで働けたなら働いていたような人達なわけです。
むしろ、子供の頃からクルマが大好きで大好きでクルマに夢中になっていたような人は大半がクルマを整備したり、修理したり、販売したりする仕事に就くことが多いんじゃないでしょうか。
中にはそういう方の中にも自動車メーカーに入社してクルマの開発に携わる人もいるかもしれませんがおそらく圧倒的な少数派であるでしょうし、おそらくはあまり出世コースとは縁のない位置に甘んずるように思います。
『いいクルマを作ろう』なんて考えてたら出世なんて出来ないのが日本の自動車メーカーだからです。
そしてそんな『異端者』が社内中枢、メインストリームから外れたところで密かに集まり、誰からも相手にされず、場所も予算も時間も無い中でプロジェクトを立ち上げて名車と言われるクルマを生み出してしまう。
トヨタにせよ日産にせよホンダにせよ、世界に冠たる名前を馳せた名車と言われるクルマはそうして生まれて来ました。
そして、それらが大ヒットすると必ず社内のメインストリームに居た秀才達がそれを横から掻っさらい、改悪してダメにしてしまう。
もっとサイズをデカくしろ、もっと豪華に見えるようにしろ、もっとコストを下げろ、etc…
多くの場合、クルマに愛着が無い人にはそのクルマが何故売れたのかわからないんです。
この辺りは僕がエレキギター関連で語る事とまんま同じなんですが、その製品に対する造詣の深さや愛情が無い人には引き算が出来ない。
逆にどんどん、どんどん足していく。
要らない物を付け足して、要らないサイズを与えて、要らない高性能を与えて、要らないデコレーションをして、要らないバリエーションを与えて、要らない高価格を付けて売ろうとする。
『クルマはこれでいいんだよ』が出来ない。なぜか?
メーカーにとっての顧客というのはユーザーではなくてディーラーだからです。
エレキギターメーカーの顧客がギタリストではなく、楽器店だというのと全く同じ構図です。
売る仕事の人というのは基本的にはネガティヴな人が圧倒的に多いので、ある製品について『なぜあの時コレが売れなかったか?』にとことん拘る傾向があります。
なので、名車と呼ばれるクルマの売れ行きに少しでも陰りが出るとそれがつもり積もって『現場の声』としてメーカーに上がっていきます。
会社のメインストリームの人達は『いいクルマ』を作るのが仕事ではないし、元々名車のどこが凄いかピンと来ない人ばかりですから現場の声を最優先します。
そうして、あれも付けろコレを大きくしろココを他社のアレと同じにしろ的なメチャクチャをさせようと、名車を作った功績者を外してメインストリームの(経営者にとっての)精鋭を後任にする。
任せる方も任される方も、クルマをわかって無いので『売れる要素』を分析しては足し算、足し算していく。
こと、日産車で礼を挙げるならこうです。
当たり前です。
誰がそんな改悪をして欲しいと願うんでしょうか。
ユーザーではありません。
そのクルマを高く評価して、何百万円ものお金を払って大事に乗ってくださるオーナーさんではありません。
メーカーにとっての顧客である、ディーラーの希望です。
メーカーにとっての販売台数とは、単に出荷数でしかないのです。
つまりディーラーが仕入れてくれた台数が即、販売台数になります。
だから不人気車はディーラーが仕入れてくれないので関連会社の社用に登録させるなり何なりする。
若しくは、かなりの額に上るであろうメーカーオプション装備を付けた超お買い得グレードを設定して売り捌けるよう手を尽くす。
実はかく言う僕の所有していたローレルもそんなクルマの1つでした。
僕の所有していた型はC-35という型式で、ローレルとしては最終型になります。
僕が何故ローレルを買ったのか?というとそれはエンジンと駆動方式がレアだったからです。
僕はそれまでにホンダ車を2台続けて乗り継ぎ、その当時存亡の危機にあったブリティッシュカーに乗りたいという想いと、ホンダ車のメカニズムに対する信頼性からローバースターリング827にのり、その後ちょっとした副収入からレンジローバーを買える境遇を得たので乗り換えをしました。
当時のレンジは極めて鈍重だったためにクルマ本来の面白さを感じたくて初代スズキアルトを偶然にも50,000円で掘り当てて暫くレンジと併用しました。
そして駐車場の手配の都合からクルマを一台に絞らねばならず、小型のクルマである事とステイタス性のある外車という2台の要素の共通点と駆動方式の面白さからオリジナルのフィアット500L(チンクェチェント)を購入。
以降は暫くチンクェチェント(以降チンクェ)の人だったわけですが、いかんせんチンクェは「あ、ルパン好きなんでしょう?」と言われる事がメチャクチャ多く、それがすごく鬱陶しかった。
僕は誰かになり切りたくてクルマ選びをするタイプではない、ので「ルパン」を言われて100回超える頃には否定するのも面倒で人に乗ってるクルマを教えるのもイヤになってたころなんです。
たまたま、友人の所有していたMARK2ワゴンを運転することがありました。
友人はやはりクルマ好きなのでエンジンや足廻りもスワップしてあった為、僕はその時初めて直6エンジンのFR車に乗る事になったわけです。
素晴らしい。
なんて運転しやすいのか。
ステアリングを切った時にブレーキだけでなくアクセルで付ける加速の緩急がなんとも自然で直感的なんです。
FF車ではこうは行かない。4WDでもこのナチュラルさは無いしRRに至っては非力ならなんとかなるレベルでハイパワーなんて絶対難しいだろうと思わせるクセがある。
駆動方式、エンジン形式、
多分そこに拘る傾向って今時の日本でもかなり少ない方なんじゃないでしょうか?
