肉団子閑居為不善
 
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山高ければ谷深し

東証が元気だ。円安で輸出産業の収益が改善するという。ベースマネーが増えて銀行が貸し出しを増やし景気が回復するという。

まあ前者はともかく後者は本当にそうなるのか、実のところよくわからない。世界的にも銀行のリスクテイクを抑制する方向に規制が強化されている昨今、日本の銀行だけがアニマルスピリッツに目覚めて大きく貸し出しを増やすなんてありえない話だ。

さらにデフレ時代が長過ぎて、日本国民の暮らし向きや価値観がきわめてコストパフォーマンスに敏感になってしまっているのに、果たしてそう簡単に消費が増えるのかという感想もある。長いデフレは企業経営者のマインドにも影響を与えており、内部留保を増やしキャッシュリッチにして保険をかけておこうとする傾向が強い。アベノミクスという言葉に踊らされて借金を増やし人件費や設備投資を拡大して勝負に出る経営者はまだ少ないだろう。そこで働く従業員も賞与ぐらいは増えるかもしれないが、安定した収入ではないので消費よりは貯蓄に回る可能性が高い。となると民間主導ではない公共投資に頼る景気回復ということになるのだろう。

豊かな先進国である日本は物資に溢れているし、とりあえず飢えや不足とは無縁だ。お金儲けや出世といった苦労をするよりも現状を肯定して楽に生きたいという若者はかなり多い。都市部で賃貸住宅に住む層も都会で消費文化を華やかに享受することよりも地味に貯金して将来は田舎に帰って生活水準を落とし老後を暮らす事を考えている。こうした価値観には精神的な価値を尊び個人の欲望や金銭への執着を嫌う仏教的な伝統文化がベースにあるから、そう簡単にこの傾向は覆るとは思えない。

景気ウォッチャー調査でも五月十日の平成二十五年四月調査結果は先行判断DI、現状判断DIともに頭打ちになっており、昨年末から今年にかけての大きな上昇も一段落してきていることから、国民は案外冷めた目でアベノミクスを見つめているようだ。果たしていつまでこれが続くのか、多くの人が疑惑の目を向けている。

うららかな日和に恵まれても、いまだ雪に覆われた春山の様な日本経済。天候の急変による突風や雪崩には十分注意したい。もっともビッグウエーブは危険と裏腹に投資妙味もあるわけだが、無縁な民草には迷惑な話ではある。

堀江青年はどこへ行くのか

先日仮釈放となり保護観察中のホリエモンこと堀江貴文氏、収監される時にはモヒカン刈りになったり、判決の不当を訴えるオリジナルTシャツを着込み、ニコニコ動画で出頭の模様を中継するという、期待を裏切らないパフォーマンスを演じました。

ふざけているという人もいましたが、ボロボロになった自尊心をなんとか取り繕うとする悲しい防衛機制のようでもありました。

それから二年余の月日が経ち、すっかりやせ細って出てきた堀江氏はどこか寂しげで、保護観察中ということもあってかその発言もどこか控えめで、普通の人の様に変わっていました。

確かに粉飾や相場操縦は褒められたものではないですが、では市場の参加者がそんなにお行儀がよろしかったのかと言えばキャノンなどの例をあげるまでもなくそうではありません。権力に挑戦する者を潰そうという隠された意図も感じられる判決ではありました。

若い人は権力を打倒し不合理なこの世を変えようとします。しかしそれは大きなエネルギーと犠牲を伴います。身の危険を感じた老人は既得権益に執着し決して離そうとはしないでしょう。そうして堀江氏は見事にその野望を打ち砕かれてしまったわけです。

しかし発想を変えれば、自尊心を傷つけないように丁寧におだてあげれば気前よくおカネを出すのもまた老人でもある事にも気づくでしょう。最近オレオレ詐欺などが騒がれていますが、老人に近づいて信頼を得ることで自発的にお金を出させる新手の詐欺がはやっています。

犯罪性があるかどうか微妙で証明も難しいので警察も手をこまねいているようですが、数年前から子供や孫の世代からこの手の相談事がインターネットの質問サイトなどでよく投稿されています。おそらくかなりはやっている手口とみてよいでしょう。

孤独な老人に言葉巧みに近づき、褒めておだてていい気にさせてお金を出させます。繰り返すうちにお金を出すと褒めてもらえる、つまりお金をあげると気持ちいい、という条件反射をすりこまれ、最後には詐欺師の言うがままにお金を出すキャッシュディスペンサーにかえられてしまいます。老人は自分の事を叱ったり批判する子供より、褒めて肯定してくれる他人に親近感を抱き、なけなしの財産を血を分けた子供にではなく赤の他人に与えるのです。

