彼女は影の中にしかいない。いつもぼくの後ろにぴたりとくっついて。
その存在に気付いたのは、このあいだ一人で買い物に出かけたとき、ふとお店の窓ガラスにうつる自分を見たときだった。ぼくの背後に月曜の悪魔が揺らいでいた。それは着実にぼくの身体から一つずつ何か大事なものを奪っていった。そのたびその穴を埋めるためぼくはかためた粘土を補填した。
またぼくは一つ死んで新たな何かを手に入れた。
新しいものを手に入れるために、まず何かを失わねばならない。失うことが最初にくる。なんだってそれが悲しいのだろう?
影が笑うとぼくはぞっとして目をそらすのだ。鏡の世界に目を向けなければいいだけの話なのだ。気付かなければ、ないのと一緒。
いいや、それは嘘だね。ぼくの知らない世界で知らないことが知らずに起こる必ず。それを否定することはできない。因果の鎖? でなければこれは、魂の見る夢。
月曜の悪魔が靴音を鳴らすたび、ぼくはぼくを失っていく。次の日の朝日と一緒に、彼女は消えていなくなる。いなくなれ。
刹那の連続がぼくを確実に導いてくれる、遠い場所へ。それを裏切ってはいけない。何かと理由をつけて裏切ってはいけない。そうして自己否定して、口先だけが発達して。ああ、ぼくのことだ? ありもしない夢幻のせいにしてまたぼくはぼくを裏切ろうとしているんだ。しているのだ。
頭をかち割って全部ぶちまけて、それで気持ち良いわけないだろ。
なあ、何考えてんの?
お前はさあ。お前はさあ。俺はさあ。また頭が痛くって。

月曜の悪魔?
今週、彼女は路上の水たまりで死んだ。
けれど何度だって生まれてくる。
次はどこで生まれて、どこで消えてしまうのだろう?