今回紹介するのは、荒井貿易さんの人気ギターブランドのAria pro II (アリア プロ ツー)の "再生案 by なかじー" です。
まず個人的な評価になりますが、Aria pro IIというブランドの最大のウリは安さだと認識しています。
このあたりは一般論としてもそうでしょうし、『中の人』も充分理解はされているように思うのです。
が、いかんせん狙う線がかなり古いんですね。
エレキギターというのは『楽器』でありながら、実際に使われる音楽シーンがロックミュージックやポップスといった大衆芸能の世界がメインであるために、
その成り立ちもまた流行商品としての性質を強く持たざるを得ません。
ベンチャーズが流行ればベンチャーズの使用するようなもの、
ビートルズが流行ればビートルズの使用するようなもの、
ツェッペリンやクラプトンが流行れば彼らの使用するようなものがなによりも売れる。
1970年代も終盤にGibsonやFenderの模造品がいよいよ『ヤバい』となった時、新興メーカーであったB.C.RichやAlembicの台頭は福音でした。
それらの流行の最先端なイメージを上手い事拝借して数々の国産エレキギターは『オリジナルモデル』をリリースしました。
Aria pro IIの栄光の歴史もそのひとつです。(以下、Ariaと表記)
国内外のプロの、それも売れっ子ミュージシャンと目される方々がこぞってAriaを使いましたが、
今でもAriaを使うプロミュージシャンというのは殆ど居ません。
近年、Ariaのラインナップは比較的活発に動いているように見えますが、正直言ってどれもパッとしません。
先の『栄光の歴史』を企画担当者が自ら懐かしむかのように様々なモデルがリイシューされている反面、
実際には過去モデルの方が造りも材も良くて、でもリイシューの価格は当時の3倍以上という値付けをするモノすらあります。
誰に向けて商品を企画しているのか、もはや企画担当者の個人的な趣味を満足させる為に造られたと見られても仕方ないラインナップです。
すいません、ついdisってしまいました(笑)
本題に入ります。
おそらく、Ariaのモデルの中で最も可能性があるのはMacでしょう。
MAGNAのカーブドトップ(CurvedなのかCarvedなのかはメーカー毎に解釈の違いもあるのでここでは断定しません。)
コレが基調になるのが一番現代的なエレキギターの在り方に対応出来る筈です。
個人的にはAriaのギターではPEやCSが好きなんで、むしろMacなんて全く興味がないモデルです(失礼)
ではなぜゆえにMacなのか。
⒈ よりコンテンポラリーな演奏スタイルにマッチしたギターにする為には弦位置が少しでもボディ表面に近い方が勝手が良く、その為にはGibsonスタイルのようなネック接合部のアングルが無い方が良い。
⒉ よりコンテンポラリーなサウンドに対応する為にはヘヴィなダウンチューニングに対応する必要がある。その為にはネックのスケールはレギュラースケールである事が必要。
⒊ どのような方向性に発展させるにせよ、ブランドのアイデンティティを明確にさせ得るデザインは必要不可欠。そして余計なコストの嵩むディティールは無い方がいい。後々のデザインの自由度が断然違う。
以上3点の理由により、Macを基調とするのが妥当である、と思われます。
さて、では具体的にMacをどうすべきか?
ズバリ、Strandbergのイメージをいただきましょう!(直球)
・ヘッドレス
・多弦
・ファンフレット(マルチスケール)
もう、コレしかない。
今までAriaが高く評価されて来た最大の理由は、その時々の最先端の流行を絶妙にキャッチし、かつそれを『本家』の数分の1の価格で提供して来たからです。
ちょっと脱線しますが、Ariaが最盛期比で最も失速した時代は90年代後半から2010年くらいまでかな、と思います。
では、この時何がAria的には一番問題だったかというとズバリ、
P.R.Sの流行に当時最も鈍感だったことです。
P.R.Sの良さとは一言で言うならGibsonとFenderのハイブリッドを高次元で達成した、という所にあります。
しかし『中の人』的にはおそらく「ウチはあんなのPEでとっくの昔にやってんだよ!」って思ったでしょうし、それは僕も思います。
もしも世の中にPEというモデルが出ていなければ、P.R.Sのデザインのいくつかは発想されてなかったか、もしくは発想されていたとしてもかなり時期が遅れたであろう可能性すら感じます。
Paul Reed Smith (90s)
Aria pro II PE(80s)
しかしコレ、80年代中頃からJacksonやCharvelが大流行だったおかげでその劣化版ですら出せばバカ売れしたっていう時代に、
『そっち方面』の方が利益率も高いしっていうのでそれまで築いて来た流れを手抜きしたり、造るのそのものを止めちゃって正常進化が出来なかったんですよね。
言い方は悪いですが、低コストな安物にそこそこの値段をつけて儲ける味を覚えてしまった。
Ariaの良さっていうのは、プロの目に適うちゃんとした造りのモノを他メーカーの約2分の1から3分の1程度という安価で提供するって事と、
その時々の最先端をきちんと拾っていくマメさにあったわけですよね。
まぁ、過ぎた事はこれくらいにして、
次にやらなきゃいけないのはとにかくコレです。
コレはもうStrandvergのアイデンティティですから真似ちゃダメです。
なにせヘッドレスなんでボディ形状そのものがヘッドに変わる『ギターの顔』になります。
だからMacを基調に使うべきだという事なんですね。
好き、嫌いの問題はあるかもしれませんが、実はMacのデザインは非常に洗練されており無駄や破綻が無い美しいバランスを持っています。
なのでヘッドストックを隠してもちゃんとMacだな、と判るだけの完成度があるんですね。
地味なようですが、かなりこれは評価していいと思います。
ではボディの切り欠き部を無しに、Macをヘッドレス仕様として成立させるには?