クルマを本当に知る人、クルマを単なる移動の為の道具と思わない方は、駆動方式やエンジン形式には絶対的なこだわりを持ってます。
僕は慌てて探したんです。
『自分が日本で暮らす限り、信頼性が高いのはやはり国産車だろう』
『国産車で、直6エンジンのFR車を新車で買えるのは何だろう?』
もう、その時はローレルしか選択肢がなかったのです。
正直、C-35は中途半端な印象であまりパッとしないクルマでした。
しかしながら、僕が買おうか検討し始めたときはモデル末期であり、マイナーチェンジも受け発売当初の中途半端なイメージを当時人気だったキャデラックに寄せたようなスッキリした顔付きに手直しして高級感を醸し出していたのですね。見に行って当日即決で買いました。
既にその当時は日産はカルロスゴーン体制だったために程なくしてローレルは無くなり、代わりにティアナがミドルレンジのラインナップに収まります。
バカだよね、日産(笑)
だって時期を少し遡ってスカイラインすら直6を捨ててるんですよ?
スカイラインは櫻井眞一郎さんという素晴らしいエンジニアが長年育てた名車だったし、その魂を受け継がなかった失敗作(失礼)にはGT-Rの称号はつかなかったし、櫻井眞一郎氏が現場を離れて就任したオーテックの社屋はその功績を称える意味から直6エンジンを模した形状のビルディングなのですよ。
だからスカイラインが直6エンジンを捨てるというのはスカイラインである事を棄てる事でもあるんです。
正確には過去にもスカイラインは一度直6を捨ててます。
しかしながら、それは櫻井眞一郎さんの愛弟子が敢えて櫻井眞一郎から脱却した新しいスカイラインを模索した結果であり、蔑ろにしたわけではなかった。
ただ、やはり以降のスカイラインは2代に渡って低評価が続いて、しまいにはライバルに寄せて足し算足し算を繰り返してスカイラインらしさのかけらもないトヨタマーク2もどきにまで成り果てました。
そこから一気に盛り返したのがR-32と言われる型式からになるわけで、その直6エンジンがRBと呼ばれるものであったわけです。
RBは設計年次の旧いエンジンなんですが、エンジンが鋳鉄製なんですね。重いんだけど、昨今のエンジンのようなアルミ製ではない為に強度、耐久性が半端ない。
強度が半端無いのでボアアップもしやすいし、回してもブローしにくい、壊れにくい特徴を持っているわけです。
ですから当時のスカイラインの最高峰たるGT-Rはレースの世界でもメチャクチャ強かった。日産自動車の歴史において、最強最高のエンジンは?
と言われたら殆どの方が『RB28DET)と言うはずです。
スカイラインはRBを活かして古き良き日産車の持ち味を現代のテクノロジーで復活させた。
そしてそのRBを積んだ日産自動車最後のクルマが、ローレルだったわけです。
まぁ、買うよね(笑)
でも、ディーラーに出向いて僕はすごく驚いたんです。
『ローレルください』って言ったら、営業マンがキョトンとした顔して驚いてるんですよ。
何故ゆえにローレルなのか?モデル末期だし、モデル末期だからオプションも限られてるし、売り切れた色もあるし、ピラードハードトップだから流行りじゃなくて人気無いし、前も後ろも中は狭いし、荷物だって大して載らないし、直6だからエンジンフードが長くて前は見にくいし、お世辞にも燃費だってよくないし、
多分売れなかった理由ばかりが頭をよぎったのでしょう。
日産という会社がいかに長いことクルマ好きに対して日産の良さをアピールする事を怠って来たか、いかに営業マンがクルマ好きを相手に商売をして来なかったかわかります。
『技術の日産』?
嘘をつけ、日産が誇る技術は概ねプリンス自動車のものじゃないか。
『やっちゃえ日産』?