堀江貴文氏が塀の向こうで何を考えたのかは定かではありませんが、力技で体制を変革する不器用なやり方ではなく、今後はより巧妙に、体制を奪い返してほしいと思います。言い換えれば少々ボケて過去に囚われた老人が活力溢れる若者へ未来へと自ら進んでお金も力も渡すようなより巧妙なペテンを仕掛けてくれる事を期待します。この国全体に漂う閉塞感を破るために…

おひさしぶりです、そして「拝金」

おお、久しぶりのブロゴスフィアだ、やっほー。

Twitterに嵌ってしまい、今日まで浦島太郎になっていました。

今日はTwitterの公式メンテだそうで、つぶやけません。ということで久しぶりにブログに帰ってまいりました。

一時は創作の敵と言った肉団子ですが、だんだん慣れてくると140文字でも結構内容のあるつぶやきができるので重宝しています。管理人のフィルタリングが上手いのか、エロスパムもほとんどないし(日本語のわかるスタッフでもいるのだろうか?)、このままブログやめちゃおうかしらん、とすら思うことも...。

とはいえ、ブログはブログで長所もあり、Twitterだけに頼るのはある意味リスクを負うことでもあります。これからも不定期にぶらぶらとつぶやくように続けていきたいと思います。

さて、堀江貴文ことホリエモン氏の新刊「拝金」を先日読了したのでそのお話を。

表紙を見るとまるでホリエモンとひろゆきが二人して立ってこちらを見上げているような素描風の表紙絵が描かれており、なんとなく脱力な感じ。書店で手にとったとき、チープな装丁は中身の質もそれなりではないかと嫌な予感がしました。

多少ネタバレを交えますので未読の方はここから下はご注意を。

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さて、本編は、ホリエモン自身をモデルにしたとおぼしき青年に、謎の中年男「おっちゃん」が声をかけるところで始まります。まるでシンデレラストーリーのように、おっちゃんがパトロンとなって投資し、ありえないほど磐石な資金支援のおかげをもって主人公はとんとん拍子に事業を成功させていきます。

ただその事業というのがポストペットやGreeをそのままモデルにしたようなチープな設定で、ちょっとガックリしてしまいます。しかし、筆者が現在係争中のライブドア事件をモデルとした部分、特に日枝久会長をモデルとした敵方の総帥との交渉場面などは、筆者が見たものをそのまま描いたとおぼしき緻密さと迫力をもっていて、面白く読めました。他の部分もこのレベルの緻密さで描かれていれば良かったのですが、担当者ももっと文芸作品としての完成度を高めるように堀江氏を叱咤激励するべきでしたね。

その一方で、アイドル歌手やモデル達と遊ぶ"濡れ場"は妙に荒削りで、言ってみれば横山光輝氏の初期作品の女性の胸のような書き方と申しましょうか...セクシーとはとても言いがたい。同様に、セレブになった主人公の食べるものも、グルメを感じさせない。堀江氏の興味の対象は美姫とのとろけるような一時や、同量の黄金と同じ価値を持つ料理の一匙にあるのではなく、その向こうにある成功という二文字を確認する記号のようなものだったのかもしれません。

意地悪な見方をすれば、遊び人なんて言われていたけれど自分は女色やグルメにおぼれていたわけじゃないよ、真面目に仕事をしていたんだ、という言い訳をしているようにも思えます。

「文学」として読もうとすると失望しますが、ところどころに見え隠れする人間堀江貴文の人格を垣間見させる記述を宝探しのようにさがすゲームブックとして読みすすめるのであれば、面白い読み物だと思います。

荒削りの下書きのような原稿をそのまま出版したのも、あえて作者の人格を浮きだたせようとした編集者の企みだったのかもしれません。

最後に、これを読む社長業志願の方にひとことふたこと。

ひとつは、本の内容をうのみにして、技術者のヘンタイ良い子君は睨みつけるだけで支配できるなどと思わないように。この辺りはむしろカーネギー辺りを読んで、正しい方法を学んでほしいです。自分の持たない技能を持った人には三顧の礼でもってのぞむのが正しい態度です。

ふたつめ。「おっちゃん」は現実にいます。しかし、気前のいい投資家だと気を許していたら、いつしか広島弁や河内弁のヤクザな人たちが社内を闊歩しはじめるでしょう。犯罪の片棒をかつがされて刑務所行きになったり、身ぐるみはがれたり、命までとられることもあります。「おっちゃん」には要注意ですよ。





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