はい、この通り。
では、まとめます。
Aria pro IIを10年先まで元気なブランドにするためには、
⑴ StrandvergインスパイアのモデルをMacベースで造るべし。
⑵ 7弦は必須で出来れば8弦も追加すべし。
⑶価格はいずれもStrandvergの3分の1に抑えるべし。
というになります。
1番のポイントは、現状のように大昔のギタリストのシグネチャーモデルなんて出してちゃダメなんですよホントに、って事。
アーティスト個人をdisる意図はありませんが、聖飢魔IIやアースシェイカー、SHOW-YAのギタリストが使用したのと同じギターが売れるような国ってどこなんですか?
日本だけですよね?しかも範囲は相当に狭い。
それが売れる顧客層ってどういう人達ですか?
そのアーティストが現役時代に夢中だった人達で今でもギターが趣味な人ですよね?
それ、さらに範囲が大幅に狭くなりました。
その顧客層って10年後にはどうなってると思いますか?
多分、その顧客層って還暦過ぎて下手したら年金受給生活をしているかもしれない。
趣味でたくさんギターなんて集めて持っていたって、年老いたら終活の邪魔にしかなりませんよ。
その方がプロのギタリストなら話は別ですが、顧客層は間違いなくアマチュアですよ。
1980年代から90年代に活躍した日本のバンドのファンだった方が、いま何十万もする日本人ギタリストのシグネチャーモデルを買っても、あまりいい影響は無いと思います。
新しいギターって、買ったら人に見せたくなるものだし人前で弾いて音を聴かせたいものじゃないですか?
何十万もするエレキギターなのに、周りからあんまり羨ましく思われないって少し悲しくならないかな、と。(主観です)
だって、今現在のAriaのブランドバリューを考えてみてください。
もしも将来自分がこの世を去った時に、何十万もしたっていうエレキギターを形見に残されても、日本人ギタリストのシグネチャーなんて趣味が偏り過ぎてて売ろうに売れないです。
仮に売れても大した値段はつかないし、若い子にあげても流行からはかけ離れていて使い所がなければ全然嬉しくないでしょう?
「どうせ何十万もするギター買うならGibsonのヒスコレとかP.R.Sでも買っといてくれりゃいいのに」なんて言われかねません(笑)
話長いですが、
エレキギターなんて、常に若い子受けを狙い続けていかなきゃダメなんですよ。
たくさんのお金はまだ使えないんですっていう若い子が「将来いつかはStrandvergが欲しいけど、今はAriaで頑張ろう」って選んでくれたら勝ちです。
そういう『これからの人』に寄り添って行かないと売り手ってのは実に見当はずれな事を言うようになるんです。
『若者のエレキギター離れ』みたいな事をね。
ウソですよそんなの。
だって、いま若い女の子がエレキギターを弾くって現象は20年前とは比較にならないほど増えてると思いませんか?
若い子がエレキギターから離れているんじゃなくて、商品の企画担当者の方の個人的な趣味の延長にある物しか製品化しなかっただけだし、
顧客層を育成、啓蒙するのをすっかり忘れて、かつて若者だったオジさんの可処分所得を刈り取るのに夢中になるばかりで、若い子に寄り添ったギター造りをして来なかっただけでしょう。
若い子や初心者に売るものはしっかりとコストをかけて、Aria pro IIっていうブランドにプライドを感じられるようにしてあげないと、
頑張って上手くなった時、果てはプロになった時にAriaには戻って来てくれませんよ?
その為にはよその会社が当たり前に売ってる多弦やマルチスケールは半額以下で売らなきゃ。
荒井貿易さんは世界中で安いギターパーツを見つけては、それを上手く自社製品に取り入れてカタログ外の商品化をするのも得意分野だし、海外のギター工場にはいくつもパイプがあるじゃないですか?
MacというAriaのコンテンポラリーな部分を象徴するモデルを、ヘッドレスの多弦マルチスケール化するという伝統と革新の融合を、リーズナブルに提供する。
そして、それによって得られるメリットを最大限に引き出す為の秘策がさらにある。
もし荒井さんとこの方で知りたい方はご連絡くださいね。(笑)
今日はそんな感じ!
Mahalo!