肝いりのLEAFを売り出すために、かつて日産の懐を大いに温めたクルマとそのオーナーを足蹴にしてたのが『やっちゃえ』なら、そりゃ日産を応援して来た層は離れますよ。
ちなみにこうした浮かれ調子なCMってすごく日産は多いわけですが、じつは日産は日本の企業の中でも相当宣伝広告費をかけてる会社なんですね。
日産は売り上げがトヨタの半分以下なのに、売り上げに対する宣伝広告費の割合は1.5倍を超えています。
そして昨今の無資格検査員問題やその蔓延と隠蔽、カルロスゴーンの裏金づくりの容認、
そして昨今の決算、これヤバくないと思う方がオカシイ。
こんな状況でも日産経営陣は西川(サイカワ)社長を満場一致で続投させるんですよ?
しかも、逮捕されカルロスゴーンの裏金づくりの為の虚偽申請は直近の2年は西川社長が自筆でサインをして行なっている。
西川社長が逮捕されないのはオカシイだろ?って思うのはそれが『日本の常識』だからなんでしょうかね?
それとも僕がアメリカ人になってしまったんで、アメリカかぶれを起こして日本の常識に対してごちゃごちゃ文句を言っているだけなんですかね?
日本は相変わらず司法が公平に人を裁かない土人国家だからなんでしょうかね?
僕は思うんですよ。
いまの日産なんて無くなっても誰も困らないじゃん?と。
ぶっちゃけ、日産はいっそのことトヨタ自動車に買い取ってもらった方がいい。
あのスバルだって日産傘下でいた頃よりもトヨタ傘下になってからの方がプレミアムブランド化したし、BR-Zみたいなクルマだって作れた。
今の日産車なんてシャーシーはルノーと共用だわスカイラインは日産名義じゃない上にエンジンはベンツだわ、プレジデントもシーマもフーガも全然区別がつかないわ、GT-Rは長らく放置されたけどオリジナルがイタルデザイン番に大きく負けてるわ、おまけにシルビアなんてFFにしてベンツのエンジン積むんですって?
やっちゃえ日産って言うけど何やってんだか日産。
そう、この記事書こうとしたもう一つの理由を忘れてました。
先だってウチのBMWを点検に出してる時に代車を借りたんですが、まぁ酷かった。
低速域にトルクが無いので踏み込まないと走らないし、踏み込めばエンジン音はうるさくなるし、当然燃費だって良くない。
たしかこれ2リッターなんだけどストレスフリーで運転しようとしたら僕のカマロと燃費だって大して変わらない。
アクセルもブレーキもステアリングもタッチが緩々で色々なインフォメーションが足りないから運転がつまらないし、ブレーキの効きが恐ろしく悪いから怖くて飛ばせない。
おまけにシートの造りがおかしくてすぐに腰が痛くなる。
要は、クルマとして本当に重要なところに全くお金がかかってない印象しか受けなかった。
これなら安くしか売れないだろうなと思いました。
安いけど、とりあえず使えて壊れない。
安い、壊れない、クルマとしてちゃんとしているかどうか、
その3つで言えば安くて壊れないっていうのにプライオリティが置かれて売れるのはわかる。
アメリカで今現在日産車が売れてるのはそれです。
でも、クルマとしてちゃんとしているっていう部分を重んずる人は日本車は買わない。
多少高くても、たとえ定期的な点検をしなくちゃいけなくてもアメリカ車やドイツ車を買う。
日本では世界で日本のクルマが大人気、と喧伝されるでしょう。
それは確かに本当です。しかし、世の中というのはお金持ちとそうでない人を較べると、お金持ちではない人の方が圧倒的に多い。
アメリカでお金持ちでない人は新車は韓国車を買います。以前より現代自動車は1台買うともう1台、みたいなキャンペーンを良くやっていました。
そういう時に売れた韓国車がポンコツになって未だに走っていたりもしますが、たしかに日本のクルマはあの辺よりはだいぶマシな状態で乗られてますから韓国車よりは大事に乗られているのでしょうし、愛されてもいるでしょう。
余談ですが、アメリカでは現代自動車よりKIAの方がはるかにメジャーな上に事実個人所有車としては売れています。現代自動車はピザの宅配や小さなタクシー会社が使うクルマって印象ですね。
『人気』って単に実数が売れているって事ではなくて、個人が自腹を切って買うのが本当の意味での人気ですよね。
その視点で見れば、日本のクルマ、とりわけ日産車は『お金が無い人には人気』という流れが真実なんですね。
日産のクルマで本当に人気があるのは、かつてのフェアレディZであったり、スカイラインGT-Rだけです。
そしてそのどちらもをダメにして来た経営陣が今の日産をやっている。
カルロスゴーンが居ようと居まいと、日産をダメにして来た経営陣が居坐わる限り日産に明日はないでしょう。
ちゃんとクルマを愛して、朝から晩までクルマの事ばっかり考えてるクルマ野郎みたいなある種の天才をきちんと数字を誤魔化さない経営陣が支えたなら、間違いなく日産は蘇るんですよ。
多分、いまのままでは数年後には日産は残っていないかもしれない。
日産の経営陣の皆様、
僕はいいましたからね!(笑)
長々とすみません。
最後まで読んでくださった貴方に感謝です。
Mahalo!