最近、読んだ本に付随するかの様に過去の記憶が泡みたいに表れては消えてゆきます。
それは、それは、とっても悲しいです。歳をとるという事が頭をよぎります。
「あ、今ぼくは大人になっているんだ」
「パチン」
スイッチもないのに、ぼくはいつしか大人になっていました。
それは、それは、悔しいのでいつでも子供でいようと思いました。気持ちと体は嘘をつく。

マサチューセッツにて
突然の雨に光をなぞった雷鳴が印象的だ。赤い煉瓦と緑の並木の彩る保守的な街で育った君。くりくりと光る目と栗色の髪の毛が綺麗に切られていた彼はスーツを着ていた。保守的な街など関係なく若者は柵を越えたがる、目の光だけが残り香のように漂っていたが、私は彼を見かける事ができなかった。彼はシューをゲイズしていた。コンコードという街がある、森の生活で有名なヘンリー・D・ソローがかつて思想を目一杯広げていた場所。彼の日課はウォールデン湖の外周を散歩して湖で汗を流す事だった。あと20年後も僕はこうして散歩を日課とできたらなんて素晴らしいのだろうとこぼした言葉はいつの間にか、路傍の石ころと違わぬ意味を持っていた。
近くに公園があった、少し行った街角にピザショップ。インベーダーゲームが残っていた。
料理の出来ない父と食べたサンドイッチとミルク。朝は遅かった、鼻をつくサンルーフの匂いとログハウス

南部にて
日中のうだる様な暑さと対比するように静かに冷えきった朝が今日も始まる。いつまでも途切れぬ砂漠といつまでも通り過ぎない貨物列車。ジョン・レノンの声。オー、ヨーコ。砂埃とハンバーガー。
「君はまるでベジタリアンだ」
朝のコーヒー。モーテルの逢い引き。今夜だけね。と夏から秋にかけて。
砂漠を抜けたラクダが行き着くラスベガス。トンプソンの目にはは虫類の巣窟。「ラスベガスをやっつけろ」いいや、おれはラスベガスに救いを求める。トランプがきられる。テキサスホールデンポーカー。
朝のコーヒー。朝のコーヒー。チョコレートのクロワッサン。チェスうちの浮浪者。救われねえと、ここは救われねえと。赤茶けた土を蹴り飛び立った。ワインの色も赤かった。僕の髪は金色だった。

ここじゃあ、救われねえって。
どこでも救われないよ。救いは入らないよ。
カルマを享受した時何か変わるのか。
ううん、何も。でも、ここには言葉がありますよ。
しーらない。
バンビを見ようよ。あの味を思い出そうと。春だから。
アーデュ



綿菓子の雨が注ぐ。暖風がぼくをワイキキあたりに連れ去る。
朝起きたら、ターコイズブルーのスクーターに乗ったマッチョマンが、遅めの新聞配達にやってくる。
ぼくはサハラ砂漠でPyrorubyを探すためにターバンを巻く。逃走するラクダ。
水しぶきをあげるエンゼルフォール。強烈シャワーを浴びながら、一寸法師がどんぶらこ。
モーニングコーヒーとカツサンド。ネクタイで相棒のマスチェラーノさん(馬)の尻を叩き、本日も出勤。
ランチ。うきうきランチ。ぶぎうぎ。わくわくランチ。わ~くわくさ~ん今日は何を作るの~ てめえの大好きなトマトだぜ
眠気眼の陽が沈む頃、相棒のジョニーウォーカーさん(人間)の尻を叩き、本日も帰宅。
ディナー。淑女があけるロゼ。きゅぽん。クラシカルなロココ調ドレス。
首のこりそうなかぶりものをしていた。そんなもの脱ぎなよ。ぼくが花冠を作ってあげる。
誘惑の悪魔はゆっくりと微笑む。子羊くんが周りで騒ぎ立てる。256匹くらい。やかましい!
首筋にルージュ。でも、タキシードは好きじゃない。
窓ガラスをぶち破る。
小麦色に焼けた肌。麦わら帽子とそばかす。海を見ている白いワンピース。
いつのまにか朝。ぼくは錆び付いた自転車にきみを乗せ、黄金の砂浜へと向かう。
さざ波とラジオスピーカー。片手に温もり。ビーチパラソルの下、静かに二人。
暗転。エンディング。かたかたかた。フィルムを回す私。
だいたいこんな感じ。
朝起きたら、あくびしながら話して聞かせるから。
毎日、色んな事があって楽しい。
ぎりぎりの海岸線を歩いてみたい。
朝を知らせ鳴いている雀になりたい。
もう楽しいって思うよ。


ピアスホールが一つ増えたらそういえばって思い出した事があった。あの時もこんな気持ちだったのだろうと。
お友達の太郎君の家は小高い丘にある。
東北は広大だから、想像はつきにくいと思う。見下ろす駅からずっと家と家の屋根が続いて海はないけれど湖があった。腐ったね。澱みの上をよく近所の方々が犬を連れて歩いた。僕は面白くもない、この景色が好きだ。ビールなんか飲みながら、クジラの夢を見れば一晩中だって歩いていられるだろう。

太郎君は自分を傷付ける事が好きだった。
学校には学ぶべき事が何もなかったから僕等は外へ目を向けることが好きだった。

ピアスホールを開けたのは、その時ぐらいだった。二人ともへらへら笑いながらビールを片手に開けた。夏の白み始めた夕方の頃のように思う。蝉の声は止みカラスがないていた。


自分の周りの物事が立て込み始めた時、知りたくもない情報ばかりはいってくる時、気持ちが上を向かない時それが積もる。
その放出として、僕は儀式的に自分に付随するイメージを全部壊す。犬が笑っていた。

皆、髪を切ったね。多分。
太郎君と僕は今でも、あの丘の上に立ったままだと嬉しい。

凡庸な時間を僕には止める事が出来ない。
それならば、楽しいのだと言い聞かせる事にしよう。

アデュ。