続けて、よねさんにたずねてみました。



「よねさん、わたしは、今44歳なんですが、よねさんは40歳ころって、いかがでしたか?」
よねさんは、しばらく沈黙でしたが、やがて、ゆっくりとした口調で、
「・・・く る し か っ た で す・・・」
と、はなされました。
「そうですか、苦しかったんですね。」
「・・・く る し か っ た で す・・・」
と、よねさんは、遠くをみすえて、さらにゆっくと、はなされました。脳裏に刻みこまれた歴史が、その瞳の奥に凝縮して、ただよっているように見えました。



もう少し、何が苦しかったのか、うかがいたい気持ちもあったのですが、わたしは、もう聞くことができなくなりました。もう少し正確にいうと、そこまできかなくても十分なものを与えてもらった気がしていました。
「よねさん、お話しをうかがわせていただき、ありがとうございます」
「・・・あ り が と う ご ざ い ま し た・・・」
よねさんは、しばらく、そのまま遠くを見続けていました。



よねさん、ありがとう。