● 三つの「かける」



蝮三太夫さんといえば、わたしたちの世代では、なんと言ってもウルトラマンの科学特捜隊アラシ隊員ですが、今は、訪問先でお年寄りに対し「このクソババァ(クソジジィ)!!」を連発する憎まれないレポーターとして、幅広い層に知られています。この蝮さんのTBSラジオのコーナー「ミュージックプレゼント」は昭和44年から37年も続いているというから、驚きです。



3月21日の読売新聞に蝮さんの記事が掲載されていました。
「浅草の育ちだから、気取った言葉なんか使わず、自分のおやじやお袋だとおもって、普通に話しかけているだけ。うけようなんて思ったことはないし、『言葉に愛情がある』なんて言われると、くすぐったくて仕方がない」



そう話す蝮さんですが、99年からは大学で福祉コミュニケーション論を担当する教授でもあります。
話しかける、肩に手をかける、気にかける。三つの『かける』が大切だと教えてるんだよ。何しろ、核家族化で、自分のじいちゃん、ばあちゃんとも、あまり接したことのない世代だからね。」



なるほど。これは、本当に納得できるな。テクニックや各論もいいけど、まずはこういう本質を教えてくれる先生がいるというのは、学生にとってもありがたいことです。
わたしの1日も、施設でお世話させていただいている120名ほどの、おじいちゃん、おばあちゃんひとりひとりへの、「おはようございます!」からはじまります。
そして、わたしにとって、これは施設での1番大切な仕事になっています。



● 本当の自分に出会えるかかわり



蝮さんは続けます。
「まむちゃんは、年寄りを元気にする名医」
公開放送で出会った100歳の元小学校長の言葉だそうです。



「この大老人は、昔は子供たちに『人に笑われるようなことをするな』と教えていたのに、放送では大勢の前でからかわれ、笑われた。でも、楽しかったそうで、『こんなに楽しいんだったらあと2、3年死ぬのを延期しよう』と、言って予告どおり102歳で大往生を遂げた」とか。
最後の時間に本当の自分に出会うことができたのかもしれませんね。そんな、“あるがまま”を引き出せる、蝮さんは、とくに患者さんの側からみると、本当の名医ですよね。わたしたち医師もこういうことをどれだけ意識できているかというのが、大切なはずです。




「医療費を使わないのも立派な社会貢献。これからも、市井の年寄りたちに、『社会貢献して、ぽっくり死ぬのが一番幸せ!』と、伝えていきたい」
これは、蝮さんでなくては言えない、伝えられない、そして、伝わらない言葉。



その域にまで行けないかもしれないけど、仕事であるなしにかかわらず、縁があって出会ったひとりひとりの方が、その方なりに元気になれて、そのままの自分でいられる、本当の自分を見つけられる、そんな関わりを、日々、重ねていくことができれば、と思っています。